45話 風水チート vs グラコ最終型。
はじめに再会したのは、魔法使いのクーパーだった。
魔法使いギルドは、風水ギルドを敵視している。魔法使いが使役する精霊と、風水師が頼る龍脈が、敵対関係にあるためだ。
よって、クーパーも初めは、結城を敵視していた。
しかし、ダンジョン攻略を進める中で、少しは信頼するようになったようだ。とくに結城が単体で、グラコを倒したのは大きかった。
「ユウキか! どこに行っていたんだ!」
「その話はあとだ。状況を説明して欲しい」
クーパーの話によると、グラコの進化型の群れと遭遇したのだという。
クーパーのみが、ここにいるのにも理由があった。
「セシリーの指示だ」
「セシリーの? ブランの身に、何かあったとか?」
パーティ・リーダーはブランだ。つまり、指示を出すのは、セシリーではなく、ブランのはずだ。
「いや、ブランはまだ健在だ。あんたが消えてからも、パーティの離脱者はいない。奇跡的にな」
クーパーの運気数値はプラス852。
結城がパーティを離脱してしまってからも、〈運気上昇〉スキルは効果を発揮していたようだ。
「では、なぜセシリーが?」
クーパーの話では、ブランは風水が絡む指示については、セシリーに一任したそうだ。
そのセシリーが、ダンジョン通路の先に、良い運気を見たという。
『良い運気』とは僕のことだろう、と結城は思った。
「なるほど。それで、パーティから一人だけ先行させたわけだね」
結城とクーパーは、立ち止まって話しているわけではなかった。
グラコ進化型と交戦中のパーティのもとへ向かいながら、だ。
モンスターの進化型とは、ダンジョンなどで良く発生するという。
初期の階層で出現したモンスターが、パワーアップして、深い階層に現れてくる。
ダンジョン初心者の結城には、当然ながら、初めての事態だ。
(あのグラコの進化型か。それも群れで襲ってくるなんて)
50体はいるという話だ。
(それでもミノタウロスよりは、やり易いだろうけど。ミノタウロスは、ダンジョンのボスだったのだから)
ある通路の角を曲がったところが、いきなり戦闘地帯だった。
「セシリー!」
「マスター!」
セシリーが結城のもとまで走って来る。見たところ軽傷は多いが、致命傷は受けていない。
結城は、セシリーに対して、改めて〈運気提供〉スキルを発動した。運気数値を1万プラスさせるスキルだ。一日に使えるのは、1人のみ。
結城は、グラコ進化型を確認する。進化型といっても、見た目の違いは色が異なるというだけだ。
(……おざなりだな)
しかし、戦闘力は格段にUPしている。
結城は〈開運天国〉スキルを発動した。結城の運気数値がプラス10万となる。
ミノタウロスを倒した状態なので、進化型だろうとグラコなど、恐れることはない。
ただ、数が多すぎるのは、問題か。
(10分の制限時間内に、全てのグラコを倒せればいいが)
ブランたちは、陣形を作って、グラコ群の猛攻に耐えていた。
結城はまず、クーパーに指示。
「あなたは、遠距離から魔法攻撃を行ってほしい」
クーパーの運気数値では、グラコ進化型に殺されてしまう可能性が高いからだ。
それから結城は、セシリーと共に、グラコ群へと突撃した。
結城は、ブロードソードを適当に振り回す。
通常ならば、これは最悪の行為だ。敵に当たらないどころか、そばにいる味方を誤って斬りつけてしまうかもしれない。
しかし、運気数値が10万あれば、別だ。
まず、そばに従うセシリーには、何があっても当たらない。同時に、敵である進化型グラコに対しては、100パーセント斬撃が命中する。
あっというまに、3体の進化型グラコを倒した。
進化型ということで、攻撃力・防御力だけではなく、俗にいうHPも大幅に増えているのだろう。
だが、いまの結城には関係のない話だ。
結城の刃が、進化型グラコを掠っただけでも、クリティカルヒットとなる。
ただでさえ、〈零〉ダンジョン最深部で入手した、ブロードソードの一撃でもある。
進化型グラコごときが、耐えられるはずもないのだ。
セシリーも、剣術を披露する。
連続斬撃で、一体の進化型グラコを倒した。
運気数値が1万プラスしたのは大きい。さらにセシリー自身が、〈零〉ダンジョンで何度も修羅場を潜ることによって、戦闘力を上げたようだ。
二人は、グラコ進化型の群れを突破し、ブランたちと合流した。
ブランが笑みを浮かべる。
「ユウキ君。ようやく、おでましか」
「すいません。落とし穴に落ちてしまいまして。その代わり、ミノタウロスを倒しておきました」
「なに、ミノタウロスだって?」
「話は後です。いまはグラコ進化型たちを蹴散らしましょう」
「うむ、了解した」
改めて、ブランが陣営に指示を送る。
そのときだ。
まだ40体は残っていたグラコ進化型が、重なり合いだした。
ついには、一つの大きな山となった。
(何を、するつもりだ?)
それぞれのグラコ進化型が、同時に溶けだしていく。
ドロドロとなったグラコ進化型は、今度は融合し始めた。
気づけば、ミノタウロス並みに巨大な、一個のグラコと化している。
(グラコ最終型、といったところか)
〈零〉ダンジョンのラスボスは、ミノタウロスではなかったのかもしれない。




