葛藤、正義。
「なあ、ましろ」
「……」
俺にしてやられたのが悔しいようで未だ拗ね続けているましろ。
でも機嫌は悪くないっぽい、尻尾は正直。
「いつまで拗ねてるつもりだよ」
「拗ねてません」
「いや拗ね「拗ねてません」
「分かった分かった、でだ。アカネさんの頼み事が済んだ今、ここに留まる理由も無くなった訳だ。これから、お前はどうしたい?」
「……ましろはご主人の後ろならどこにでも付いていきます――というのは、ご主人が今求めている回答ではありませんよね」
「まあ、そうだな」
「なら、この世界を行く宛も無く旅してみたいです。ご主人と共に」
「あの狭い世界じゃ旅するだなんて大層な夢、叶いっこなかったもんな」
その先にあるものが戦いなのか、平穏なのかはまだ分からない。
「今度こそ、自由に生きましょう。自由に笑って、自由に暮らして、自由に生かし、殺すんです」
「自由、か」
「そして、自由に死ぬんです」
「今度こそ、緋色に染まる運命から逃れられるだろうか」
「ちがいますよ、ご主人。ましろとご主人はあの日だって、ましろとご主人のままでした」
「悪い、お前の言う通りだ。世界をこの手で、緋色に染まる運命から救えるだろうか」
「ましろとご主人なら出来ますよ、絶対。今度こそ、次こそ」
「……いつ、ここを出ようか」
「ましろは明日にでも飛び出していきたい気持ちでいます」
「よし、十分な準備が備わったらここを出よう。それが明日になるかもう少し後になるかは分からないけど」
「それなら、今のうちに沢山食べておきましょう!」
「程々にしような」
このまま此処でましろとのんびり暮らしたとしても文句を付ける者など誰一人としていないだろう。
俺自身それでもいいのではないか、という気持ちは少なからず抱いている。
だが、しかし。
今この世界で、この瞬間も俺達と同じ運命を辿ろうとしている者、場所があるのだろう。
そう考えるだけでやり場も無い憤りが湧いてくる。
この感情の正体とは復讐心か、はたまた下らない正義感か、もしくはその両方か。
正義感とは身勝手な感情であり時には人をも殺す。
奴らにとっては破滅こそが正義、そして俺は正義の為にそいつらを殺し尽す。
そう、いつだって俺は自分勝手で正義感に溢れている。
力に伴わない正義感は破滅を齎すだろう。
それを理解して尚、俺の正義と復讐心が奴らの存在を許すことは無い。
例え再び破滅の運命に身を委ねる事になろうとも。




