深く染み入る闇。暖かく切り裂く光。
暗い。
何も聞こえない。
寒い。
「――――じ――」
光が――
「――しゅ――ん」
声が――
「ご主人! どこですか!?」
心が――
「ご主人! やっと見つけました――って、ご主人、なんか怖いですよ」
「ほら、早くいつものご主人に戻ってください」
「ましろはここに居ますから、ですから……」
あぁ――なんて暖かいのだろう。
「悪い、ちょっと昔を思い出していただけだ」
「――! よかった、やっぱりいつものご主人でした」
震える声。
強張る身体。
頬を伝う涙。
辺りは暗く静寂に包まれる。
これは、俺の仕業か。
「この有様じゃお前の顔すら満足に見ることも叶わないな」
「今は、見ないでください」
「はいはい、見ませんよ。だからほら、力を貸してくれ」
孤独なる闇の世界は光を取り戻す。
しかして、光の中は必ずしも救われているとは限らない。
目の前に広がるのは寸秒前まで繰り広げられていた惨劇。
「俺はもう大丈夫だから。それよりほら、このエルフ達を助けてあげてくれ」
ましろが顔を上げる。
赤く腫れた眼は見て見ぬ振り。
「お前なら出来るはずだ。俺が、こいつらを殺したように」
お前は、このエルフ達を――
「ましろに、出来ますか?」
「ああ、必ず出来る。信じろ。俺を、自分を」
その"光"は神の御業の如く。
元の宿主へと回帰する生命。
夢が現となり惨劇は夢と消える。
「ほら、俺の言うとおりだ。見てみろ、これはお前がやったんだよ」
「出来ました……! 出来ましたよ、ご主人! ましろ、頑張りました」
「ああ――本当にいい子だ」
その身体を抱き寄せ――
「俺の誇りだよ、お前は」
「あなたも私の誇りです、ご主人」
「っと、いつまでもこうしちゃいられないか」
「ましろが治した人達、起きませんね」
息はしてるんだけども。
「まだ寝ているだけだろう。やっぱりもう少しこのまま」
よく見ると出力が高すぎてクズ共まで綺麗さっぱり生き返ってるが。
"闇"で生命力を奪い取る。
こいつらは一人残らず町長に引き渡して報酬増量の為にもう一度死んでもらおう。クズに相応しい末路だな。
「こ、ここは? ……――!?」
おっ?
「あの子、目を覚ましたっぽいな」
「私の、て? な、なんで、あ、あしも」
「体調は大丈夫かい?」
「ヒッ! ……あ、ご、ごめんなさい」
そんな頭抱えて怯えんでも取って食ったりせんよ。
「そんだけ動けるなら大丈夫そうだね。ほら、ましろ」
手をチョイチョイ。
「ま、ましろですか?」
「キミを治したのはこの子だよ、可愛いでしょ?」
「あ、あなたが私を?」
「ええ、まあ、そうなりますかね?」
エルフの子がましろに抱き付く。
「ありがとうございます……本当に、ありがとう」
「ましろがしたくてやった事ですよ」
「そんな、あなたは立派なお方です――皆は!?」
「あぁ……モナも、ティナも、リサも、みんな、みんな、生きてます……」
そしてついには泣き出してしまう。
気持ちは痛いほど分かる。
「あ、あれは」
いきなり露骨に怯え始めたな。
あれってのはクズ共の事か。
「あれはもう動けないよ、安心して」
「あれも、あなたが?」
「あれをやったのはご主人です」
「ご主人?」
まずい、要らぬ誤解が生まれそう。
「ご主人は凄いんです! あんなのは一瞬でボコボコなんですから!」
「ご主人? さん。私を、仲間を、野蛮な者達から救って下さり本当に感謝します」
俺の名前はご主人ではありません。
「ましろのご主人です!」
やめて、これ以上話をややこしくしないで。
「気にしないで、俺がしたくてやった事だから」
「ふふ、あなた方は似たもの同士なんですね」
少なくとも俺は真逆の存在だと思っている。
でも他人から見ると似ているのかもな。
周りを見れば、意識を取り戻したと思われる人影が次々と息を吹き返していた。
皆、面白いほど似た様な反応してるな。
「本当にみんな、無事で良かった……」
「キミも仲間の所に行っておいで」
「は、はいっ」
シアトリカルに繰り広げられる感動の幕。
「いい景色だとは思わないか」
「これが、ましろとご主人が見出した景色」
「やっぱり散歩道は穏やかな景色に限るな」
「今日はとびきりのお散歩が出来て大満足です」
「それはなによりで。散歩帰りは美味い飯でも食おうな」
「――ご主人。ましろは、今、とても幸せです」
「ああ、俺もだよ。お前が側に居てくれる限り、俺は俺でいられる。幸せでいられるんだ」
片方が道を逸れようがどちらかが道を正せばいい。そう、今回のように。
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もっとブクマ増えないかなぁ、なんて。




