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風水鑑定チートで、開運無双!~風水ギルドが王国制覇するまで~  作者: 狭間コヤタ
5章 暗殺ギルドとの抗争に入ってみた。
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64話 黒幕が明らかになる。

 


 無機物には、運も不運もない。


 それでも運気数値が表示されるのは、なぜか? 

 おそらく、その運気数値は、持ち主との関係性を示している。


〈無機物鑑定〉スキル発動後、結城の視線は、天井の隅へと向けられていた。

 一枚の羽目板の運気数値が、際立って悪い。

 なぜか? 


 まず、この羽目板の『持ち主』を考える。この場合、部屋の主であるギルド・マスター、すなわちラークだろう。

 ラークにとって、運気を下げる『何か』が、この羽目板にはあるのだ。


 結城は、椅子を踏み台にして、羽目板を押してみた。

 羽目板が外れる。その上は、屋根裏だ。


 結城は片手を突っ込み、台帳を発見した。ペラペラと捲ると、これが暗殺の依頼者を記した台帳である、と判明。


 結城は台帳を小脇に挟んだ。それから、考える。

 依頼者の情報を記しておくなんて、不用心だ。暗殺ギルドのマスターが行うことだろうか? しかし、ある理由があるのなら、別だ。


 どんな依頼者にしても、暗殺者を雇うというのは、後ろ暗いものだ。

 つまり、脅しに使える。

 この台帳にあるのは、依頼者のリストであると同時に、恐喝リストでもあるのだ。


 結城は、改めて台帳を読んだ。

 しかし、依頼者の名前も、依頼内容も暗号で記されている。最低限の安全策は取ったようだ。


 ラークは、結城を睨みつけている。ラークが、暗号の解き方を教えるとは思えない。


(僕の運気数値は、まだプラス10万だ。適当に読んだら、運良く解読されていた、ということにならないか?)


 結城が試してみる前に、リースが片手を突き出して来た。

 もう一方の手は刀を握り、ラークに突きつけたままだ。


「貸してみろ」


「解読できるんですか?」


「元・弟子だぞ。それくらい、容易い」


 それもそうか、と結城は思い、台帳を渡した。

 リースは片手で器用に、台帳のページを捲っていく。


「風水ギルド殲滅の依頼の記述があった」


 結城はうなずく。傍にいるセシリーが、身体を緊張させる。

 ついに、判明するのだ。

 暗殺ギルドに、風水ギルド殲滅の依頼を出した者が。


 リースは言った。


「執政官グラン、とある」


「……!」


 結城は愕然とした。

 王の右腕である、執政官グラン。

 これまでは、風水ギルドの味方として、振舞っていた。


(しかし、違ったということなのか?)


 仮に、依頼者がグランだとする。

 では、王も承知しているのだろうか? 


 結城は、すぐに結論を出した。

 王は知らないことだ。


 なぜか? 

 王も、風水ギルドの殲滅を了解しているのならば、そもそも暗殺ギルドに依頼する必要がない。

 王の権限を持ってすれば、一つのギルドを潰すことなど、容易だからだ。

 それが顧問ギルドだとしても(顧問ギルドだからこそ、簡単かもしれない)。


 ただし、結城には納得のいかない点もある。


「依頼するとき、わざわざ『執政官のグランだ』と名乗るかな。要職についている者が、暗殺ギルドを使う。そんな状況なら、偽名を使うはずでは?」


 この結城の疑問には、リースが答えた。


「偽名は使ったのだろうな」


「どういうことです?」


「暗殺ギルドは、情報収集能力にも優れているというわけだ。執政官グランとやらは、偽名を使い、暗殺ギルドと接触した。そして、風水ギルドの殲滅を依頼した。これが『不貞を働いた配偶者を殺して欲しい』とかなら、暗殺ギルドも気にしなかっただろう。ありふれているからな」


「……しかし、実際は違った。一つのギルドを殲滅しろ、という依頼内容だった。普通では考えられない」


「そうだ。よって、依頼者の真の身元を突き止めようとしただろう」


「そして、暗殺ギルドは身元を突き止めたわけですか。執政官グランという身元を。やはり、グランが僕たちを潰そうとした」


 リースが面白がるように言った。


「意外だったか?」


 そのはずなのだ。グランはずっと味方だったのだから。

 しかし、不思議なことに、結城にとって意外ではなかった。

 理由は分からないが、いつかこの日が来るような気がしていた。


「いえ、意外ではありません。ただ、敵としては、最上級でしょう」


 リースは肩をゆすった。


「いわば、ラスボスだな」



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