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刹那の見切り、静穏の寂しさ。

「さあ、ここだよ」


 指し示めされたのは長い歴史を感じさせるような佇まいの、とある一軒家。


「わぁ、美味しそうな匂いです!」


「ほんとに俺達なんかと一緒で良かったんですか?」


「年上のお節介焼きだと思って遠慮なく食べてほしい、どうしても君が息子と重なってしまってね」


 知り合いにお節介焼きがいるのでその気持ちはよくわかっているつもりだけども。流石に恐縮する。


「いい時間に着いたようだ、丁度アレが始まる」


 なにか優しい企みを抱いてるような表情。


「アレ、とは?」


「見てからのお楽しみだよ」


 そのまま受付に並ぶセタスさん。


「久しぶり、今日は三人で頼むよ」


 どうやらこの受付とも知り合いらしい。

 町長の息子という肩書を背負うだけあってやはり顔が広いな。


「さ、食べよう。あっちだ」


 店員と思わしき人々と他の客が多数。


 所狭しと規則正しく並べられた皿、器。

 その上に盛られる様々な種類の料理という料理。


 わぁ~! とましろが感嘆している。


「これ、全部食べてもいいんですか!?」


「いや、それは流石に無理だろ」


 ははっ、とセタスさんが笑う。


「形式上は間違ってはいないね。ほら、あそこにある受け皿を持って食べる分だけ持っていくんだよ」


 なるほど面白いな。


 そしてましろのテンションが再び上がる。


「凄いです! こんなの初めてです!」


「そんなに喜んでくれたらこちらとしても奢り甲斐があるというものだ」


「面白い形式ですね。他の場所でもこのような催しが?」


「いや、俺が知る限りではこんな事をやってるのはここぐらいだな。っと、そろそろ席に着こうか」


 そのまま適当な場所を見つけ食事の準備を整える。

 ましろは、いの一番に駆けていった。


「ましろ、走るなよ~」


 ダメだ聞いてねえ。


「ははっ、元気が良くて何よりだ」


 すみません、すぐ捕まえて来るんで。


 周りを見れば、落ち着いた感じの老夫婦がお客の半数以上を占めていた。


 それが影響しているのだろうか。

 あらあら、可愛いお嬢ちゃんね〜なんて、生暖かい目でましろを見る者、その雰囲気を黙って楽しむ者。その二極に分かれ、それを咎めようとする者は存在しなかった。


 それは店員も例外では無いのか、それすらましろを咎めようとする者はいない。


「皆さん随分懐が大きいようで」


「寂しく静かなのが嫌いなだけさ、ここの人達は」


 あれは少々騒がしすぎる気もしますが。とか思っているうちにその本人が帰って来た。


「ご主人見てください! こんなに持ってきちゃいました!」

 

 よくまあそんなに積み上げたもんだな。

 ちゃんと全部食べるんだぞ〜なんて、こいつには言う必要もないか。


「溢さないように気を付けて食えよ」


 既に食うのに夢中で聞いちゃいない。


「クロツグくんも行ってきなさい、まだまだ時間に余裕はあるがね」


「はい、それでは遠慮無く」


 ――ましろ、ここに来てから随分と丸くなった気がする。

 つい昨日まで人間皆殺しとか言ってたアイツとは思えない。


 俺も言えたことじゃないか。

 この世界に来てからというもの、あの日々が遠い昔の事のように思える。

 だが、無かった事にしてはいけない。忘れてはいけない。

 

 口に合いそうな料理を選びながらそう、思う。


「セタスさんに聞きたい事があるんですが大丈夫ですか?」


「なんだい? 俺の知ってる範囲なら出来る限り答えよう」


「魔力とは、ズバリ何です? そして、どう実践で使えばいいんでしょうか」


「哲学的な話になるが――魔力とは、その者の本質を写し出す鏡だと言われている」


「そして、それを使う時は自分の本質に目を向け、自分自身に語りかけるんだ」


 自分自身、か。


「なんだか難しいですね」


「人は誰しも、自分自身を省みるという行為を難しく考えすぎる。故に扱える者も少ない」


 俺は昔から自分が何なのか、よく分かっているつもりだ。


「あまり大した答えを出せなくてすまないね」


「いえ、とても参考になりました。ありがとうございます」


「そうかい? なら良かったよ」


「それともう一つ、貴方が見るこの街の長、貴方の父君とはどのような方ですか?」


「親父は――昔からロクなもんじゃないが、いつだって信頼、尊敬はしている」


「なにしろこの街の町長を務めているぐらいですからね」


「ああ。俺の自慢の親父、自慢の街だよ――直接は言ってやらんがね」

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