賑やかな働き口、光と闇。
「こんにちは、初めてのご利用ですね? 依頼をご希望ですか? それとも――」
そこまで言いかけたところで横槍を入れられた女性。
何故かハッとした表情となり慌てて何かを取り繕おうと焦っている。
「あっ!し、失礼しました。冒険者登録の方ですね、少々お待ちください」
この様子だと、ここにもあの町長の手が届いているのだろう。
一言も発せないまま、あれよあれよと事が進んでいく。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
案内されたのは謎の透明な球体が真ん中に鎮座する部屋。
「ではまずお名前を。身元保証人は――町長ご本人が立候補されたようなので問題ないですね」
やはりあの町長の手が伸びていた。
沼にどんどん嵌っていくような感じがして気持ちが悪いな。
「俺はクロツグです、こっちはましろです」
「はい、クロツグ様とましろ様ですね。承知致しました」
「住所は決定次第、ご報告にお伺いになるようお願いします」
スラスラと紙に字が連なっていく。
「個人情報については以上です。ご協力ありがとうございました。次は技能情報に付いて調査を進めさせていただきます」
何が始まるのかちょっとワクワクしてきたな。
「ではこの水晶に手をかざし、魔力を流してください」
ま、魔力?
「ま、魔力? って何ですか?」
思ったことがそのまま口に出てしまった。
「あ……あ! すみません! 魔力というのはですね――」
つまり簡単に言うと五種類の不思議パワーが存在してそれを操る的な、そんな感じらしい。
聞きそびれていたがあの戦闘の時使われた謎の遠距離攻撃、あれは魔力に依るものだったのだろう。
驚くべき力だがやはりこの世界の理自体が、本来俺達の知り得るモノとは別モノなんだろうと頭の中で折り合いをつける。
――で、どうやって操るの?
「魔力を流すとはどのような感覚でやればいいのでしょう?」
「すみません。生憎、私は魔力を扱えない者でして……」
おーい! 誰か魔力を扱える人を呼んで来てくれ! と、頭の中で願ってもそれが叶うはずもなく。
これ以上悩んでも時間の無駄だな。
適当にベタベタ触ってダメならダメと諦めよう。
「ご主人、見てください! なんか綺麗に光り始めましたよ!」
なんか使えてそうな奴、いたわここに。
「まーたお前は勝手に……おーよく光ってんな――って、眩しすぎるぞ! ストーップ!」
「ご主人大変です止まらないです助けてください」
受付の女性は既に使い物にならない状態に。
「わ、分かったから落ち着け! で、どうすればいいんだよこれ!」
ええい、なるようになれが俺のモットーだ。
水晶へと手を伸ばす。――刹那、辺りが静寂と闇に包まれる。
「今度は暗すぎるんだが! ましろ、どこだ!?」
闇の中からひょっこり顔を出すましろ。
「ここですご主人」
マジで寿命が縮むからやめて。
「うおっ! びっくりした。と、とりあえずもう一回これに触ってくれ」
「大丈夫ですかね?」
「ああ、今回は俺が歯止めをかけてやる」
今度は同時に手をかざす俺達。
ましろが注ぐ光を、闇で制御する。
辺りがゆっくりと光を取り戻し、元の景色へと戻った。
上手くいったようだな。
「流石ですご主人」
「ったく、元はと言えばお前がだな……」
「ごめんなさい」
「で、受付の人は――大丈夫そうですね」
事の顛末を把握しきれておらず、目を白黒させる女性。
「あ、す、すみません!私としたことが……」
すみませんウチのましろが。
「ああいや……こちらにも過失はあるんで気にしないでください。で、測定結果の方は?」
「あ、はい! えっと、お二方それぞれ光と闇の適正大、との事です」
よく見れば水晶になにか文字が浮かび上がっている。
「私はこの職務に就いてまだ日は浅いですが……光と闇の適正者は結構珍しいみたいですよ」
凄い確率だな。
「へぇ、そうなんですか」
「はい、先輩方すら実際に目撃する事は滅多に無いそうで」
「測定はこれで終わりですか?」
「いえ、まだ実技測定が控えてます。試験官の方は――そろそろご到着なされる頃かと思います」
実技か、どうしようかな。
と、悩んでいる内にドアが鳴らされる。
「どうも、ご無沙汰だね。受付のお嬢ちゃん」
「はい、本日はよろしくお願いします」
「そしてそちらのお二方が今回の冒険者志望者だね? 初めまして。私は今日、試験官を務めさせて頂くセタスという者だ。よろしくお願いしてくれると嬉しい」
「これはご丁寧にありがとうございます、初めましてセタスさん。俺はクロツグと言います、こっちはましろです」
「クロツグくんとましろのお嬢ちゃんだね? この胸にしかと刻んでおくよ」
試験官と銘打たれるだけあって、ただならぬ風格の持ち主だな。
「後、いつも伝えるかどうか悩んでいる事なんだがね……」
そのまま一呼吸。
「一応、あの町長の息子という肩書を背負っている」
なるほど、道理で面影があると思った。
「さ、自己紹介はこれぐらいにして、実技試験を始めようか」
適当に手早く済ませてしまおう。
「はい、お手柔らかにお願いします」
ううむ……と、俺とましろを唸りながら観察するセタスさん。
その目に侮りの色は全く伺えない。
「それはこっちの台詞かもしれんな……」
なんか嫌な予感がするな……そう、ぼそりと呟く声が耳に入った。




