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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
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スヴィシェの洞窟




小休憩後、歩いていた山道は、

どんどん細くなっていき、道はジグザクに曲がっていて

起伏も激しく、とても歩きにくかった。


「はぁ、はぁ・・・。」


「・・・はぁ、はぁ。」


オレたちは、もう言葉を発しないように無言で歩いた。

息切れしながらも、その息の音にも

注意しながら、歩いて行った。


木々の中に、

ところどころ倒れている木があった。

太い木が何本も・・・。

なにか強いチカラでへし折られたような跡。

魔獣たちの仕業だろう。




うっそうと生い茂る森林の中、

それは、突然、現れた。

山の中腹に、ポッカリと大きな穴が開いていた。


ヒョォォウウウ・・・


ヒョォォォォォゥ・・・


その穴から、ときおり笛のような音がしていた。

ここに来るまでに、オレが聞いていたのは、

この音だったらしい。


風の通り道になっているならば、

この穴は、どこか別の場所に通じているのだろうか?


穴の、すぐそばに

昔、『魔鉱石』を運んでいたと思われる

荷車が、朽ち果てた姿で横たわっていた。


穴の上に、木札があるようだが、

草木が伸び放題で、おまけに字がかすれていて

ほとんど読めない。

かろうじて、

『・・・ィシェ・・・洞・・・』の文字が読み取れた。


間違いない、ここがオレたちの目的地、

魔獣たちの巣・・・

『スヴィシェの洞窟』のようだ。


ここまで、魔獣に出会わなかったのは幸いだった。

余計な体力を使いたくなかったから。

歩いてくるだけでも、

ものすごく体力を消耗した気がするが。


思っていた以上に、穴が大きい。

縦も横も、約10mぐらいあるようだ。

たしか、昨日、町を襲っていた魔獣が

5m以上あったようだし、

あのサイズが余裕で入れる『洞窟』ということだな。


『洞窟』の入り口付近に、

なんの骨か分からないが、

バラバラになった骨が数本、散乱している。

今まで、討伐に失敗した傭兵たちの骨だろうか?

頭骸骨がないから、ほかのケモノの骨かもしれない。


「ォォォ・・・ゥ・・・。」


『洞窟』の奥から、魔獣らしい声が響いてくる。

気配は感じないから、かなり奥のほうだろう。

まっすぐな穴だが、20mぐらいしか光が届いていないようだ。

周りのうっそうとした木々が

日光を遮っているのも原因だろう。

その20mから先は、真っ暗で何も見えない。

とても不気味だ。


「はぁはぁ、ついたな。おい、シホ。

お前の昨日の魔法、『光の矢』は

魔獣たちを貫通できるのか?」


オレは、息を整えながら、シホに聞く。


「はぁはぁ、『光の矢』・・・

『ライトニングアロー』なら、そうだな。

ただ・・・威力が小さいから、

貫通しても殺傷能力は低いと思う。」


シホは、槍を担いでいないので

そんなに息切れを起こしていない。

すぐにでも戦闘できそうな感じだ。


「それでもいい。はぁはぁ、何発撃てるのか知らないが、

ここまで来たんだから、お前にも加勢してもらうぞ。

オレの槍が効かなかったら、もしくは、

オレの槍を避けてくる魔獣がいたら、そいつを頼む。

殺傷能力が低いなら、なるべく顔か胸の急所を狙ってくれ。

足止めさえしてくれれば、オレがそいつを討つ。」


「できるか分からないが、分かった・・・。」


シホは、そう答えながら

両手をプラプラと振って、

これから起こる戦闘に備えだした。

戦う意思があるようだ。

仲間にするかどうかは別として、

こいつの実力を見るのに、ちょうどいい機会かもしれない。


「き、ユンムは、

『サーチ』の魔法のあとに、

オレたちに魔物の位置や数を教えてくれ。

その後は、シホと同じく、雷の魔法でオレの援護を頼む。

初級魔法でも感電すれば、多少の足止めになるだろう。

間違っても、爆発するような魔法は使うなよ。

『洞窟』が崩れて塞がってしまうからな。」


「ふぅ・・・はい。」


木下も、だいぶ息が整ってきたようだ。

『洞窟』の入り口を封鎖してしまえば、

魔獣たちが生き埋めになるわけだから、

討伐したのと同じことのような気もするが、それでは

討伐の依頼を達成したことにはならないだろう。

入り口が崩れてしまうと、

明日からの討伐再開の弊害になってしまう。


ザスッザスッザスッ


オレは、自分のすぐそばの地面に、

『鉄の槍』を3本、刺しておいた。

そして、左手に1本の槍を持ち、

残りの槍は、そのすぐそばの地面に置いた。


「すぅぅぅ・・・ふぅぅぅぅ・・・。」


深呼吸した。もう息は整った。

深呼吸を繰り返すと、不思議と

体力の消耗を忘れられる気がする。


「・・・それから、2人とも。

もし、オレの槍が効かなくて、

オレがやられそうになったら、その時は、

2人で逃げてくれ。」


「そんな!」


「・・・。」


シホが驚いているようだが、

木下は、覚悟しているようだった。

『レッサー王国』の戦闘でも

オレはそう言っていたから、

もう覚悟できているのだろう。


「まぁ、オレも魔獣たちのエサにはなりたくないから

簡単にやられたりはしない。

最期まで、あがいてやる。

その間に、2人は振り返らずに逃げてくれ。

これは、約束だぞ。」


「・・・!」


シホは、何か言いたそうだが、

オレの言葉をしっかり受け止めてくれたようだ。


そして、オレは右腕をぐるぐると回してから、

左手に持っていた槍を、右手に持ち替えた。


「さて、おっぱじめるか!」


後ろにいる2人に、そう宣言した。






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