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33話 教皇を失脚させよ。


 結城は謁見の間にて、跪いた。

 玉座にはクース王、その隣に『王の右腕』執政官グランが立つ。

 グランの口から、顧問ギルドへの指令が出された。

 結城は、内心で呻いた。


(これは、バル国へ潜入したときより、大変かもしれないぞ)


 が、もちろん、断ることはできない。


「かしこまりました。必ずや成功させてみせます」


 風水ギルド本部に戻る。

 今回の任務のために、リサも宮廷から戻されたわけだ。

 そのリサの視線が、二度と宮廷に送らないように、と言っている。

 この任務が終わる前に、リサの代わりも見つけねばならない。しかし、まずは任務達成に意識を向けるべきか。


「陛下は、コル教を叩きたいそうだ」


 結城は、グランからの指令を話した。

 ウェンディが、皆を代表して問いかける。


「え、どうやるの?」


 結城としても、そこが問題だ。

 コル教を叩くといっても、国教を滅ぼすのは賢明ではない。人心に影響が出る。

 ただ、コル教が力をつけすぎたのが、問題という話。

 とくに現在の教皇ロルは、国王にも助言してくる。助言といっても、頼んではいないわけだ。そこでクース王は、ロルを失脚させてしまいたい。

 だが、国王や廷臣がおおやけに動くわけにはいかない。

 そもそも国王といっても、教皇の首を挿げ替える権力はないのだ。 

 そこで風水ギルドに白羽の矢が立った。


(どうしたものだろうか。教皇の運気を下げれば良い、という単純な話か?)


 ただでさえコル教は、風水ギルドを目の敵にしている。下手に刺激するのは、得策ではないのだが。


(風水ギルドの仕業と知られずにやらないとダメだな)


 結城は一歩目から入ることにした。


「教皇は、どこに住んでいるのだろうか?」


 宮殿だろうか、と思ったが、少し違うらしい。

 城郭都市コルの城が、教皇の住まい、という話。都市名コルという名は、宗教名から来ている、と。

 何千年も昔、蛇王を倒した救世主がコルというらしい。


 まずは教皇ロルについて、情報収集を行う。

 あまり良い話は出てこなかった。ロルは神に仕える身ながら、暴利を貪っているようだ。

 これなら失脚させるのに、罪悪感を抱かなくて済む。

 その点では、結城は安堵した。


 とはいえ、今回の標的は城郭都市にいる。

 前回、バル国に潜入し、ゼールに王位をつかせるため工作した。一見、難易度はこちらのほうが高いようにも見える。

 ただ、このときは風水ギルド側に強みがあった。

 というより、バル国側に弱みが。

 すなわち王子同士の王位争いが、隙を生んでいたのだ。

 今回、教皇ロルが隙を作ってくれる保証はない。


(しかし、悩んでも仕方ない。行動してみるか)と、結城は結論した。


 城郭都市コルがあるのは、王都(このルセウスも城郭都市だが、単に『王都』という)より、北西に15キロの地点。

 北といえば、大河を国境にして、バル国が面している。

 ただコルはこの国境からも、だいぶ離れた地点にある。


 とにかく、総本山があるためだろうが、北方地域はコル教の権勢が強い。

 現在、風水ギルドの支部は、いまだ北方地域にだけは設置できていない。

 一つの理由に、コル教が風水ギルドを目の敵にしていることも挙げられる。

 それを考えると、この任務、風水ギルドにとってもプラスになるかもしれない。

 教皇ロルが失脚すれば、コル教全体が混乱するだろう。

 その隙に、北方地域にも、風水ギルド支部を設立するのだ。


 結城は、この計画を側近たち(ウェンディ、エミリー、リサ、レラ)に明かした。


「ウェンディ。支部設立の準備は、君が中心となって進めておいてくれ」


「了解したよ、ユウキくん」


「あとは肝心の教皇ロル、だな。ひとまず、城郭都市コルに行ってみようか。偵察にね。ただし、身分は偽ったほうがいいな」


 結城たちにとって、コル教のおひざ元は、敵国に等しかった。

 この世界、身分証の類はない。そのため、偽りの身分を用意して、みなで口裏をあわせるだけで済む。


「日用品を買いにきた農民、ということにしようか」


 結城は、城郭都市コルに同行するメンバーを決めた。

 リサ、レラ、エミリー、セシリーだ。

 女性陣が多くなったので、できれば男メンバーも一人は欲しいところ。ただ、任務に能力の見合う男性陣が、本部にいなかった。


(トムが来てくれると嬉しいが、彼にも自分の支部があるから。仕方ないか)


「よし、さっそく明日、出発しよう」



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