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異種交友、信頼関係。

「坊主! 怪我はないか!?」


 未だ脚の覚束無いミラルさんに肩を貸しながらそう話し掛けるザガンさん。


「はい、この通りです」


 ピンピンしてます。


「元気そうでなによりだわ。止める間もなく飛び出していっちゃったんだもの」


「それにしても派手にやったな坊主、ギリギリの所で逃れはしたが腰が抜けちまってよ」


 うっ。


「巻き込むつもりは無かったんですが……すみません」


「今となっちゃ出る前より元気だがな!」


「ザガン、私はもう大丈夫よ。ありがとう」


「おう、良いってことよ」


「アンナさんはご無事でしょうか?」


 こうなってしまっては耳が尖っているという特徴だけでは識別できん。


「腰に喝入れながら一目散に会いに行ったぜ。坊主と嬢ちゃんのお陰で傷一つ残ってなかったよ」


そりゃ良かった。ここまで来て人違いでしたなんて言われたら目も当てられん。


「ただ身体の傷は癒えても心まで癒えるとは限らない。一部の連中は重い傷を背負っちまってる」


「あの子は気丈そうに振る舞ってたけど、その真相までは私達にも分からないわね」


 神妙な面持ちになるザガンさん。


「人間ってのはヒデぇ生きもんだな」


「全くね。あなたの言う通りだわ」


「あなた達の様な方ばかりだったらこの悲劇も起こり得なかったんでしょうね」


「俺は自分が立派な人間だなんてこれっぽっちも思ってねえけどな」


「みんな自分のエゴで生きているのよ」


「俺だってそうだ、ミラルと出会わなかったら賊に手を染めてたかもしれねえ」


「何よいきなり? 気持ち悪いわね」


「お前のその憎まれ口も愛嬌ってこったな」


「そう捉えてくれると嬉しいわ」


 愛の形って色々あるなあ。


「ところで坊主、あの時放ったのは闇魔力か」


「多分そうだと思います。ギルドで測定した時は適正大、と」


「闇魔力の使い手ってだけでも珍しいのにそれが大と来たか」

 ――マジで何モンなんだ、坊主……


「そしてましろちゃんは光魔力の使い手って訳ね」


「ただでさえ数が少ない光魔力の使い手で、治療魔力まで扱える奴と言ったら本当にごく僅かなんだぜ」


「火力が他の魔力に劣るから、世間では"ハズレ"と言われてるわ」


「治癒を使いこなしてこその真価、って事ですか」


「その通り、"ハズレ"から"オオアタリ"に大躍進ってワケだ」


「それと坊主。薄々気付いてるとは思うが、闇魔力の真価ってのは――「ザガン、アンナが呼んでるわよ」


「おっと、説教は次の機会に持ち越しだな。次は坊主と嬢ちゃんが呼ばれるだろう、なんせ今回の救世主と来たもんだからな」


「そんな大層な肩書は少々荷が重たいですね」


「適度に重くねえと人間ってのは直ぐにダメになちまうぜ。それじゃ行ってくる」


 俺の背中に背負うモノなんて、ましろだけで精一杯だし十分なんだけどな。


「ましろ、お前大当たりらしいぞ」


「何か貰えるんですか?」


「称賛が貰える」


「別に要らないです」


「称賛が貰えれば当然飯も貰える」


「やったー! ましろ大当たりです!」


「飼い犬大当たりフィーバーで飼い主にボーナス!」


「ご主人にぼーなす!」


「おーい救世主さんよ、エルフ達がお呼びだぜ」


 アッハイ。

 そんな変なモノを見るような目で見ないでください。

 

 さっきのエルフの子が位が高そうなエルフの人の側に付いている。


「先程はお世話になりました。改めてお礼を言わせてください」


「すっかり元気そうでなによりだよ」


「はい、お陰様で。この方が我々の統率者であり年長者でもあるミール様です。どうぞ、ミール様」


「おい、年長者は余計じゃ。ご、ごほん」


 年齢に付いては詮索しないようにしよう。


「話はサラから全て聞かせてもらった。お主らが我々の救済者で相違ないか」


「そうなりますかね」


「此度の一件、頭を下げても下げきれない程の偉業。何か望みはあるか」


「それなら、あいつらをこっちで処理させて貰っても?」


 命の保証はしますよ、逆の意味で。


「承った、寧ろ願ってもない事じゃ。だがそれではこちらの面目が立たない。他に気の利いた望みの一つや二つ、お主らにもあるじゃろう」


「今は無いんでまたの機会にでも。困った時にまたお伺いしますよ」


「そうか。ならば此度の件は一つ、借りとしておこう」


「欲が無いんだな、救世主さんは。エルフの霊薬と言えば、寿命増加、成長促進、旨味増幅。欲しがる奴は後を立たないってのに」


 せ、成長促進? 欲しいかも。

 でもここでやっぱ欲しいです! なんて流石に言えない。


「あんな事が有った後で、エルフの方々に無理な要求なんて出来ませんよ。その代わりザガンさんからは沢山報酬を頂く予定なので大丈夫です」


「ちっ、そういう事かよ! まあいいけどよ」


「その考え、気に入った。名をクロツグ、ましろと言ったな? 然とこの胸に刻んだぞ」


「俺もミールさんの事は胸に留めておきます」


「そうじゃ、他の者達にも挨拶してやってはくれぬか。皆、お主らに礼を言いたがっておる。残念じゃがその余裕すら無い者もおるがの」


「力になれると良いんですが」


「此度は人間の手に掛けられたが、同時に救ったのも人間。その事実だけは残してやって欲しいんじゃよ」


「凄く勝手な生き物ですね、人間ってのは」


「言い得て妙じゃの。お主は本当に面白い人間じゃな」


「俺も勝手な人間の一人ですから」


「ははっ、益々気に入ったぞ。何時でも訪ねに来い、これを渡しておく」


「凄く綺麗ですね、これは?」

 

「我々は時折放流し、住処を移すのじゃ。故にそれを特定するのは至難を極める」


「と、言うと?」


「住処の特定。我々エルフ族は天性的にその能が身についておる。それはその能を他種族の者に与える宝具じゃ」


「そんな大切な物かつ重要な情報、良いんですか? 俺なんかに」


「ワシが是と言うんじゃから反対する者なぞ居るまいて」


 そんな無茶苦茶な。


「ミール様は"読める"んですよ。これだけお話をされた結果がこれなら、文句を言う者など出る筈も無いです」


 俺に伝わるよう話してください。面倒だからツッコまないけど。


「そこまで仰るなら賜ります。ありがとうございます」


「よいよい。良き関係で有り続けよう、クロツグよ」


「こちらこそよろしくお願いします」


 しっかし図らずして面白い知り合いが増えたな。

 信頼関係の構築とは、存外楽しい事なのかもしれない。


 一番は変わらないけど。


「ご主人〜お話長いですよ〜」


「悪い悪い、いつも良い子で待っててくれてありがとな」


「いつもよりご褒美多めでお願いしますね」


「はいはい、分かってるよ」

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