佐藤健一、58歳。
佐藤健一、58歳。
職業:城門警備隊、役職:隊長。
ひとつに『城門警備』と言っても民営の警備会社ではなく、
国家直属の警備隊、いわゆる『公務員』だ。
でも、ここ『ソール王国』は決して大きな国じゃないし、
敵国もいなければ、魔物もいない領域だから、
公務員の中でも、人気がない職業だ。
隣りに住む奥さんに話したときなんて
「え? 城門警備って公務員だったの?」
なんて驚かれたくらいだ。
そして、オレは一応、『竜騎士』の国家資格を持っている。
この資格を持つ者は、魔物の中でも強大なドラゴンを倒す
スペシャリストなのだが・・・
そのドラゴンがいたのは、今から数百年も前の話で。
その昔は、一匹のドラゴンを倒さないと取れなかった資格も、
今では体術系の大学さえ出ていれば、誰でも受験資格があって、
簡単な実地試験と筆記試験で取れるのだ。
オレは、公務員になりたいってだけで、とりあえず取った資格だった。
本当は、王宮の中を警備する『王宮警備隊』になりたかったのだが、
そこは公務員の中でも、競争倍率が高い職業で、
オレは何度も面接を受けたが、落ちてしまった。
やはり『竜騎士』なんて『なんちゃって騎士』だから、
本物の訓練を受けた『騎士』の資格を持つ者たちが
優遇されてしまうわけだ。
仕方なく競争倍率の低い『城門警備隊』の面接を受けて
採用されて・・・以来、ずっと小さな城門を守ってきた。
今では、ゆるゆるな城門警備に就職できて良かったと思っている。
勤続年数は30年以上。オレも歳をとった。
あと数年で定年だ。
定年後は、何をするか・・・全然決めてない。