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黒。
手には一本のナイフ。
倒れ伏すは人を模した汚物。
その目には驚愕と憤怒の形相が映る。
これで、緋く、染まれただろうか?
――否。ナイフは蹉跌と化した。
その心は今も尚、昏く輝き続ける。
外面のみを鮮やかに染めし忌まわしき右手がこの目に映る。
黒はそう簡単に染まりやしない。
そんな当たり前の事さえ受け入れられない程愚かなのか、俺は。
なら、次は己自身をこの手で緋一色に染めてみようか。
……愚鈍も極まれば緋色の道化。
俺は黒、何色にも染まらぬ黒だ。
死しても尚、俺の心は黒く染まり続けるのだろう。
だが、せめて、この穢れた緋色だけは清めなければ。
白く染まりたい。




