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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
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二人の祝杯






「おじ様? おじ様?」


「んん・・・あれ? 木下・・・?」


「ユンムです。

おじ様、もう夕飯ができたようですが、

先にお風呂、入っちゃってください。」


「あぁ・・・あー・・・

そうか、寝てしまったようだな。」


オレは起き上がり、背伸びした。

木下が、いつの間にか風呂から上がっていた。

オレは、ベッドの上で地図を広げながら

うつぶせで寝てしまっていたらしい。

どうやら、

地図にオレのヨダレがついてしまった。


「あー・・・

地図に新しい池が出来ましたねぇ。

いや、その大きさは湖かなぁ?」


木下が、意地悪なことを言う。


「す、すぐに拭けば跡には残らんだろう。」


恥ずかしい・・・。

オレは慌てて地図を拭いた。


前日に野宿で仮眠しかしていなかったし、

ここのところ、しっかり安眠していない上に、

今日は、激しい戦闘があったので、

オレの体力が限界のようだ。

もう眠気にあらがえない。





「いたたたっ・・・つぅぅぅぅ・・・。」


オレは、うなりながら風呂に入った。

体中の関節が、まだまだ少し痛む。

戦闘中にひねった腰も、

動くたびに、鈍い痛みが走る。

回復用の薬で「痛みが消えた」と錯覚していた効果が

もう切れたみたいだ。


民宿の風呂は、とても狭かった。

学生の頃の、学生寮でも、

これよりは広い風呂だった気がする。

オレがうっかり寝てしまったベッドにしても

かなり固い感触だった。

・・・レーグルが、

もうここには泊まりたくないと

感じるのも分かる気がした。


しかし、


「うまい!」


風呂上がりの晩飯は

格別に美味しかった。

今まで、辛い食べ物ばかりだったのに、

この民宿では、辛い食べ物が少ないようだ。

木下も、久々にサラダ以外の料理を食べれて

満足しているようだ。

オレ好みの料理というか、

おそらく店主と同じ年代だから

味の好みが同じなのだろう。

どれもこれも、酒に合う料理のようだ。


ふとオレが上目遣いで

木下を見たら


「いいですよ、お酒。飲みたいんでしょ?

私は飲みませんけど。」


快く許可が出た。

店主に注文したら、

王都で飲んだエールというお酒が出てきた。

この国では定番のお酒なのだろう。

アルコールが強いから、1杯だけにしておいた。


おもむろに、水が入ったコップを掲げる木下。


「なんだ?」


「私たちが、ちゃんと依頼をこなした

お祝いとして乾杯を。」


そういえば、初の依頼である

『ボルカノ配達』は、王都の『ヒトカリ』で

ウヤムヤのまま達成になってしまったが、

クラテルからの依頼は、間違いなく

自分たちで達成したのだ。


「そうだな、初の依頼達成だな。

では、乾杯といくか。

ところで、それは本当に『水』なんだろうな?」


ちょっと意地悪を言ってみる。


「み、水です!

匂いも色も、間違いありません!」


王都の宿屋では、木製のコップだったが、

今回は、透明なガラスのコップだから

間違うはずもないだろうな。


「では、私たち、『森のくまちゃん』の

初依頼達成を祝して!乾杯!」


「うっ・・・乾杯・・・。」


カチャン


幸い、店主には聞こえなかったようだが

恥ずかしすぎる・・・。

美味しそうに水を飲む木下。

オレは、なんとも恥ずかしい気持ちで

酒を飲んだ。

そうだった・・・パーティー名・・・。

まだ、いい代案が思い浮かばない。

もう「今さら」という感じもする。





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