飛び刺突
『洞窟』の入り口から20m離れた、
日光がぎりぎり差し込む薄暗い地点に、
青黒い毛並みの魔獣の姿が見えた!
『クマタイプ』だ! 大きい!
四足走行で、猛然とこちらに向かって
走ってきている!
「ガァァァ!」
鋭く尖ったギザギザの歯をむき出しにして
突進してくる!
その顔面、目掛けて・・・
「うぉりゃあぁぁぁー!」
ドキュッッッ!!!
竜騎士の技のひとつ、
『水竜殺し・飛び刺突』を放つ!
オレが投げた『鉄の槍』は、
赤い光を放ち、高速で・・・
ドンッ!
「ッ!!」
『クマタイプ』の口を貫いた!
そのまま・・・
ドン!
「ゴァ!」
ドンッドン!
「ホォ!?」
「ゴホッ!」
ズドドドッ
「ゴッ!」
「ホァ!!」
「ガァ!」
何匹かの魔獣を貫いて、
『洞窟』の奥へと消えていった!
ゴトンッ ドスンッ バタン バタッ
何匹倒したのか分からないが、
『洞窟』内から、魔獣たちが倒れる音がする。
とりあえず、目前まで迫っていた
『クマタイプ』は仕留めたようだ。
しかし、魔獣たちの声や足音は、まだ聞こえてくる!
ボコォォォォン!
「!?」
その時、突然、なにか『洞窟』の奥から
大きな音が聞こえたが、
それがなんなのか分からない。
道幅が、それなりに広いし、
魔獣たちの死体もあちこちに転がっている。
ほかの魔獣たちは、一列になって
こちらへ向かってきているわけではない。
ほかの魔獣の死体を飛び越えて、あるいは、避けてきている。
その魔獣たちが、こちらへ向かってきている!
「ギャホッホホーーー!」
ドドドドドドッ
「ふぅぅぅぅぅ・・・。
おい、シホ! そこの槍を1本取ってくれ!」
オレは、深く息を吐きながら、
後ろで距離を取って
ただ見てるだけのシホに向かって、そう言った。
「は、はいぃ!」
シホは、すっかりオレに恐怖を感じているようで
慌てて、すぐに落ちている槍を1本拾ってくれる。
「ど、どうぞ・・・。」
「おぅ。もう1本、オレに渡してくれ。
すぅぅぅぅぅ・・・。」
シホから槍を受け取り、深く息を吸い込みながら、
槍を右手で構えて・・・
「ゴホッホッホーーー!」
黒い毛並みの『ゴリラタイプ』が、
入り口から20m地点に倒れている
ほかの魔獣の死体を横切ろうとした瞬間、
「どりゃぁぁぁぁーーー!!」
ドキュンッッ!!!
掛け声とともに、また
体内の『氣』を一気に放出するイメージで、
『鉄の槍』を、その『ゴリラタイプ』に向かって投げる!
ドンッ!
「ゴッホ!」
赤い光を放つ高速の槍が、
『ゴリラタイプ』の胸を貫通していった!
そして、
ドンッ!
「ホッ」
ドスッ!
「ゴゥ!」
続いて、魔獣たちを貫いていく音だけが
聞こえてきた。
しかし、20m先は真っ暗なので、
後続の魔獣たちを仕留めたのか?
それとも、カスっただけなのか?
魔獣たちを何匹倒せたのか?
まったく分からない。
「ふぅぅぅぅぅ・・・。」
オレは深く息を吐きながら、耳を澄ませる。
ドタンッ バタンッ
魔獣たちが倒れる音もしているが、
バゴォォォン!
また、『洞窟』の奥から
なにか破壊されているような音が聞こえてきた。
「ギャォッホーーー!」
そして、まだ元気な魔獣の声も聞こえてくる!
「はい、どうぞ!」
「おう!」
シホから、また槍を受け取り、
それを右手で構えながら・・・
「ッ、すぅぅぅぅぅ・・・。」
息を深く吸い込み、
意識を体内の『氣』に集中させる。
右腕のヒリヒリした熱が、徐々に痛み出した・・・。
「ウォウォウォ!」
また『洞窟』の入り口から20mの地点に
黒い毛並みの『ゴリラタイプ』の姿が見えた!
「おりゃぁぁぁぁーーー!」
オレは掛け声とともに、また
『鉄の槍』を魔獣に向かって投げた!
ドギュンッ!!!
赤い光を放って、高速の槍が魔獣を貫く!
ドンッ!
「ウゴッ!」
ドドンッ
「ギャゥ!」
「ッ!」
魔獣を貫通した槍は、
真っ暗な『洞窟』に消えていって、
ほかの魔獣たちを貫く音だけが聞こえてくる!
ドサッ ドスンッ ゴトッン
「ハァァァァァ・・・。」
魔獣たちが倒れる音を聞きながら、
オレは、深く息を吐こうとした。
しかし、右腕の痛みが気になりだして、
うまく息を吐けなくなってきている。
ゴゴォォォォン!
ゴトゴトッゴゴンッ・・・
また、なにか砕けるような音が
『洞窟』の奥から聞こえてきた。
さっきから・・・
『洞窟』の奥で、なにが起きているのか?
「シホ、もう1本・・・。」
「はい、どうぞ!」
シホは、オレが指示する前に、
もう槍を手渡してくれた。
ヒリヒリ痛み出した右腕で、
それを受け取って、構える・・・。
「すぅぅぅぅぅ・・・。」
しかし・・・
「・・・。」
「・・・?」
音が止んだ。
『洞窟』からは、
魔獣たちの声も足音もしなくなった。
「はぁぁぁ・・・。」
吸い込んだ息を、オレはゆっくり吐き出す。
少なくとも、30m以内は
魔獣たちの気配が感じられない・・・。
「シホ、『光の矢』をこの奥に向かって、
まっすぐ撃ってみてくれないか?
一瞬だけでも、『洞窟』内の様子が見えればいいんだが。」
そう言ってみた。
目視できるのは、20mぐらいで、
オレが魔獣の気配を感じ取れるのは、
せいぜい半径30mぐらいだ。
その奥から来ているかどうかは、
音で判断するしかないが、
もし、音もなく近づいて来られると
迎撃する反応が遅れてしまう。
「わ、分かった・・・。やってみる・・・。
あんたほどの威力はないが・・・。」
シホがそう言うと、魔力が高まっていき、
シホの両腕の包帯が光りだす。
弓矢を射る姿勢をとり、
「わが魔力をもって、閃光の矢と成し、遠くの敵を射抜け!
ライトニング・アローーー!」
キュン!
『光の矢』を放った!
『光の矢』は、まっすぐ『洞窟』の奥へ飛んで行った!
「・・・。」
『光の矢』は、一瞬で飛んで行ったため、
『洞窟』内の奥まで見れたわけじゃないが、
たぶん、50m以内に
立っている魔獣の姿はなかったようだった。
「ど、どうだろうか?」
隣りに立っていたシホが、
そう聞いてきたが、
すべてを見れたわけじゃないから、なんとも言えない。
安全であると断言できないが、
危険は去ったと言える。
「はぁ、とりあえずは、
生き残れたってことかな。」
ドスッ
オレは、構えていた槍を地面に刺して、そう言った。
もう一度、耳を澄ませ、気配を探るが、
『洞窟』内にも、周辺にも、魔獣の気配は感じない。
本当なら、木下に『サーチ』の魔法で
調べてほしいところだが・・・
「はぁ・・・。」
「・・・ふぅ。」
木下とシホが、一息ついた。
今、『サーチ』をかけて、
もし、ここから半径100m以内に
また魔獣がいたら、さっきの繰り返しになってしまう。
魔獣の気配がない、今のうちに、
下山したほうがよさそうだ。
残った『鉄の槍』は、5本。
討ち取った魔獣の数は・・・分からない。
『洞窟』からは、すでに
魔獣たちの血生臭いニオイが漂い始めている。
「はぁ、この槍は、ここに置いていく。
また明日、ここで使うからな。
置いておいても、誰も盗らないだろう。
はぁ、はぁ、よし、今のうちに町へ戻ろう!」
「は、はい!」
「はい!」
木下たちが、少し安心した表情で
返事をしていた。
オレの知識が足りてなかったせいで
2人を危険な目に遭わせてしまったが、
なんとか生き残れてよかった・・・。
明日からは、また別の作戦を
考えなければならないな・・・。
オレは、深く反省しながら、
まだヒリヒリ痛くて熱くなっている
右腕を押さえて、下山し始めた。




