帰る場所、のどかな街並み。
「本当に早いな、もう大分形になってきてるぞ」
「ここがましろとご主人のおうち」
「立派なモンだな、まさか自分の家を持つ日が来るとは思わなんだ」
「どんな暮らしが待っているんでしょうか」
「前にも言ったが誰にも邪魔されず、雨にも風にも怯えずに済む。そんな、当たり前の暮らしだ」
「ましろにはちょっと想像もできません」
「想像なんか出来なくても、もうじき現実になる。完成の日がより一層待ち遠しくなるな」
「なんだかわくわくして来ました。ご主人も珍しくうれしそうです」
「俺が嬉しそうなのって珍しいのか」
「ご主人が嬉しそうにしてるのなんて、ましろを抱っこしてる時ぐらいです」
「言われてみりゃ確かにそんな気がしないでもない」
「はっ! ご主人のうれしさをひとりじめ出来なくなってしまいました……」
「それはなんかちょっと違う気がするが? 色々な意味で」
「ご主人はましろだけにしあわせを感じていればいいんです」
「なんか急に話が重くなってきたな?」
「もうおうちは十分見たので、違うところに遊びに行きましょう」
家に嫉妬するとか執念深すぎるだろ。なんか身の危険を感じてきた。
「あ、ああ。そうだな、面白そうなモンでも探しに行くか」
カネもまた結構貰えた事だし。
人質効果か、白金貨20枚も貰えた。ちょろい仕事である。
家の内装を何処で仕入れるかとかも考えておかないと。
「ご主人とおさんぽするの、たのしいです」
それにしてもこの辺りは本当に静かだな。
建築予定場の周りには木々が立ち並び自然で溢れている。
ここから少し離れた所には噴水が立ち昇り、涼し気な雰囲気を演出している。
同じ町内でも数百歩歩けば全く違う景色が目の前に広がるのだ。
目が飽きず、ただ歩くだけでも全く退屈する事がない。
そんな景色の中に紛れる、小粋な店が一つ。
「ご主人ご主人。あれ、すっごくキレイですよ!」
「ホントに綺麗だな。なんだろう、あれ。食い物っぽくはあるが」
心地の良い冷気が肌を撫でる。
おもむろに近寄り何の店か尋ねてみると、氷菓子? というものを売っている店とのこと。
菓子ってくらいだからやはり食い物らしい。
「欲しいか? って、聞くまでもないか」
まーたこいつは子犬みたいなキラキラした目しやがって。かわいい。
近くに設置されているテーブルと椅子に相向かいになるように腰掛ける。
「ほら、冷たいから気を付けろよ」
「はい! はむっ。ちべたい、っ!」
「おい、俺の話聞いてたか?」
「あまくておいしいです」
「そ、そうか。俺も食べよ」
ほほう、面白い食感だな。
口に入れた瞬間、口内の熱でホロホロと溶けていき、甘味がゆったりとそれを支配していく。
「う〜、あたまがキーンってします……」
「お前はその早食いのクセを今のうちになんとかした方がいいと思う」
「おいしいものは待ってくれません、すぐに誰かの口のなかです」
「誰かって誰だよ。そんな命知らずがいたら見てみたいよ」
「あっ、ご主人。口に付いちゃってますよ」
「えっ、どこ」
「ここです」
ましろは身を乗り出し顔を近づけると……そのまま俺の頬に付いた氷菓子を舐め取った。
「そういう事平気でしてくるよなお前」
「いけませんでしたか? 昔はよくしてたじゃないですか」
「だからその姿で昔と同じコトされると色々とまずいんだって」
「うぅ、ご主人との距離が遠くなっていくのを感じます」
「付かず離れずくらいの関係が一番長続きするらしいぞ」
「でもご主人、どんなにくっついても離れてもましろとご主人は永遠です。よってそれはへりくつだと思います」
「飽きるような安っぽい愛を抱いた奴の戯言ってか」
「ましろとご主人には関係のないお話です」
席を立ちそんな他愛のない話をする間にも、辺りは賑やかな雰囲気に染め替えられつつある。
今日はどことなく人気が薄い気がする。
のどかな雰囲気を楽しみながら、のんびり街中を散策しつつ暇を潰せそうな場所を探す。
面白そうなモノを売ってそうな店とか無いかな?
と、周囲を見渡すと明らかに異彩を放っている一軒の店が目に入った。




