新たなる門出、慶賀の至り。
「本当にもう行っちまうのか、随分気の早い事で」
その顔はどこか寂しげ。
「平和に暮らすなんてガラじゃないんですよ、やっぱり。アカネさんは暫くここに残るつもりで?」
「そうだな。当分はここを拠点に周辺を探索しながら力を蓄えていこうと思う」
「アカネさんらしいですね。俺も収穫があったらここに戻ってくるかもしれません」
「ああ。念願の来世なんだ、死ぬんじゃねえぞ。ま、そう簡単に死ぬようなタマじゃねえか、お前は」
あなたのお陰です。
「そこはアカネさんに似たんでしょうね、それでは行ってきます」
「ああ、行ってこい」
背を向けようとしたその時。
「おーいクロ坊〜! もう行っちまうのか、ならこれを持っていけ! 俺からの餞別だ」
急ぎ足で駆け寄り手早く懐から袋を差し出すカイトさん。
「ありがとうございます、開けてみても?」
「もちろんだ」
中には指先で摘める程の小さな石が二つ。
黒が差している白い石。
白が差している黒い石。
「どうだ?気に入ったか」
「綺麗な石ですね、どうしたんですか? これ」
「散歩してる時に拾ったんだ、お守り代わりにでもしてやってくれ」
お守りか。
「俺、そういう類のモノは信じない質なんですがね」
冗談っぽく微笑む。
「気に入らなかったか?」
「いえ、とても気に入りました。大事にします」
この石にはシンパシーを感じる。
「そりゃ良かった。旅立ちの邪魔して悪かったな、気を付けて行ってこい」
「はい、また会いましょう」
アカネさん達に背を向け、新たな旅立ちへの一歩を踏み出す。
「ましろ、こっちはお前が持ってろ」
黒い方の石を渡す。
「……ご主人。これ、食べられるんですか?」
「いや食べられねえよ!? お前は食い物の事ばっかりか!?」
軽く吹き出すましろ。
「冗談ですよ」
そしてクスクス笑う。
「お前が言うと冗談に聞こえないんだが?」
「心外です」
「なら日頃の行いを改めるんだな」
「ところでほんとにましろが頂いちゃっていいんですか? これ」
「ああ、なんとなくその方がいい気がするんだ。俺の勘は当たるからな」
「そっちの白い方をましろだと思って大切にするとか、そういう感じです?」
いつものからかうような視線。
「そうだな。つってもすぐそこに本物が居るんだからそっちの方を大切にするよ」
「……ましろもそうします」
朝の日差しが俺達の門出を祝福するかの様に降り注ぐ。
ご評価、励みになります。
拙作をここまで見て頂いてる方がいる事を願って、この場を借りて感謝を。




