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平凡な素材、非凡な料理人。

 長いテーブルの上には三人分の食事。

 質素だが実に気品に溢れた料理だ。平凡な素材達が活き活きとしているのが伝わるよう。


 そして料理に吸い込まれるましろを捕まえる。


「平凡な食材でも、料理人次第ではどのようにも化ける。これは料理に限った話ではない」


「この街は平凡であった。しかし私は常に彼のような料理人であり続けようと尽力した」


 テーブルの隅には町長。傍らには料理人らしき男。


「ようこそ、我が館の食事会へ。歓迎するよ」


「お招きいただき恐縮です。彼は本当に素晴らしい料理人ですね」


「君にも分かるのかい。彼の偉大さが」


「ちょっと旦那? むず痒いのでやめてくれやせん?」


「なんだ、照れているのかい? 謙遜することは無いよ」


「あんまりからかわないでくだせぇ」


「はは、すまない。クロツグ君、ましろ君、こちらに」


「失礼します。ましろ、お前はここな」


「我が息子は手ごわかったかい?」


 うーん、うーん?


「ま、まあまあ手ごわかったですね」


「その様子だと勝負にもならなかったようだね、全く。親として情けない限りだよ」


 やばい、セタスさんが危ない。


「あまり無茶な振りは止めて差し上げてください」


「この街を背負う器に足るのかどうか。苦悶の日々だよ」


「お会いした限りでは町長の息子という肩書に足る方だと思いましたよ。人望も厚いようでしたし」


「そうかい? 君が言うと説得力があるね」


 セタスさん、手は尽くしました。あとは頑張ってください。


「食べながらで結構だよ。では本題に入ろう。一体何があったんだい?」


「ギルドでとあるエルフの方が行方不明との話が耳に入ってきまして」


「リケートのならず者がエルフ族に危害を加えたと?」


「今の一言でよくそこまで、ご明察です」


「やれやれ、ほんっとうにあそこのクズ共は……」


 えぇ、なんかキャラ壊れてません? 確かにクズだけど。


「それで? そのエルフ達はどうなったんだい?」


「ましろが全員綺麗さっぱり治しました」


「な、なんと。ましろ君は治癒魔力の使い手だったのかい?」


「どうやらそうみたいですね。俺もなるようになれって感じだったので驚きましたが」


「それで、エルフ族はなんと?」


「エルフ達本人は復讐とかは特に考えてない様子でしたが、個人的に気に入らないのでリケートは潰すという事で話が付きました」


「リケートを潰す!? こ、これは驚いた」


「もしかして何か不都合でもあったりします?」


「不都合も何も……そんな事が本当に可能なのかい」


「実際に行ってみて、調べて、行動してみない事にはなんとも。でも少なくとも今はその気でいますよ」


「それが本当に成されるのであれば、私の今の苦悩は水の泡と化す。最も、願ってもない事だがね」


「あなたもリケートを?」


「あの荷車を襲ったのは、リケートに雇われたスザールの傭兵であったとの裏が取れてね」


 また知らん街っぽいものの名前が出てきたな?


「あの荷車には対リケート用の兵器が積まれていたのでは? そしてその情報が何らかの経路で流出した、と」


「その通りだ。実際に使うつもりは無いがね、要は脅しだよ」


 話し合いが通用しない相手に対する常套手段である。


「少人数で秘密裏に運搬しようと試みたのが完全に裏目に出てしまってね。人手不足という要因もあった」


 戦闘力が低い奴を連れてっても荷物が増えるだけだしな。


「君達が居なかったらあの兵器を丸ごとあちらに献上する破目になっていたかもしれない」


「それは考えるだけで恐ろしいですね、あの額に対する納得が付きました」


「それもある。が、君達をどうしてもこの街に留めて置きたくてね。少々露骨過ぎたかね?」


「俺達にとっては有り難い話でしたし。裏があるとは言っても悪意のあるモノでは無いだろうと推測は出来ましたしね」


「はは、そうかい。この街はお気に召したかね」


「貴方が作る街です。素晴らしいに決まってますよ」


「口上手だね、君は。町長を務めさせて貰っている身としてはこの上ない言葉だよ」


「ごちそうさまでした! おいしかったです」


 お前ちょっと空気読んでくれ。


「おっと、もうこんな時間か。すまないが今日はこの辺でお開きとしよう。リケートの事は君の好きなようにしてくれて構わない」


「万が一しくじってもこの街に関する事だけは絶対口にしないので安心してください」


「はは、周到だね、君は。幸運を祈るよ」


 昨夜までとは比べ、少しだけ豪華となった部屋で宿を取る。


「寝床がふかふかです〜」


「……なあ、俺とお前の関係ってなんなんだろうな?」


「むずかしいこと聞きますね、ご主人」


「悪い、つまらんこと聞いたな。忘れてくれ」


「ご主人はましろのこと、好きですか?」


「飽きるぐらいそう言ってるだろ、当たり前だ」


「うーん、そういうことではなくて」


「どういう事だ?」


「やっぱりましろにも分かりません」


「なんだそりゃ」


「お互い好きだから一緒にいる、それだけです」


 そうだな、今しばらくはそういう事にしておこう。

 そのまま俺の腕の中へと潜り込むましろ。


「お前は本当に甘えんぼだな」


「ご主人がましろに甘えてくれないのでその分甘えているんです」


「そうか。って、なんでそうなる」


「ご迷惑でしたか?」




 ――無言で腕を回す。



「……ご主人は時々素直じゃないです」

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