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静寂なる街並み、涼風の抱擁。

「お、家が見えてきたな。って、あれはグライさん?」


 完成間際の我が家の側で尻もちを付いて呆然としている。


「あのおじさん、腰抜かしちゃってるけど大丈夫?」


 絶対に大丈夫では無い。

 先の事件の後で住民は出歩いてないだろうと決め付けていたのが間違いだった。


「おーいグライさーん! 俺です、クロツグです!」


 取り敢えず身を乗り出し敵では無い事を主張。


「うおああぁぁぁ!? って、な、なんだクロツグか。驚かせやがって……って! そうじゃない! どうしたんだそのワイバーン!?」


 一瞬安堵したグライさんだったが、すぐさま再び驚愕の相を浮かべる。


「なんか付いてきちゃいまして」


 コイツだけ付いてきた理由は俺にも全く分からない。


「なんか付いてきたって、お前……包囲網潜って来た敵だと勘違いして死を覚悟したぞ……」


 脱力しながら目を閉じ空を仰ぐグライさん。


「……配慮が足らなくてすみません」


「まぁ今ほっつき歩いてるバカなんて俺ぐらいしか居ないだろうけどよぉ……マジでビビったぞ」


「ほんとすみません……ところで、今日はどのような――もしかして、もう完成してたり?」


「それがよぉ、丁度完成間際ってとこで緊急避難命令が出てちまってな、今さっき解除されたから家が無事かどうか急いで確認しに戻ってきたんだよ」


「ああ、なるほど。そういうことでしたか。そうだ、折角ですし完成までを見届けててもいいですか?」


「そりゃあ構わねえが……別に、見てて面白いもんでもねーぞ?」


「今日は丁度もうゆっくり休もうと思っていた所で。丁度いい暇つぶしになりそうです」


「そうか、そういう事なら好きにしてくれて構わねえ」


「ありがとうございます。お仕事頑張ってください」


「おうよ! 立派に仕上げてやらぁ」


 さて、あいつら呼んでこよう。


 ――楽しそうに二人でなんか喋ってて非常に微笑ましい光景である。




「クロさんって案外社交的なんだね」


 私は知っている。


 人と喋るのがあまり好きではないご主人がああして人との関わりを持つよう尽力しているのは他でもない、私の為であると。


「ましろ、ご主人が誰かとおはなししている時は基本おとなしくしているんです」


 本当は自分だけを見ていて欲しい。

 そんな我がままは決して口にはしない。


 その心はいつだって私の方を向いているのだから。


「なんか邪魔しちゃ悪い雰囲気出てるよね」


「それにご主人が長くお話しした後ほど、お金やごはんが沢山湧いて出てきますし」


「あははっ! そりゃすごいや」




「おーいおまえら~、一旦宿に戻って飯と引っ越しの準備するぞ~」


 それとカミルも呼んで挨拶会でも開かないとな。


「あ、は、はい!」


「ちょっ、ましろ、置いてかないでってばぁ!」




「これが噴水ですよ。ふー、やっぱり涼しくて気持ちがいいですね」


 絶えず清潔な水が溢れ出すこの場所はこの街が豊潤であることの象徴とも言えるだろう。


「おぉ……! 近くで見ると結構迫力あるね……!」


 すっかり履き慣れてしまった靴を脱ぎ捨て、流水で素足を遊ばせるましろ。


「レイちゃんも水浴びしましょうよ! こっちの方がもっと涼しくて気持ちいいんです!」


 確認を取るかのように俺の顔を覗き込むレイ。


「はは、いってこい」


 うーん、いつもはこの辺に氷菓子屋がいるんだがな……今回はあんな事があったし、仕方なしか。


「ご主人〜、もうびしょびしょです〜」


「ましろ……容赦なさすぎ……」


 ま、まずい。薄手の服だから色々まずい。

 辺りに人は――居ないからセーフ。


「はしゃぎ過ぎだぞお前ら……ここ入ってさっさと着替えて来い」


 速やかに近くに生えていた木の根本の影を濃くし、中への視界が完全に遮断された領域を作る。


「そ、外で? 流石に恥ずかしいんだけど……って、なんかめっちゃ暗い!?」


「ほら、これなら大丈夫だろ。分かったらさっさと着替えて来い、風邪引くぞ」


 風邪に関する良い思い出は一つも無い。


「レイちゃん、一緒に着替えましょう。この服とかどうですか?」


 ましろもお洒落に興味を持ってきたのだろうか。

 少なくとも無関心では無くなったように伺える。


「わぁ、すっごく可愛い! あたしが着ていいの? これ」


 暗黒空間からポイポイと投げ出されていく服を眺めながら、事が終わるのを噴水の縁に座して待つ。


「おや、これはなんでしょうか?」


「ひゃああぁ!? ど、どこ触って、いやぁあ!?」


「すみません間違えました」


「ぜったいわざとだよね!?」


 何やってんだあいつら……

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