表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第二章 【王国の秘密】
103/502

討伐完了後





レーグルからの手紙が王城へ届いたのが、

ちょうどお昼ごろだったそうだ。

「証拠を得ていないが、騎士団長に反逆の疑いあり」

というような内容の、その手紙は、

レッサー王へ直接渡され、すぐに内容を確認し、

速やかに王様が信頼する大臣、騎士たちを集め、

油断していた騎士団長を捕縛。

すべてを自白させたらしい。


騎士団長を捕縛したことにより、

反逆に加担していた『元・黒い騎士団』の

騎士たちも、次々に自白し、捕縛され・・・。


そして、『元・赤い騎士団』たちで

編成された小隊を、すぐさま『ボルカノ』へ

送ってくれたそうだ。


つまり・・・


「はぁ・・・

つまり、オレたちは、王都からの騎士団を

待っていればよかったということになるよな?」


「いやいやいやっす!

王国最強の前・騎士団長・アンサンセ様を倒した

トライゾンを討伐できるのは、佐藤さんだけっすよ~!

俺たちでは、とても捕縛できなかったっす!

だから、本当に、感謝してるっすよ!

もちろん、ユンムさんの大活躍もあってこそ!」


レーグルは、

騎士団の小隊が到着してからも、

ずーっと、オレたちを持ち上げてきている。




王都からの騎士団が『ボルカノ』に到着してから、

騎士団長たちの自白や捕縛の報告を受けた。

『窃盗団』のリーダー・トライゾンも

騎士たちに捕縛され、馬車に乗せられて

王都へと搬送されていった。

母親も、トライゾンに付き添っていった。


ほかの村から連れてこられた村人たちも、

被害者ではあるが、脅されていたとはいえ

一度は反逆に加担しようとしていたわけだから、

全員、身柄確保と事情聴取のために

馬車に乗せられて王都へ搬送されていった。


新しい騎士団長には、

『元・赤い騎士団』の副団長だった男が

就任したそうだ。

そして、近々、あのクラテルが

副団長になるという話だった。




『レッサー王国』の『窃盗団』の事件は、

これで全て解決したと言えるだろう。




そして、今、オレたちは

『ボルカノ』から東の村『ブルカーン』へ向かって、

馬車に乗っている。

レーグルの計らいで

騎士団の馬車で送ってもらえることになったのだ。

馬車の中には、オレと木下が並んで座り、

対面には、ずっとニコニコしているレーグルが座っている。


王国の脅威だった『窃盗団』を討伐したということで

本来ならば、王都まで戻り、

王様から直々に褒美を受け取れる資格がある。

と、レーグルに説明を受けたが、

オレたちは『特命』の隠密行動中であり・・・

身元を調べられたら、

『ソール王国』出身者だとバレそうだったし、

早く東へ向かいたかったので、辞退した。


それに・・・一介の傭兵の功績ではなく、

騎士団の功績ということにしておけば

『窃盗団』によって損なわれていた

騎士団の威厳が回復すると思ったので

そのように騎士団に提案しておいた。


「いや、マジすっげー

いいこと思いつきますよね、佐藤さんは!

そして、それを実行しちゃう行動力!

マジ尊敬するっす!」


レーグルは、ずっとこんな調子だ。

『窃盗団』と戦う前までは、

木下にばかり話しかけて、木下のことを

ベタ誉めしていたくせに・・・。


それにしても・・・


「佐藤さんが村に突入する前のセリフが、

また、かっこよかったっすよねー!

なんて言ってましたっけ? ほら、あれっすよ!」


覚えてないじゃないか。


こんなチャラチャラした男が、

この王国の王子だったとはな・・・。


この王国の王子は長男と次男がいるそうだ。

レーグルは、次男。

長男が、そのまま王の座を引き継げば、

レーグルは、騎士団長の座に就く・・・

という予定だそうだ。

そうでなくとも、この国の王子は

代々、一度は必ず騎士団に入団することになっていて、

心身ともに鍛えているそうだ。

つまり、レーグルは今、修行中の身ということだな。


「それに、ただの傭兵だと思ってたっすけど、

佐藤さんって『騎士』だったんすね!」


「あ・・・。」


しまった・・・。

騎士であることを隠していたのに・・・。

戦いの最中の会話だったから、

うっかり素直に話してしまっていた・・・。


「今まで本物の『竜騎士』に

出会ったことなかったっすけど、

すんげー強いんすね、『竜騎士』って!

普通の騎士より強いんじゃないっすか!?」


傭兵の中にも

騎士の資格を持つ者はいるだろう。

だから、オレが騎士であることが知られたとしても

あんまり不都合がない気もするが・・・

そこから『ソール王国』出身者であることが

バレる可能性がある。


「あー・・・そのことだが、

レーグル、あんまり他言しないでくれ。」


「なんでっすか!

すんげー強い『竜騎士』の話、

みんなに言いたいっすよ!」


「いや、オレたちにも事情が・・・。」


「レーグル王子。」


木下が、レーグルを呼ぶ。

そうか、オレも「王子」と呼ぶべきか。


「ユンムさん、今さら『王子』って

言わなくてもいいっすよ~!

俺とユンムさんの仲じゃないっすか!」


どんな仲だ。


「では、レーグルさん。

・・・くれぐれも、おじ様のことは

他言無用に、お願いいたします。

私たちのことは、ナゾに包んでおきたいんです。」


「え?」


なんだ、「ナゾに包みたい」だと!?


「えーっと、どういうことっすか?」


それはオレも聞きたい。


「じつは、私たちは

『ヒトカリ』に登録したばかりの

新人傭兵なのです。だから、まだランク外なのですが、

これから、どんどん依頼をこなして

実績と信頼を積み重ね、ランクを上げていく予定です。」


「だったら、なおさらっす!

強い『竜騎士』の佐藤さんのウワサが広まれば、

依頼もジャンジャンくるし、

ランクもアゲアゲっすよ!」


レーグルの言っている言葉は分かりづらいが、

おそらく、その通りなのだろう。

強い傭兵というウワサが立てば、

有名になりやすいものだ。


この世は、なんでもそうだが、

有名な者ほど、仕事がうまくいく。

たとえ悪評であっても、その名が

世の中に広まれば、その世界で食べていけるのだ。


「いいえ、そこはあえて

ナゾに包み込むのです。

ランク外の傭兵たちなのに、

なぜかバンバンと依頼をこなしているって感じに!

人は、ナゾの部分があると

気になってしまうものです。

そちらのほうが、ウワサがウワサを呼び、

一気に注目されるはずです!」


なんか、ウソくさいのだが・・・。

まぁ、これも戦闘中のオレの失言を

取り消すためのウソなのだろう。

苦労を掛けるな・・・。


木下のウソがうまいのか、

レーグルの理解力がすごいのか、

よく分からないが、レーグルは、

すごく真剣に木下の言うことを聞いている。

というか、こいつは

女性の言うことなら、なんでも聞くんじゃないか?


「そして、有名になってから、

ドーンとナゾを明かすのです!

すると、ウワサが広まっていた分、

さらにウワサの答えがウワサになって、

さらにさらに広がっていくのです!!」


木下の言葉も、

何を言っているのか分からなくなってきた・・・。

キラキラ輝くような顔で木下が力説し、

それをレーグルがキラキラした顔で聞いている。


「やがて、世界中の人々に

私たちのパーティー名が轟くのです!

そう、私たちこそが

ウワサの『森のくまちゃん』なのだと!!」


「うっ!」


木下が、決め顔で

また、あの恥ずかしいパーティー名を

名乗りやがった!


「え!

ユンムさんたちのパーティー名って

『森のくまちゃん』なんすか!?

ハンパなく、かわいいっすね!」


「でしょう!?」


木下とレーグルが意気投合している。


「ぷっ!」


「!!」


こちらに背を向けて

馬を操作している御者の騎士が吹き出した!

しっかりオレたちの会話が聞こえていたらしい。

・・・は、恥ずかしい・・・。


「き・・・ユンム、

やっぱりオレたちのパーティー名は・・・。」


「俺、小さい頃から

『森のくまちゃん』好きだったんすよ!」


「私もー!」


ダメだ。

意気投合している二人は

すっかり盛り上がっていて

オレの話に耳を貸してくれない。


「はぁ・・・。」


・・・新しいパーティー名を

早く考えなくては・・・。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ