悪夢の襲来、猛る決意。
「ご主人」
ましろの殺気に触れ、半ば飛び上がるように起きる。
――外が騒がしいな。
戸棚にあった服を二着拝借し、片方をましろに投げ渡す。
これなら外に出しても問題は無いだろう。
「行くぞ」
昨日までのお祭り騒ぎは見る影も無い。
戦える男は慌ただしく招集され、女子供はそれに護られるかのように陣取る。
その中にはアカネさんと共に来たであろう人間の姿も見受けられる。
「来てくれたか、クロツグ。その隣の娘は?」
「ああ、ましろです。言ってませんでしたっけ? それはともかく一体何の騒ぎですか、これ」
「はぁっ!? ……冗談だろ? いや、冗談言える状況でも無かったか……生き返しを受けたぐらいだ、その程度驚くにも足らんか」
素っ頓狂な声を上げたアカネさんだったが、すぐさま落ち着きを取り戻した。
「本題に戻るが、俺も聞いただけで詳しくは把握出来ていない。俺がここに長く留まるに至った理由の一つが奴等の存在ではあるんだが」
「奴ら、とは?」
「出没頻度が狭まってると聞いてはいたが。クソッタレが、幾らなんでも早すぎるだろ。練っていた計画がパーだ」
刹那、身の毛もよだつ不快な嘶きが大気を震わせる。
頭痛え、マジでうるせえ。
金切り音を響かせる意識の鎖。
ましろは大丈夫か? ……涼しい顔してやがる。
辺りを見渡せば女子供は二人を除いた全員が泡を吹いて倒れ、それ以外の半数も地面を舐めている。
流石に命までは手放してないようだが……暫くの間、無防備を晒す事になるのは明白であった。
まともに動けるのは俺アカネさん他、人間組数名。原住民の男二十程、そして余裕綽々のましろ。
今立っている俺達まで続けて倒れ伏せば、既に倒れている者達に待ち受ける運命は残酷な程に明白。
「あぁ、気持ちわりい……こいつは、聞いていた以上の、バケモンだな」
「アカネさん肩貸しましょうか?」
「ご主人もちょっとよろめいてしたよね?」
「気のせいだろ」
「お前達は、結構余裕そうだな……!?」
なんかすみません。
「ご主人、早く行きましょう! あの一番大きいやつ!」
「おーアレか。マジでデカいな、殺れると思うか? 俺達に」
「ましろとご主人が力を合わせたら敵なんて居ません」
「村を代表して俺からも頼む、お前達が頼りなんだ。」
「やれるだけやってみます。あの日のような惨めな思いはもう御免なんで」
覚悟を決めよう。
たった一日しか過ごしていないこの場所。逆に言えばたった一日でこの場所を、人を、気に入ってしまった。
未だ立ち続ける者の目には強い闘志が宿る。
昨日の宴も合わさり、その者達のコンディションは最高潮に達した。




