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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
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ひどい寝起き





夜中、オレは一切、起きなかった。

木下に寝首をかかれるとか、

魔獣に襲われるとか、

命の危機など考えられないくらい、

完全に意識は夢の中にいた。


毎日、『ソール王国』の自宅で

眠っていたように。

夜襲に警戒することなく、眠った。

こんなに深く眠れたのは、

この旅を始めてから、初めてのことだった。


夢も見ないほど、

「気づけば朝だった」と錯覚するぐらい

ぐっすり心地よく眠れたのだ。




おかげで、体中の痛みも消え、

体力はすっかり回復できたのだが・・・。




「ん・・・。」


部屋の窓にはカーテンがなく、

朝日の光が直接、部屋の中へ差し込んできた。


本当に、ものすごく久しぶりに

ぐっすり眠れて、とても良い目覚めのはずなのに、


「んん・・・?」


体が重い?

そして、顔の上に何か乗っている?

モゾモゾと体を動かしてみるが、

まだ寝起きでチカラがうまく入らない。重くて動かない。

なんとか右手だけが動かせたので、

顔の上に乗っているモノを手に取ってみた。


「・・・?」


柔らかい布の感触?

それを目の位置でとめて、よく見てみる・・・。


「んー?」


自分が寝ボケているのか、

モノが近すぎるためか、よく見えない。

なんとなく、白い? 淡いピンク色のような?

両手が使えれば、コレを広げて確認できるのに。


しかし、やっと脳が起きだした感覚がある。

そして、体の感覚が、

徐々にはっきりしてきた。


「んー・・・。」


オレの耳元で、女の声がした!?

体が重いのは・・・誰かが乗っているからだ!

他人の体温を感じる!

動かせなかった左手を動かしてみると、

やたらと生暖かくて、柔らかい感触が伝わってくる!

そして、オレが目の前に

ぶら下げて見ていたモノは・・・


「ぱ、ぱんつ!?」


レース模様がある

薄いピンク色のパンツだった!


「あぁ、それ、私の・・・。」


「はっ!?」


オレが驚きの声をあげた時、

オレの耳元から聞こえてきた女の声が

それに答えた!


声がした方を見ると、


「あ、おはようございます。」


体を密着させている木下が、

ニヤニヤしながら挨拶してきた!

顔が、近すぎる!


「!!!!!」


オレは、あまりにも驚いて

大声をあげそうになったが、

すかさず


スッ


「!?」


木下が、オレの口に指を当ててきた!


「しーーー。

おじ様、冷静になってください。

今、大声をあげると

みんなの迷惑になりますよ?」


と、小声でささやいてきた!

誰のせいで!!!

・・・と怒鳴りそうになったが、

事が大きくなるのは、確かにマズイ・・・。

100%、オレが被害者であっても、

この状況を見られたら、

200%、オレが加害者にされるだろう。


木下は、オレの左半身に抱きついて乗っかっている状態で、

オレの頭の周辺は、木下の

ブラジャーやパンツなどの下着が散乱している状態だった。

どうやら、オレが枕代わりにしていた

木下の着替えの袋の中身は、下着類だったようで。

オレが寝がえりをうったか、なにかのはずみに

中身が出てきてしまったようだ。


それにしても、木下が

オレに抱きついている状況が、

よく分からないのだが・・・。


オレから、そっと離れて身を起こした

木下は、ハダカではなく、

ちゃんと寝間着を着ていたので・・・

変な間違いは起こっていないようだった。


木下は、床の上で正座して、

オレに謝ってきた。


「ごめんなさい、おじ様。

・・・夜中に、怖い夢を見てしまって・・・。

昨日の・・・私の魔法であやめてしまった方々に

襲われる夢だったもので・・・その・・・

怖くて・・・怖くて・・・。」


そう謝りながらも、肩が震えている木下。

夢を思い出しているのか、

昨日の戦闘のことを思い出しているのか。


・・・とにかく、木下を責める気が起きなかった。


「昨日のことは忘れろとは言わないし、

きっと、オレがそう言ったところで

忘れることはできないだろう。

でも、後ろばかりを振り返るなよ。

この旅の間に、

昨日みたいなことは、まだ起こりえるからな。」


そう、旅に命の危険は付き物。

これからも、対魔獣戦だけじゃなく

対人戦も起こり得るのだ。

木下は、うつむいている。

今は、何を言っても無駄かもしれない。

オレの言葉は気休めにもならないだろう。

それほどに・・・

実戦で人を殺すということは、

非日常的で、衝撃的で、慣れるものではないのだ。


「しかし、怖い夢を見たからと言って

軽々しく異性に抱きついて良いわけがない。

それは、信頼うんぬん関係なく、

しっかり守ってほしいものだ。」


信頼しているからこその

行動だと分かってはいるし、

オレ自身も木下も、お互いを

『そういう対象』として見てはいないが・・・

人間は、誰もが間違ってしまう生き物だ。

間違いが100%起こらないとは

誰も言えないのだ。


「分かってはいたのですが・・・

私、幼い頃から『森のくまちゃん』が大好きで、

ぬいぐるみを抱いて寝ていたくらい好きで。

あの『くまちゃん』を抱いて寝ると、落ち着くのです。」


はぁ・・・また『森のくまちゃん』か。


「お前の言い分は分かったが、

オレは『くまちゃん』じゃないからな。

こんな、ごっついおっさんをつかまえて

落ち着くも何もないと思うが・・・。

とにかく、もうやめてほしい。」


「・・・分かりました。ごめんなさい。」


木下は、まだ納得いってない表情だが、

こんなことが頻繁に起こると、

おちおち安眠できなくなる。


「それで、あの・・・。」


「なんだ?」


「わ・・・私のパンツ、返してください・・・。」


「はっ!!」


木下に説教していて、すっかり忘れていたが、

オレの手には、木下のパンツが

しっかり握られていた!


「す、すまん!」


慌てて、それを木下のほうへ放り投げる。


「あぁ! もう!

もっと丁寧に扱ってください!

女性の下着は、繊細に出来ているのですよ!」


木下に怒られた。


「す、すまない・・・。」


結局、最後には

オレが謝るパターンなのだな。

やれやれ・・・。



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