22 藤堂の場合
その日、藤堂は放課後の廊下を歩いていた。来週からは実技授業が始まる。学年主席入学という結果や、Cランク探索者であることから周りは騒がしくなるだろ。パーティーメンバーの目星は先につけておきたい。藤堂の頭には真っ先に入学試験で己を負かした短剣使いの姿が思い浮かんだ。しかし静かに首を振る。
――頼人くんは無理かな。周りが怖そうだ。
藤堂は頼人には不思議な魅力があると思っている。Cランクでユニーク魔法持ち、はっきり言って異端な存在だ。遠巻きにされそうなものだが頼人は驚くほどすんなりと8組になじんでいる。それどころか他クラスの生徒や先輩とも親しげに話している姿を時々見かけることさえあるのだ。不愛想で目つきの悪い八代ならまだしも、人当たりの良さには定評のある藤堂もまだ周りに壁を感じているのにだ。藤堂にはそれがなぜなのかわからない。頼人は冬香のように純粋な存在ではない。ちゃんと打算を持って行動しているし、他人の感情にも敏感で、拒絶するべき相手はしっかりと拒絶している。そしていつの間にか頼人の周りには彼を純粋に慕っている人間だけが集まっているのだ。
最初はただ瞳の色と同い年にしては洗練されすぎている身のこなしが気になっていただけだが、最近は専らその人間性を観察してしまう。うまく隠してはいるつもりだが頼人は何となくそれを感じているらしく、軽く警戒されて苦手意識を持たれてしまっている。そして頼人の周りにはそれを察して無意識に彼を守ろうとする存在がいるのだ。
田中秋明。頼人の同室者にして体形にかなりの特徴がある優秀な闇魔法使い。ただふざけているように見せて頼人に害をなしそうな者。頼人が嫌悪感を示すものをさりげなく遠ざけている。
速水千歳。頼人のクラスメイト。チャラい容姿とは裏腹に思慮深く打算的な事なかれ主義。本来なら面倒ごとに巻き込まれやすい要素を持つ頼人とは距離を置きそうなものだが、行動を共にするどころか頼人が本当に困ったときには口を出している。
あの二人は頼人が自分たちとパーティーを組むようにさりげなく誘導するだろうと藤堂は考える。
「お前が藤堂壮志郎だな?俺はDランクの長門喜明。お前、俺とパーティー組めよ。」
己のストーカー的思考を中断した男子生徒を、藤堂は不機嫌を隠すように笑みを張り付けて見つめた。長門は藤堂の笑みを友好的なものだと判断し、ぺらぺらと話し続けている。
「貴様!何をしている!そいつが嫌がってるではないか!」
目の前のこいつをどうしようかと考えていた藤堂は突然の乱入者に驚いた。それは長門も同じだったようで、「な、なんだおまえは?」とどこぞの三下のような反応をする。
「我は混沌より生まれし深淵の恒星!お前からも我と同じ闇の気配を感じる。一般人に迷惑をかけるな!」
言っていることはよくわからないが悪い奴じゃないことは何となくわかる。藤堂は意味不明なことを話し続けて長門をたじたじとさせる寺門を見つめ本物の笑みをこぼした。もしかしたら頼人のように自分が困っていることを察して助けてくれる存在が欲しかったのかもしれない。
藤堂は「闇の支配者として情けない奴だ。」と満足気に退散する長門を見送る寺門に話しかけた。
***
「ということで、話が通じないふりをするか、ガチで話が通じない馬鹿をぶつければいい。」
「できるか!」
最終的に八代は頼人達の仮パーティーに所属することを条件に田中が守護し、頼人たちの部屋に居候することとなった。
めでたしめでたし




