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3話 風水ギルド設立はまだできないので、ひとまず事務所を借りる。


 町長の問題を風水で解決したことは、大きかった。

 風水への良い評判が、ぐんと広がったのだ。おかげで、依頼者の列ができるほど盛況となった。

 結城は厨房の仕事を辞め、さらにウェンディを雇い入れた。彼女が数字に強いというので、帳簿を付けてもらうためだ。


 結城は、風水鑑定の値段を、正式に5万バルとした。ただし、前払いではなく、成功報酬として、だ。

 こうすれば、万が一、風水鑑定が失敗しても、クレームの入る心配はない。

 結城としては、風水鑑定の成功確率は100パーセントと考えてはいる。ただ、風水というものへの信頼が確固たるものになるまでは、これくらい慎重なほうが良い。


 そして──龍脈を『視る』スキルと、風水定位盤スキルのおかげで、結城の風水鑑定に間違いはなかった。

依頼者たちはみんな満足して、報酬を支払った。

 結城も、自分の風水鑑定が人々の役に立てて、素直に嬉しかった。風水を学んだ甲斐があるというものだ。


 2週間が経った。


「ユウキくん。いつまでも道端で仕事するのは、どうかと思うよ」


 ウェンディの指摘はもっともだ。ギルド本部はまだ無理でも、事務所くらい借りても罰は当たらないだろう。

 結城はさっそく、不動産ギルドまで出向いた。


(入居審査が通るといいけどなぁ)


 ロツペン町では、不動産ギルドが貸主の役割も担っている。つまり不動産ギルド次第で、結城が賃貸事務所に入居できるかが決まる

 事業実績は、わずか2週間。しかも、事業の内容が、風水。

 ロツペン町だけでも、全体的に見たら、まだまだ『得体が知れない』という評価か。

 そんな年間利益の見通しもハッキリしない者に、良い物件を貸してくれるのだろうか?


 結城の肩を、ウェンディがつかんだ。不動産ギルドに入る直前のことだ。


「まって、ユウキ君」


「どうかした?」


「自分では、風水の力は借りられないの?」


「なるほど」


 もちろん、自分もまた、風水鑑定の恩恵に預かることはできるはず。

 さっそく龍脈を『視』ながら、風水定位盤で九星の方角を確認。


(仕事のために事務所を借りたいわけだから──仕事運を上げよう)


「ここは仕事運アップの、ラッキーアイテムを使おう」


「ラッキーアイテム?」


「所持しているだけで、特定の運気が上がるものだよ」


 結城の視界に、『水晶』という単語が表示された。

 すなわち、これが結城のラッキーアイテムだ。


「水晶かぁ。道具屋で売っているかな」


 するとウェンディが顔を輝かせた。


「水晶でいいの? 待っていて!」


 5分後、ウェンディが戻ってきた。全力で走ったらしく、肩で息をしている。自宅まで、なにかを取りに行ったようだ。


「ウェンディ?」


 ウェンディは水晶のペンダントを差し出してきた。


「これ、お母さんの形見なんだけど。ラッキーアイテムになるかな?」


「大丈夫だけど。そんな大事なもの、借りていいの?」


「結城くんが風水師として、どこまで行けるか。わたしも見届けたくなっちゃった。だから、使って」


「ありがとう」


 結城は水晶のペンダントを付けてから、不動産ギルドに入った。

 入れ違いで、一人の男が外へ出て行く。

 あとで聞いた話だが、いまの男は急用を思い出し、早退したらしい。彼こそが、不動産ギルドの長、つまりギルド・マスターだった。

 本来なら、彼が結城の審査を担当していたのだ。そして、もしも彼がギルド本部にいたなら、結城は事務所を借りられなかっただろう。

 だが、実際は、こうしてギルド・マスターは早退。

 後を任されたのは、サブ・マスター。先日、結城の依頼者だった、アルトという人物だ。

 結城が、アルトの恋愛運を上げたおかげで、プロポーズに成功したのだった。


 その件があったため、アルトはあっさりと審査を通過させてくれた。

 半時間後には、結城は程よい広さの事務所の中にいた。賃貸契約も済んだので、当分は、ここが結城の城となる。

 室内に運び込んだ家具は──結城とウェンディのテーブルとイス、さらに依頼者用のソファ。

 気づけば、日が暮れていた。


 ウェンディが嬉しそうに言う。


「ユウキくん。事務所も借りられたし、次の目標は、正式に風水ギルドとなることだね」


 ギルド設立には、いくつかのクリア条件があった。

 その中でも、『メンバーは4人必要』と『ギルド連合から許可を取る』が、難題だ。

 結城はうなずいた。


「そうだね。一つずついこう」


 翌朝。事務所に行くと、エミリーが待っていた。


「おはよ、ユウキ」


「おはよう、エミリー」


「事務所を借りた、と聞いたわ。お祝いに、これをプレゼントしようと思って」


 結城が受け取ったのは、吊り下げ式の看板だった。

 風水ギルド、とある。


「ありがとう、エミリー。君が作ったの?」


「手先は器用なのよ」


「ただ……せっかくだけど、気が早いかな。まだギルド設立していないのに、ギルドの看板を出せないよ」


「ここは小さな町だから、問題にはならないと思うわよ」


「そういうことなら」


 結城は、事務所に風水ギルドの看板をかけた。




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