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自分色、優しき触れ合い。

ブクマありがとうございます、めちゃくちゃ励みになります。

「おっきい建物ですね。音も大きいです」


 作業場へと向かう途中に飾られている様々な工芸品。

 それらを横目で流しつつ作業場へとたどり着く。


 どうしていいか分からず手持ち無沙汰に右往左往。するとあたりの良さそうなガタイの良い男が一人、こちらへと近寄る。

 気を使わせてしまっただろうか、だが助かった。


「よう坊主達、どこのお貴族様だい? 見学しにでも来たのか?」


 ましろに助け舟を求めようとしたが、そういえば今は人の姿だったな。


「自分は言葉が不自由です、申し訳ないです」


「……? よくわからんが分かった」


「家が欲しいです、いくらですか?」


「家が欲しいって? 冗談だろ? 金は持ってるのか?」


 伝家の宝刀、例の硬貨五枚。


「――どうやら冷やかしではないようだな、ちょっと待ってろ」


 なんとか話を通すことができた。

 そのまま三分程待ちぼうける。と、再び先の男が現れた。


「待たせて悪かったな。こっちだ」


 無骨なテーブルと椅子に座る一人の男。その隣に座る先の男。


「よう、あんたがお客さんか」


「親方、信じてくれました?」


「まだ半信半疑だがな。先立つモンはお持ちのようだが」


 親方――恐らくここでは一番権力のある方なのだろう。俺達を一瞥すると再び口を開く。


「なにもんだ? あんたたちは」


「遠い場所から来た旅人です」


「町長が言ってた奴らの一部と考えるのが自然か。そんで、そんな莫大な金を持っている――ってなると」


 この男はどうやら町長と繋がりがあるらしい、なら話は早いか。


「あんたが町長の言ってた奴らか。話は聞いてるぜ、お手柄だったようだな。俺からも礼を言わせてもらう」


「恐縮です」


「そんな畏まらないでくれ、贔屓にさせてもらうからよ」


「ありがとうございます」


「なんとなくあの町長がお前らを気に入ってる理由が分かってきた気がするな」


 どういう意味かはあまりわからないが、悪い意味では無いだろう。


「で、だ。本題に入りたいんだが……生憎今、良い土地があまり残ってなくてな。街はずれに近い場所しか空いてないんだ」


「そちらの方が嬉しいです」


「そうか、そう言ってもらえるとこちらとしては助かる。その代わりといっちゃあ何だが、なるべく広い土地を用意させてもらう」


 男はましろの方を見る。


「俺が予想するに、多分そちらのお嬢さんは犬形の従魔さんが化けた姿なんだろ? なら、自由に走り回れるような広さの場所があったほうがいいと思ってな」


 勘が鋭いな、この人。

 そしてそこまで気を使ってくれると本当に恐縮極まりないんだが――遠慮するのはあちらの心意気に泥を塗ることになるか。


「他になんか注文はあるか?」


「もう十二分です」


「そうかい、ならこれで進めさせてもらう。家の構造やらは聞かれても困るだけだろう、こっちで勝手に決めさせてもらうぜ」


 あっさりここまで漕ぎ着く事が出来た。

 俺達をここに留め味方に付けるのが町長の狙いなら、大人しくそれに嵌っておくのが身のためだろう。

 変な意地張って逆らうと碌なことにならない気がする。

 そして俺自身、今のところそれに不満はない。

 あの町長が治める街だ、良くも悪くも信用できる。


「当然だが時間はそこそこ貰う。とは言ってもあの町長の命令で既に空いてる土地には片っ端から手を付け始めているんだ、そこまで時間は取らせないぜ」


 俺達がいた世界からの移民を迎え入れ、この機会に街の力を上げてしまおうという魂胆だろう。

 あっちの住人の大半はこちらの世界の住人より戦力になる。

 それを理解してのこの待遇だろう。


「それまでは宿屋にでも泊っててくれ。金はまだまだあるようだしな。んじゃ、俺はこれで失礼する」


「分かりました、ありがとうございます」


「またな、坊主」


 案内役を買って出てくれた男にも一礼した後、工房を後にする俺達。


「用事も済んだことだ、商店街に夕飯の買出しに行くぞ」


「どんな美味しい物があるのか楽しみです」


「好きなもんが見つかるといいな」


 空には夕日が立ち込める――。


「ご主人! あの実、あまい香りがします! こっちからは香ばしい匂いが!」


「はしゃぐ気持ちはわかるがちょっと落ち着け。食いたいもんは見つかったか?」


「どれも魅力的で迷っちゃいますね、全部試してみたいぐらいです」


「当分はここを拠点にするんだ、そんなに焦ることは無いと思うぞ」


「じゃあじゃあ、あれとこれとそれで!」


「はいはい、一つずつな」


「あっ! やっぱりあっちのお肉のほうが美味しそうです!」


「あんまり右往左往するなよ~」


「随分とかわいいお嬢ちゃんだな! これをおまけしてやるよ!」


「あっ、ありがとうございます!」


「ご主人、見てください! おまけしてもらっちゃいました」




 そんなやりとりをしながら買い物や散策を楽しむ。そうこうしてる内にあっという間に日が暮れた。


「大満足です!」


「あ、ああ。そりゃ良かったな」


 散々振り回され満身創痍。

 右手にはましろ、左手には大量の未知の食べ物。


「それにしても随分な量あるな。お前なら全部食いきれるだろうけど」


「あっちこっちしてる内にいっぱい貰っちゃいました」


「本当は見知らぬ誰かからなんの対価も無しに物を貰うのは良くないんだがな」


「いけない事でしたか?」


「いいや、この場ではそんな難しいことは考えなくてもいいのかもしれん」


「……ましろに物をくれる人、みんな嬉しそうでした」


 何かを訴えかけるような、そんな目。


「昔に縛られているのは俺の方か――」


「ご主人」


 俺の手を強く握りなおすましろ。


「……今夜は紹介された宿に泊ろう」


 宿に着くまでの間、互いにそれ以上の言葉を交わす事は無かった。

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