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一時の安息、不穏なる影。

「クロツグ、楽しんでるか?」


「はい、おかげさまで」


 慎ましやかとは言えない程の規模の宴が催される。

 名目上、それを開くための口実であった俺達。やたら目立つ席に拘束されかけ命からがら逃げ戻った。


 そんな一頓着も俺にとっては楽しい一時だったけど。


「ここは本当にいい場所ですね。笑顔が溢れ人々は活気に満ち溢れています」


 なんだか昔を思い出す。


「ああ、昔を思い――おっと。俺はしばらくここに滞在し、繁栄に貢献していこうと思っている」


「その事なんですが。アカネさん、俺達の行住坐臥ついて何か助言を下さい」


「俺にそんな大層なものを決める権利なぞ無いさ、己の意思で決めるといい。自分の道を自分で決められるだけの力をお前達はもう持っている。仮にここを出ていくとしても生き残れる程に強い力を」


 正にアカネさんの言う通りだ。


「……今晩、よく考えます」


「それがいい。それは別として頼みたい事もあるんだがな」


「アカネさんの頼みとなれば断れないですね。して、その頼みとはなんです?」


「もう少し後に話す、今は計画段階だからな。お前達の戦力を計算に入れる手筈が整っていない……だが、もしもの時は問答無用で出てもらう事になるかもしれない、とだけは言っておく」


 なんだか嫌な予感がする。


「心しておきます」


 話が一区切り付いたところで近寄る人影が一つ。


「よう、アカネ。そして隣にいる君は例の」


「ああ、クロツグだ。俺にとっちゃ息子みたいなもんだな。クロツグ、こいつは避難中に知り合ったカイトだ、仲良くしてやってくれ」


「なるほど、カイトさんですね。よろしくお願いします」


 気さくそうな方だな。


「ああ、よろしく頼む。……ははぁ、これはアカネが散々自慢し腐るだけはあるな。ひと目で分かる」


「なんですか? それ」


 俺にジト目を向けられバツが悪そうな様子のアカネさん。


「……お前は俺の一番弟子なんだ。いいだろ、それぐらい」


「何しろ優秀ですからね」


 冗談めかして笑う。


「うるせぇ」


 こんな雰囲気で話すのも久々だな。

 心が満たされていくのを感じる。




 宵の口、与えられた部屋にて湯浴みを楽しむ。


「(ましろはずっと、ご主人のとなりにいますから)」


「言われなくても分かってる」


「(言葉にしたい時だってあるんです)」


「そういうもんか。じゃあ、ずっと隣に居てくれ」


「(ずっといっしょにいます)」


 最近まで喋れなかったこいつが言うとどんな言葉でも説得力が増す気がする。

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