49話 暗殺ギルド vs 風水ギルド
緊急集会を開き、結城は詳細を話した。招集された支部のサブ・マスターたちは、事前に知らされていたとはいえ、やはり動揺を隠せぬ様子だ。
「それでアニキ、どう対処するつもりですか?」
トムがそう聞いてきた。
結城は答える。
「暗殺ギルドの尻尾を掴むことだ。そうすれば、勇者ギルドに引き渡せる」
エミリーが挙手して、
「けれど、それが難しいのよね?」
結城はうなずき、他のサブ・マスターたちに告げた。
「この件は、僕に一任してもらいたい。皆には、支部の守りを固め、襲撃に備えてもらう」
風水ギルドにとって、守りを固めるとは、武装するということではない。より運気が上がるように、取れる手段を全て取ることだ。
開運が身を助ける。
トムたちが帰還したあと、結城はウェンディ、リサ、エミリー、レラ、セシリーを呼んだ。
「しばらくの間、本部を留守にする。ウェンディ、リサ、エミリーが中心となって、本部を守ってもらいたい」
「それは構わないけど、ユウキ君はどこに行くの?」
そうウェンディが尋ねる。
結城は、このメンバーにだけは、隠し立てするつもりはなかった。
「僕は、あえて危険の中に飛び込むつもりだ。そして、こちらから暗殺ギルドを追跡する。暗殺ギルドにも指示を出す者、つまりギルド・マスターはいるはずだ。その人物を捕えるか、少なくとも正体は掴む。さらに、風水ギルドを殲滅するよう、暗殺ギルドに依頼した人物も聞き出す」
「リスクは高いよ、ユウキ君」
「もちろんだ。しかし、僕はいま、怒っている。大事な仲間を殺された。このまま黙っているつもりはない」
〈零〉ダンジョンでの経験が、結城の決断を後押しした。
いくら暗殺ギルドが、殺人のプロ集団だとしても、だ。グラコ最終型や、ミノタウロスほどに強敵ということはあるまい。
「セシリーとレラは、僕に同行してもらいたい」
「承知しました、マスター」
とセシリー。
「ボクの力で役立てるなら、嬉しいです」
とレラ。
セシリーとは、〈零〉ダンジョンでも共に戦った。あの戦闘経験によって、レベルも上がっている。
レラも、偵察スキルに優れている。リーグ族で鍛えられたからだ。
また、二人とも風水師としてのレベルも、サブ・マスターの領域だ。
日が昇らないうちに、夜陰に紛れて、結城たちは本部を出発した。この本部が、暗殺ギルドに見張られている可能性もあるからだ。
ひとまず、王都ルセウスを出る。4キロ東に行ったところに、ケメという町がある。温泉が売りの町だ。そこに偽名を使って、宿を取る。
ケメ町を選んだのは、風水ギルドの支部がないからだ。
結城は、自分たちの運気数値を確認した。
結城はプラス1250、セシリーはプラス650、レラはプラス485。なかなか、良い運気の数値だ。
「もうじき夜が明けるけど、少し睡眠を取っておこう」
三人とも同じ部屋で寝た。バル国に潜入した頃から、こんな感じだ。
いまさら女子と同じ部屋だからといって、ドギマギする結城ではない。たまに、女子が近くにいると、良い匂いがするな、と思うくらいだ。
思っていたより、疲れていたらしい。横になったとたん、結城は眠りに落ちた。
※※※※
何かが気になって、結城は目覚めた。まだ夜は明けていない。三十分も寝ていないようだ。
(眠いのに、何が気になったのかな)
起き上がって、耳を澄ます。音はしない。しかし、どうも嫌な予感がした。
運気数値が1250もあると、直感はまず当たる。
(暗殺者が、近くにいる!)




