指名手配
「……村だ」
俺が、その村に近づくと、鎧を身に纏った兵士が現れた。
「君。ここで何してる?」
「えっと、道に迷っちゃって」
「道に? そっちの方向は森だけだった筈だが?」
「えっと、それは、何といいますか……」
「怪しいな。身分証を見せてくれるか?」
「は、はい。『ステータスオープン』」
「……君。地獄の人間か?」
「え? あ」
俺はその時初めて気付いた。ステータスがえげつないほど高い事を。
それを、全く変えずに見せてしまったことに。
ーーーーー
名前:グラス
体力:1300000
魔力:900000
攻撃力:750000
防御力:600000
俊敏力:800000
運:10(限界)
魔法適正
・全属性Lv.10
スキル
・畑・武術Lv.10・家事Lv.10・製造Lv.10・戦闘Lv.10
ーーーーー
の、ステータスを見せてしまったのだ。初めて見たものがある? ちょっとだけ、説明するよ。
・武術:剣や盾など、武器を扱うスキルを全てLv.10になった時に統合される。
・家事:掃除や料理など、家事をこなす為に必要なスキルが全てLv.10になった時に結合される。
・製造:大工や鍛治など、何かを作ったり、採掘や伐採など、何かを採取するスキルを全てLv.10になった時に結合される。
・戦闘:戦闘に必要なスキルが全てLv.10になった時に結合される。
まぁ、こんな感じだ。
って、呑気なこと言ってる場合じゃないよ!!
「地獄? とは?」
「この、浮島の下にある、大地とやらの事だよ。お前、そこから来たんだろ?」
「え、そんな訳ないじゃないですか」
「だったら、そのステータスはどう説明する? 地獄と言われる程だ。そんなステータスしてても納得だろ?」
「えっと、いや〜、そんな事は〜」
「聞こえるか?」
兵士は何かポケットから石を取り出して喋り出した。
「こちら、Sの最端。地獄のものと思われる奴が現れた。指名手配を頼む。見た目は、珍しい黒髪黒目の身長は160cmだと思われる。服装は黒いズボンに白い服を着ている。以上だ。頼んだ」
「……え? 今のは? 指名……手配?」
「ほらな、さっきの奴を見せても何の反応も見せない。それが、地獄の人間である証拠だ」
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!!!!
「逃げの一手!!」
俺は、村を囲む柵の側を走って逃げる。
そして、またもやよく分からない森の中に来てしまった。
「まじか〜、いきなり指名手配か。どうにか、誤解を解かないと」
その方法を考えながら歩いていると、何処からか女性の悲鳴が聞こえた。
「っ!? た……すけれる!!」
そうだ。今の俺は昔の俺じゃない。助けようとして力が無くて見て見ぬ振りをするんじゃない。今は力を持ってる。これで、人の役に立つんだ!!