人助け
村の兵士から逃げ、森の中に入って歩いていると、女性の悲鳴が聞こえた。
「急げ!! 俺、急ぐんだ!! 助けれる命があるなら救わないといけないんだ!!!」
俺は、今も聞こえる女性の悲鳴がする方に向かって走っていく。
「あそこだ!!!」
俺の目に飛び込んできたのは、今にも女性が殺されかけている瞬間だった。
「おりゃっ!!」
それが見えた瞬間、剣を握っている奴に向かってタックルを喰らわせた。
「んがっ!! ……いってーな。誰だ? あ? ガキじゃねぇか」
「た、助けて下さい!!」
「あぁ、もちろん」
敵の数は8人。こっちは、女性が2人に、倒れている騎士が4人。
「行くぞ」
俺は未だにこの力に慣れていない。殺さずに捕まえる力加減が出来ない。それをするには集中しないといけない。けれども、こんな切羽詰まった状況でそんな事は出来ない。
だから、俺は地面に向かって拳を振り下ろした。
「っ!? 目眩し!? 砂の動きに気をつけろ!!」
「「っうす」」
すぐに作戦がバレたが大丈夫だ。俺はスキルを発動させた。
「空歩!」
俺は、空中に跳んで奴らの頭上にやって来た。
「喰らえ!!」
俺は、戦闘で魔法を初めて発動させた。魔法はイメージ、想像力でどんな魔法になるかを自由に変えることが出来る。
そして、今回使ったのは火・水・風・土・光・闇属性の中での、風属性の魔法を使った魔法だ。
風を鋭く固まらせて、それをいくつも作った。そして、奴らに向かってまばらに放った。
「バレット!!」
土煙が舞う先では、奴らの声がこだましていた。
土煙が無くなった先には、全身傷だらけで動けなくなっている奴らが倒れている。
「良かった。死んでない」
「あ、あの、助けて下さりありがとうございます!!」
そう言って、少女は頭を下げた。
「私からも、お嬢様を助けて下さりありがとうございます!!」
「あはは、こちらこそ、助けられて良かったです」
その後も、騎士の人からも助けられた事を礼された。
「皆さん。ちょっとここに、固まって下さい」
みんなは、頭に???を浮かべていた。
「それじゃ、行きますよ」
祈るんだ。このスキルは思いの強さで威力が変わるんだ。
「回復!!」
その人たちの身体が緑色の光に包まれた。
「ありがとうございます!!」
「本当に、何から何までありがとうございます。あなたは命の恩人だ」
みんなから三者三様のお礼をまたもや受けた。
「あの、助けてくれたお礼をさせてくれないでしょうか?」
「あー、すみません。お気持ちは有難いのですが、ちょっと急いでまして」
「そ、そうですか。では、お名前だけでも!!」
「えっと、うーん、グラスって言います。それでは!!」
そこから逃げるように走り去った。
「……グラス様。ふふ」
「あ、名前もまずかったよな」
そして、その後その少女は知ることになる。助けてくれた男が世界的に指名手配されている事に。