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守るべき場所、極上の手土産。

 エルフ達とメンタルケアとも言えない様なただの雑談を行いながら謝辞を受け取る。

 すると、その中で興味深い話が耳に入ってきた。


「あいつらはこの付近の街の住人なのか」


 ザガンさん達が話していた例の悪い噂しか聞かないとかいう街の事かな? 確かリケート?

 俺達が拠点にしている街の事では無さそう。


「はい、間違いありません。私たちもこの辺り一帯が危険と承知の上での移動だったんですよ」


「どうしても外せない用事があったとか?」


「ご名答です。ここは霊薬の材料が豊富に採取出来まして。結果、このような惨劇に見舞われてしまいましたが。不徳の致すところです」


「ただの不運か、それとも仕組まれた罠だったのか」


「にわかには信じがたいですが、もし後者だとすれば私たちに安栄の地はもう無いのかもしれません」


「そうか……その事、長には話した?」


「いいえ。しかし、あのお方は私が伝えるまでも無くこの事については把握済みでおられるでしょう。皆をこれ以上心配させまいと気配りをされているんです」


 そうか、そうだよな。


「俺に何とかしてくれとは頼まないんだな、あの人は」


「クロツグ様、ましろ様に対しては大変信用を置かれているご様子です。しかし、これは我々エルフの問題。あなた方をこれ以上巻き込む訳には、という事なんでしょう」


「そうは言っても危害を加えているのは人間側だしなあ。その危害の内容も度が行き過ぎている」


「我々エルフは長年人間に虐げられてきました。しかし全ての人間がそうとは限らないのも事実です。あなた方のように」


「人間を滅ぼしたいとか思わない?」


「黒い感情が湧かないといえば当然嘘になります。しかしそういう世界の理なんだと、我々は受け止めてしまっています」


 やはり弱肉強食というのはどの世界でも絶対不変のルールなのか。


 だが俺達にとって居心地の良い場所にはどうしても愛着が湧いてしまう。

 救いたいという感情が湧いてしまう。

 これは善の感情? いや、そんな大層なモノではない。


 あの荒廃した世界ではそうでもしないと自分を守れなかったから。

 自分が壊れてしまうから。


 逆に都合の悪いものは全て壊してきた。

 この世界でも、そんな自分勝手な正義が許されるのだろうか?


「エルフさん達の深い事情はよくわからないけど、俺達は"俺達の居場所"を守りたい」


「それはどういう?」


「あなた達に危害を加えようと裏で企む者を一人残らず潰す」


 俺の"ルール"に反する者からは――奪われる前に奪う。


「ま、まさか。そんな事が?」


「やりましょうご主人! 楽しそうです!」


 普段俺が誰かと会話してる時は大抵静かに待っているましろだが、こういう話になるとすぐ食いついてくるな。あと飯の話の時も。


「楽しいかどうかは別として、出来るか出来ないかで言ったら出来る。そうだな?」


「はい、当然です!」


「私には想像も付きませんが……あなた方なら可能なのでしょうね」


「って事でミールさんに報告してこよう」


「エルフの命運、あなた方に託します」


 そんな大義名分背負わせないで。

 ただの自分勝手だから気が引ける。


「ミールさ~ん、屑野郎どもは潰すことにしました」


「おおクロツグ、つまらん頼みを聞いてくれて感謝するぞ。って、お主今なんと?」


「リーダーっぽい奴が裏に人間が居るとか頼んでもないのに吐いてたのでそれ潰してきます」


「ほう? それは願ってもない話じゃの。ふむ、何か強い信念に突き動かされておるようにも見えるな」


「まあ、そうとも言えますね」


「差し詰め、我らはそのお零れに預かれるといった感じかの」


「流石、よくわかって御出でで」


「大体お主の性格が掴めてきたぞ。無事、事を終え再び相まみえる時、我らはより一層お主らを歓迎せねばならぬな」


「それなら成長するとかいう霊薬ください」


「カカ、そんなもの欲しいだけくれてやるわ」


「楽しみにしておきます。それでは」


「お主らにエルフ神の加護のあらんことを」


 背に目を向ければザガンさん、ミラルさん、アンナさんの三人が俺達を待っていた。


「話は終わったようだな、紹介が遅れちまったがコイツがアンナだ、よろしくしてやってくれ」


「此度の件はなんとお礼を申し上げたら良いか……私の力が及ばなかったばかりに」


「いえいえ、俺達は雇われただけですから。お礼なら二人に」


「心からの感謝を。今の私たちがあるのはあなた方のご活躍の賜物に他ならない」


 聞いてた通りのクソ真面目っぷりである。


「この通りちっとばかし硬いが根は良い奴なんだ」


「うるさい! 硬くて悪かったわね!」


「そうそう、その調子だ」


「もう!」


 そのやりとりを微笑ましそうな顔で眺めているミラルさん。

 三人揃うと尚更その仲の良さが伺える。


「紹介が遅れました、俺はクロツグです、んでこっちはましろです」


「貴女が私の同胞を治してくださったという……本当に、本当に感謝する」


「ど、どういたしまして?」


 未だに人に善意を向けられるのに慣れてないのか、どうもぎこちない様子のましろ。


「用事も無事済んだ事です。帰りましょうか、あの街に」


 俺達の居場所に。


 行きよりも狭くなった馬車に乗る。


「良いお土産もあるしな、多忙でぶっ倒れるんじゃねえかあの町長」


「それは流石に言いすぎよアンタ」


「我らエルフを侮辱した罪、万死に値する」


 万とまではいかなくても一回は死んでますが。


「あの町長なら相応の対処をしてくれるだろ。それこそ死ぬより辛い拷問があいつらには待ってるかもな」


「私は強くなりたい。今ここに我らを侮辱する者共に復讐の誓いを立てよう」


 誓ってるところ悪いんだけど多分俺達が先に潰しちゃうと思います。


「その事についてなんですが俺達、そいつらぶっ潰すことにしました」


「何!? それは本当か? 本当ならこれ以上心強い事はない」


「坊主、お前やっぱり無茶苦茶だな?」


「誉め言葉ですよ」


「一応褒めたつもりで言ったからな」


「って事でアンナさん、あんまり無茶はしないでくださいね」


「心遣い痛み入る。自力が及ばない事が理解出来ない程私も愚かではない。しばらくは研鑽に励む」


「自分の弱さを見出すのは、案外難しい事なんですよ」


「坊やが言うとより一層重く感じるわね」


「俺なんか弱いところだらけで逆に分かんねえぐれえだ」


「より多く己の弱さを見出した者こそ、真に強くなれるのかもしれません」


「おっ、それじゃ俺もまだまだ捨てたもんじゃねえって事かな」


「坊やに腰抜かされるようじゃ強くなんてなれないわよ」


「お前の方が重症だったじゃねえかよ」


「私は良いのよ、アンタに守ってもらうから」


「お、おお。そうか、そうだな」


「私も二人を守れるぐらい強くなりたい」


「期待してるぞ、アンナ」


 守るべきものを背負うと、人は自然と強くなる。

 ましろを背負う限り、俺は強くいられる。


「少し疲れたんでこのまま休みます。何かあったら起こしてください」


 ましろはと言えば既に膝の上で丸くなっている。

 ネコかお前は?


「今日は本当に世話になったな。おつかれ、ゆっくり休んでくれ」




「ク、クロツグくん。これは一体?」


 ここは街の門の中。


「私は今、心底あの時の自分を褒めてやりたい気分だ。キミをこの街に懐柔させておいて本当に正解だったよ」


 本音漏れてます。


「色々大袈裟過ぎますって。町長本人までこんなとこに赴いて、とんでもない騒ぎですよ」


「隣町の戯け共を集団で瀕死状態にして引っ張ってくるなんて前代未聞過ぎる。進めてた仕事全部放り出た上でも飛んでくるなって方が無理な話だよ」


「やはり隣町のリケート? とやらの仕業なんですね」


「リケートを知っていたのかい。そうだ、武具を見ればすぐわかる。これは間違いなくリケートのモノだよ」


「なるほど……残りの話は中でも?」


「すまない、私としたことが取り乱した。すぐに食事を作らせる。話は食べながらでも食べ終わってからでも構わない」


「それでは館内で落ち合いましょう。こいつらは適当に置いといても?」


「問題ない。キミ、こいつらを牢へ。それではお先に失礼する」


「報酬の受け取り手続きと荷物整理を終えたらすぐに追いつきます」


 外にザガンさん達を待たせているからな、早く行こう。


「今夜のメシ代が浮いたぞ、やったな。何が出てくるのか楽しみだな」


 ましろの反応が薄い。なんか元気ないな?


「ましろはもうおなかが減って動けないです、抱っこしてください」


 そういう事か。


「もうちょっとだけ頑張ってくれ……いや、うーん。しょうがない奴だな、ほら」


 やったー、と一回転するましろ。そのまま俺の腕にダイブ。

 思ったよりも元気で心配して損した、もしかして図られた?


「ふう、ここはましろだけの場所です」


 今日の散歩はもう少しだけ続く。

GWいっぱい書きたい。

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