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37話 コル教との決着。


〈はじまりの教会〉の礼拝堂には、人がぎゅう詰めだった。

 結城は、観光地を想起した。


 教皇ロルは、聖職者しか入れない内陣にいる。

 結城とターロンは身廊の後ろのほうにいた。ロルから距離を取っておこう、というわけだ。

 当然ながら、ロルの周囲には護衛がいる。剣士だけでなく、魔法使いの姿もある。魔法使いとわかるのは、ギルドを示す紋章のおかげだ。


 魔法使いに、『運気交換』が気取られる危険性がある。しかし、このチャンスを逃す手はない。

 結城は意を決し、『運気交換』を開始した。

 必要なのは、〈風水定位盤〉だ。九星を動かすことで、任意のAとBの運気を交換する。

 この場合は、教皇ロルとターロンだ。


 もちろん実際の九星を動かすことなど不可能なので、架空の九星で代用する。この『架空九星』は、〈風水定位盤〉上で表示されている。

 当然ながら、表示した〈風水定位盤〉は、結城の目にしか映らない。

 通常の風水師では、〈風水定位盤〉を出すことはできても、九星を動かすことなど不可能だ。それが可能なのは、結城だけである(いつかはリサも可能となるかもしれないが)。


 結城は念じることで、『架空九星』の位置を動かす。

 魔法使いが、こちらを見たような気がした。冷や汗が流れる。

 ロルの説教を聞いているフリをして、結城は作業を続ける。


 ついに『運気交換』が完了した。


 これでロルには、ターロンのマイナス7500の運気数値が科せられた。

 だが、まだ安心はできない。無事に、ここから脱しなければ。

 ロルによる聖典朗読と説教が終わったところで、聖体拝領となった。

 信者は、一人ずつロルのもとまで進む。もちろん、信者になりすましている結城も、例外とはいかない。


 ロルに正体を見破られる心配はないだろう。

 が、ロルの傍に控えている魔法使いには、どうか? 


(にしても、コル教。魔法使いは有りで、風水は異教的というのか?)


 コル教は精霊と密接な関係があるためだが、結城の預かり知らぬことだった。


 聖体拝領も無事に終わり、結城とターロンは、教会を出た。

 エミリーたちはすでに宿を引き払い、荷物をまとめていた。合流してすぐ、ルール町を出立できるように、だ。


「リサ、ターロンさんの風水鑑定をしてみてくれないか」


 結城自身はくたびれたので、リサに頼んだ。

 リサは素早く風水鑑定を行い、うなずく。


「師匠、『運気交換』は成功した模様」


 結城もうなずいた。

 ミサが終わる前に、教皇ロルの風水鑑定は行っている。ちゃんとマイナス7500の運気数値だった。


 一行は帰路に付いた。

 さっそく結城は王に謁見し、行ったこと報告した。


「あとは時が来るのを、お待ちください」


 風水ギルド本部に戻った結城は、考えた。


(僕たちがしたことが暴露されれば、コル教との戦争になりそうだ)


 十日後。

 教皇ロルが失脚した、という知らせを、結城は受け取った。

 当初の計画通り、北方地域への風水ギルド支部の設立へと動く。

 とはいえ、すでにウェンディが準備してくれていたので、つつがなく設立することができた。


 これで、アルバ国領土の東西南北に、風水ギルド支部を配置したことになる。

 そして風水ギルド本部は、王都ルセウスに、どっしりと構えている。

 顧問ギルドという立場も、当面は安泰だろう。

 いざとなれば、結城には風水鑑定のスキルがある。頼もしい仲間もいる。

 この世界に転生して、一年が経とうとしている。

 結城は、一つの思いを抱いた。


(ひとまず、僕はやり遂げることができたようだ)


 ちなみに、先日はウェンディの誕生日だった。結城はプレゼントを贈った。とくに他意はないが──。


(しかし、一人だけに贈るのでは、不公平かもしれない。少なくとも、エミリーとリサには贈らないと)


 それをメモしたところで、結城は帰宅した。



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