Cランクのパーティー『マティーズ』
ガタガタガタガタ・・・
町の中でも、馬車の中でも、
あの『お香』が焚かれている。
しかし、町の中よりは、ニオイが薄れるので
オレとしては、呼吸が楽な気がする。
町を離れて、馬車は
森林の中の街道を走っていく。
乗る前に聞いてみたが、御者が言うには、
次の町『プロペティア』に着くのは夕方だそうだ。
対面に座っていた乗客の傭兵たちに声をかけられた。
相手も、オレたちが傭兵だと気づき、
なにか声をかけたくなったのだろう。
向こうは、
茶髪と黒髪の男二人に、茶髪の女一人の
3人パーティー。
みんな30代前後といったところか。
全員『Cランク』らしい。
たぶん、なかなかの実力なのだろう。
パーティー名は『マティーズ』。
『オラクルマディス教』の神様の名前から
パーティー名を考えたらしい。
・・・ということは、熱心な信徒なのだろうか?
パーティー名に、神様の名前か・・・
なかなかいい名前だな。
そして、相手のパーティー名を聞いてしまうと、
もれなく、こちらのパーティー名を名乗らされる。
「ぷっ!」
「わ、笑っちゃ失礼だって。くくっ!」
そして、もれなく笑われてしまうのだ。
あー、恥ずかしい・・・。
しかし、オレたちの、あの『間違ったウワサ』は、
この傭兵たちにまだ届いていないらしく、
初めて聞いた様子だ。
ここで、『スヴィシェの洞窟』について聞いてみた。
もちろん、オレたちが討伐依頼を
引き受けたことは内緒だ。
「あんた、まさか『スヴィシェ』を狙って
この馬車に乗ってるのか!? やめとけ、やめとけ。
この国の騎士団でも無理なんだから、
Aランクぐらいの実力でもなければ、自殺ものだぞ。」
「あの報酬金は魅力的だが、あれはダメだ。」
傭兵たちの反応は、『ヒトカリ』にいた
傭兵たちと同じものだ。
「いやいや、狙ってはいない。
ただ、みんな口々に無理だ無理だと
同じことを言うので、気になってな。」
引き受けたことを話していないのに、
こうして止められる始末だ。
本当のことを話したら、
めんどくさい事情も説明することになるだろう。
「そんなに強いのか?
その、『クマタイプ』と『ゴリラタイプ』の魔獣は?」
「あぁ、クマはクマでも、
『ギガントベア』は平均5m以上の
でかい巨体で、移動するスピードは遅くても
振り回す腕はとんでもなく早く、破壊力がある。
硬い筋肉がとんでもなく分厚く、
ちょっとぐらいのチカラでは傷もつけられない。
小さいサイズは、俺たちでも倒したことあるけど、
でかいサイズのやつは、
Bランク以上の実力がないと、まず倒せないだろう。」
「それに加えて、『ラスール』だ。
あれも平均5m以上の巨体で、
全身筋肉のムキムキゴリラだ。
移動力もなかなか早くて、跳躍もできるらしい。
群れで行動してるから、1体にでも
見つかってしまえば、群れをなして襲ってくる。
恐ろしい剛腕と牙が、何十体という
数の暴力となって、一気に襲い掛かってくるんだ。
Bランクの傭兵でも苦戦するだろうに、
洞窟という狭い空間で囲まれれば、確実に死ぬよ。」
なるほど。
話を聞いている分には、とてもじゃないが
攻略は難しいな。
ただただ、強い傭兵たちや騎士たちの集団で行けば
攻略できるというわけでもなさそうだ。
実際、長年討伐できていないわけか。
「しかし、誰も帰って来なかったんじゃないのか?
洞窟の中の魔獣なのに、
それだけ詳しい情報があるのは、どうしてだ?」
素朴な疑問だ。
「あぁ、その洞窟に
魔獣たちが出入りしてるのを確認してるからな。
たびたび、周辺の町や村に
そいつらが出没して被害に遭っているんだ。
今、向かっている『プロペティア』が一番ひどい。
毎日のように魔獣に襲われているから、
精鋭の騎士団や傭兵たちが集まっている町なんだ。
その騎士団や傭兵たちが魔獣の跡をつけてみたら、
『スヴィシェの洞窟』を住処にしているのが分かったそうだ。」
洞窟が魔獣たちの巣になっているわけか。
なるほど。
「というか、変なんだよな。」
「なにが変なんだ?」
「いや、そもそも
『ギガントベア』も『ラスール』も
森に生息してる魔獣なんだよ。
だから、昔から魔獣たちの情報は
ここに住んでる騎士団たちから、みんなに知らされてるんだ。
情報によれば、
『ギガントベア』は、冬になると洞窟で冬眠するらしいが、
それ以外の季節で、洞窟に住むなんて聞いたことがない。」
「だよな。
特に『ラスール』が洞窟に住むなんて、ありえないし、
もっとありえないのは、『ギガントベア』といっしょに
洞窟に住んでいるのが、ありえないんだよ。」
「あいつらで戦いあって
ともに倒れてくれればいいのにね。
なんで、いっしょの洞窟に住んじゃってるんだろ。」
たしかに、それは妙だな。
魔獣とはいえ、結局はケモノ。
お互いの縄張りみたいなものがあるし、
他の魔獣と慣れあうことは、ありえない。
「騎士団の話では、あの洞窟は
もともと『魔鉱石』の採掘場だったそうだ。
ほとんど掘り尽くして、もう廃坑になった洞窟らしいが、
魔獣たちのおかしな行動も、
その『魔鉱石』の影響かもって話だ。」
「へぇー、『魔鉱石』の影響なら、
まだ洞窟に残りがあるってことか?」
『魔鉱石』・・・鉱石のひとつで、
魔力を含んだ不思議な鉱石だ。
様々なアイテムや『魔道具』に加工されるため、
高値で取り引きされる。
たしかに、魔力に敏感な魔獣なら
その『魔鉱石』の影響を受けてしまうこともあり得るか。
「いやいや、おっさん、
『魔鉱石』を探しに行くなよ?
魔獣たちのエサになっちまうぞ。」
「ははは、まさか。行くわけないさ。」
オレは、適当に答えて
次の質問をした。
「ところで、聞きたいんだが、
その魔獣たちに『角』は無いんだよな?」
「え・・・?」
「無いけど・・・え?」
「それって・・・えぇ!?」
一瞬にして、オレの質問の意味を察したらしく、
三人とも変な目でオレを見るようになり、
それ以上、何も話してくれなくなった・・・。
「は~ぁ・・・おじ様、マイナス100点。」
木下がため息混じりにオレの評価を下げた。
なんで・・・
食べようとしたことがバレたんだ・・・?




