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従魔の嗜み、招かれざる客。

「一旦宿に戻るか。こんな荷物抱えてたら散策どころじゃないし」


「ほしいものたくさん買えて大満足です! ありがとうございます、ご主人」


 両手をおやつでいっぱいにしたましろがホクホク顔をしている。


「こんな風にのんびり買い物をするのもいいもんだなぁ」


「……戦うのよりも楽しいかもしれません」


「お前が戦闘以外の事に楽しさを見出してくれるってのは俺としても嬉しい」


「あそこ、ヒトが集まってますね。何かあるんでしょうか」


 何か良からぬ事が起きてそうな雰囲気を肌が感じ取る。


「ちょっと行ってくる。荷物頼んだ」


「あっ、ご主人?」


 そこそこ開けた場所。

 喧騒の中心では見覚えのある顔が一人と見慣れない風貌の男、女が数人。


 あれは建築場で俺達を案内してくれたグライさんか。


 その数人から挙って敵意を向けられているようだが、情報を引き出す為にちょっと傍観させてもらおう。申し訳ない。


「なぁイライグ、テメェはこんなトコで何してやがんだ?」


「ハッ、腐りきったあの街に見切りを付けただけの事。それの何がワリぃってんだ?」


「この僕から逃げられるとでも? つくづく愚かなヤツだね」


「テメェのそのクソッタレなツラを拝むのも久々だな? 出来れば二度と御免被りたい所だったんだがな!」


「アグスティン様。この者、如何致しましょう」


「直ちに始末しろ、他の逃亡者に対する見せしめも兼ねてね」


「御意」


「……ハッ、俺もここまでか。短い夢だったな――親方、すまねぇ」


 ――潮時か。



「お取り込み中申し訳ないんだけど、この街で勝手なマネされたら困るんですが」


 カッコ付けたはいいが中途半端な敬語で残念な感じの登場になってしまった。


「――!? お前、クロツグか!? 俺の事はいい! 頼む、逃げてくれ!」


「誰だい、キミは。正義の味方気取りの一般人風情がこの僕に楯突くとでも?」


「正義、ですか。そうですね。正義の名の元、貴方方を排除したいと思います」


「チッ。おい、カミル! 構わん、殺れ」


「……はい。――!?」


「おとなしくしててね? 殺したくは無いから」


「な、一体何が……? ……フッ、ただのガキ一人にそのザマとは、カミル。キミ、分かってるだろうね?」


 カミルと呼ばれた女の子の顔が悲壮に染まった。


「それで人質を取ったつもりかい? 愚かだね。キミ達! そのガキをさっさと片付けろ!」


 この子は捨てゴマってか。


 黒い感情が体中を渦巻く。


 生命が、灯火が、渇く。


「ヒッ、お前は、バ、バケモノか……!? 僕は一旦引く! キミ達! 時間を稼げ!」


 アグスティンと呼ばれた男の周りに侍る者達は、彼からそう命令される前にも魔力を高め始めていた。


 その周囲の空間が歪み始めたと思った次の瞬間、そこにはまるで元から何も無かったかの様に無が佇むばかり。


 何だ今の。すげえな。俺にも出来ないかな?


「クロツグ……お前、やっぱりタダモンじゃねえな……」


 ふう、今回は魔力の調整が上手く行ったみたいでよかった。

 マトも死んでは無いっぽいし。


「逃しちゃいましたね、怪我はありませんか?」


「ああ、お陰様でな。この通りだ。なんて礼を言ったらいいか」


「それならそこにぶっ倒れてる奴等を運んどいて下さい。三日ぐらいは起きないと思うんで」


「わ、わかった……? クロツグはこれからどうするんだ?」


「相方を待たせてるんでもう行きます。すみません」


「お、おう? そうか? なら最後にちゃんとした礼だけ言わせてくれ、本当に助かった。この恩は一生忘れん」


「後でアイツらとコイツらについての話だけ聞かせて下さい」


 十中八九リケート関係のしがらみだとは思うけど。


「その程度、お安い御用だぜ」


「それではまた、何かあったらいつもの宿までお願いします」


「あ、あの……ボクは?」


 あれ、きみは倒れてなかったのか。

 カミルと呼ばれた女の子がタジタジしている。


「まだ敵意を向ける気はある?」


「い、いえっ。とんでもない」


 そんなビクビクせんでも殺したりせんが。

 うーん、どうしよう。


 確かにもう敵意の欠片も抱いてないっぽい。

 俺の勘も悪いものでは無いだろうと告げてくる。


「一緒に来る?」


「へっ? はっ、はい。……?」


 そのまま戻ると、露骨に不機嫌そうな顔をしたましろに出迎えられた。


「うー、ご主人だけ楽しそうでずるいですー!」


「別にたのしかねぇよ」


「で、そのヒトは?」


「拾った」


「ご主人?」


 ガルル、とましろに殺意を向けられ、カミルがビビっている。


「まあまあ。クズな主人に飼われて、危うく処分されかけてたんだ。お前にも彼女の気持ちくらい分かるだろう」


「まあ、そうですけど……」


「カミル、こいつはましろだ。怖くないから仲良くしてやってくれ。ましろ、ほら」


「もう、しかたないですね」


「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします。ましろ様」


「ましろはましろです、よろしくおねがいします」


「あと……すみません。ボク、男です」


 えっ。

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