31話 顧問ギルドに任命される。
ゼールが王位についたのは、結城たちの工作から、18日も経ってのこと。
執政官グランならば、風水ギルドの工作とは関連性なし、とするだろう。
結城としては、それは好都合だった。
顧問ギルドの座は、あまり欲しくないのが本音だからだ。
が、ゼールの件を耳にしてから、4日後。
結城は王宮の謁見の間にいた。
国王クースより、顧問ギルドの地位を下賜されるために。
(うーむ。まさか、こんなことになるとは)
どうやらクース王とグランは、風水ギルドは利用価値がある、と判断したようだ。
(いいように利用されるのも癪ではある。場合によっては、クース王と執政官グランの運気も、下げることになりそうだが)
とはいえ、一応は結城の国王だ。
潰すのは最終手段。
ウェンディは大喜びである。
顧問ギルドは、ある意味では、すべてのギルドのトップ。
名誉ではある。
とはいっても、風水ギルドが厚遇されるわけではない。
風水ギルドの支部を増やす件は、自分たちの力で、地道に続けていくしかない。
その上、国家のために働く必要まで出て来る。
結城は改めて考える。
今後は、より慎重にかつ大胆に、風水ギルドの舵取りをする必要がありそうだ。
さっそく、王宮より、風水ギルドへ依頼が来た。
毎日、王やその側近たちの風水鑑定を行って欲しい、というものだ。
ひとまず結城は、リサを王宮に送った。
リサなら実力は申し分ない。ただ、王宮勤めになるので、しばらくは宮廷暮らしに我慢してもらうしかない。
リサの性格からして、宮廷暮らしは肌にあいそうではないが。
(とにかく、できるだけ早く、リサの代理を用意したほうが良いね)
一方、風水ギルドの支部を増やす計画も、着実に進行中だ。
次は、アルバ国の西方地域に配置する予定である。
アルバ国の中央に位置するのが、王都ルセウス。
ここを中心にして、東方地域と南方地域には、計7つ支部を置いてある。
まず、東方地域に3か所。
このうち、ロツペン町にある支部は、結城としても思い出深い。
風水ギルドを旗揚げした場所だからだ。
元祖・風水ギルド本部、といったところか。
南方地域には、4か所。
このうち、ポロ町の支部の印象が強い。
この地点に支部を作るため、アルバ国とリーグ族との和平を取り持ったのだ。
また、リーグ族からはレラが新加入し、今ではすっかり頼れるメンバーとなった。
そして、いよいよ西方地域へと、乗り出すこととなった。
「西方地域で、支部を作れそうな候補地のリストを作ろう」
西方地域出身のギルド・メンバーに、ネルソンという男がいた。
風水師としての才能は並みだが、頭の回転が早い。結城は、このネルソンに、候補地リストを作成させた。
「レラ。ネルソンと一緒に、候補地を視察してきてくれないか」
本来なら、リサに託すところだ。
が、リサは宮廷勤め中で、それどころではない。
レラとネルソンを見送っても、結城の仕事は残る。
リサからの手紙が来たのだ。簡潔に言えば、その内容は『SОS』。
代理の風水ギルド・メンバーは、誰が良いか。
宮廷暮らしの相性が良く、風水師としても一流。
条件にあうメンバーはいないものか、ウェンディに問うた。
ウェンディは、志願したそうな表情をしてから、リストを作ると約束。
2日後、ウェンディがリストを渡してくれた。それを見ながら、結城は一考。
(王宮に送るのだから、サブ・マスター・レベルの人材でなければ)
とはいえ、これから支部をさらに増やそうというときだ。
そちらでも、サブ・マスターが必要となってくる。
それでも、王宮に送る風水師のレベルは、せめて30は欲しい。
結城自身のレベルは、∞。
結城を別格とすれば、トップはリサで、現在のレベルは82。
リサ一人で、百人の風水師の力がある、といって過言ではない。
ちなみに、エミリーの現在のレベルは、25。風水師の才能はないエミリーだが、地道な努力で、ここまで来た。
そういう意味では、結城がもっとも尊敬しているのは、エミリーかもしれない。
(さてと。風水師のレベルが30を超えているメンバーは?)
もちろん、すでに支部のサブ・マスターの座に納まっている者は、ダメだ。
「……おや。このセシリーという子。男爵のご令嬢だね」
ということは、宮廷暮らしも苦ではないか。
セシリーは、ピルカ町の支部の一員だ。ピルカという町は、南方地域にある町
セシリーは入団して2か月で、リーダーの地位になったようだ。
リーダーとは、サブ・マスターの補佐をする役割。
リーダーは数人選ばれ、その中で優秀な者が、新たなサブ・マスターとなる。
「ウェンディ。ピルカ支部に手紙を送り、セシリーを寄こすよう言ってくれ。僕が面接してみるよ」
セシリーが来る前に、レラとネルソンが帰還した。
さっそく、結城は報告を聞くことにする。




