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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第三章 【聖騎士とバンパイア】
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青白い鎧の男




「整ったヒゲをはやしている男性は

だいたいプライドが高いんです。

王族、貴族、独裁者などなど、

高確率でヒゲをはやしているんですよ。

『ヒゲ=プライド』みたいなものなんですね。

そのプライドであるヒゲをつねに触る男性は、

プライドが高いうえに、

何かしら劣等感を抱いている人が多いんですよ。

だから、権威を振りかざす傾向が高い。

そこをつつくと、案外、弱いんですよねぇ。」


歩きながら、木下が

『ヒトカリ』で会ったポールについて、

ずっと喋っている。

幼いころから、社交の場へ出ていた

木下なりの『人を見るコツ』みたいなものか。

相手の特徴や会話中の仕草を観察しながら、

会話を、自分に有利な流れへ持ち込むらしい。

話術というか、交渉術というやつだな。


「ヒゲはヒゲでも、おじ様のように

無精ヒゲをはやしている人は、

『ヒゲ=プライド』じゃないんですよねぇ。

ヒゲを整えてない時点で、プライドよりも

大切な何かを持っている男性が多いですね。」


それとも、これは木下だけじゃなく、

世の中の女性みんな知っていることなのか?

聞いているだけで、気分が重くなる。

女性は、男のことを

なんでもお見通しなんだな。





カーーーン・・・


カーーーン・・・


静かな鐘の音が近くで鳴り響く。

今まで遠くに聞こえていた鐘の音が

こんなに近くで聞こえるとは・・・。

たぶん、あれは時を知らせている気がする。

今は、もう昼じゃないだろうか。

近くに時計がないから分からないが、

朝から質素な朝食しか食べていないため、

ずっと腹がグーグー鳴っている。


鐘の音に誘われたわけではないが、

ちょうどオレたちの進行方向に

鐘の音を鳴らしている場所があった。

そこだけ、明らかに他と違う建物で、

かなり大きい石造り。

やけに高い屋根の一番上に、

小さな鐘がゆらゆら揺れているのが見えた。


「ここは、『オラクルマディス教』の『教会』らしいですね。」


「『きょうかい』?

あー、宗教の教えを広める場所ということか?」


「そうですね、

そういう解釈で合ってると思います。

それにしても、立派な建物ですねぇ。」


すべて石でできている建物。

そのところどころの、細かい部分に

なにやら彫刻がほどこされている。

たぶん、道端でよく見かける小さな像と

同じ彫刻なのだろう。


ギギギギギーッ・・・


二人で建物を見上げていたら、

ちょうど建物の入り口の扉が開きだした。

かなり重そうな分厚い木の扉だ。

中から、青白い鎧を着た男が

大勢の白い鎧の騎士たちを引き連れて、出てきた。


「あー、なんだ、お前たちは?

見たところ、傭兵のようだが?」


いきなりオレと目が合ってしまった

青白い鎧の男がオレに近寄ってきて、話しかけられた。

年齢は、オレより年下に見える。

ちょっと威圧的な態度で、がっしりした体格をしている。


「あぁ、そうだ。

お前たちは、この国の騎士なのか?」


「見れば分かるだろ?

なんだ、この国に来て間もないのか?

俺を知らないとは・・・。

あー、それより、お前たち、

黒いローブを頭から被った子供を見なかったか?」


目の前の男は、少し苛立ちながら

オレに質問してくる。

黒いローブ?

頭からすっぽり被っている子供?


「見たことないなぁ。」


頭の中では、昨日、見かけた

あの子供が思い浮かんでいたが、

今日は、まだ見かけていないし、

知っていても教えるつもりもなかった。


「はぁ、そうか・・・。

話しかけてすまなかったな。

よし、お前ら、西側を探すぞ!」


「はっ!」


そう言うと、青白い鎧の騎士は

少しゲンナリした様子で、

大勢の騎士たちを引き連れて、

オレたちが来た方向へと歩いて行った。

ずっと探し回っていて、疲れている感じだな。


まだ見つかっていないようだが、

こんなに大勢で探しているのに

見つからないとは・・・

身を隠す才能があるみたいだな、あの子供は。


騎士たちが去ってから、木下が


「おじ様、さっきの騎士の言っていた

子供の特徴って・・・。」


「ん? あー、そうだな。

昨日、国境の村で会った子供の特徴に似ているな。

しかし、黒い布を被っている子供なんて

どこにでもいるだろう?」


「そ、そうかもしれませんが・・・。」


一瞬、木下には伝えておこうかと思ったが、

なんだか、木下の性格上、

子供を放っておかない気がしたので

話すのをやめた。


「・・・。」


ふと・・・気配を感じて、

目の前の建物の上を見上げてみたが、

小さな鐘がゆらゆら揺れていて、

小さな鳥たちが飛び立っていくところだった。

気配は、あれか?

まぶしい・・・。

陽が高い位置に近づいている。


「東側についたら、とりあえず

食べられる店を探すか・・・。」


「そうですね。

ちょうど、お昼になりそうですね。」


オレたちは、また東へと歩き出した。






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