24話 魔法使いギルドへ、風水工作を仕掛ける。
レラの解説によると──。
この世界の精霊は、エネルギーの塊である。
たとえば、『風の精霊』とは、涼やかな色合いのエネルギー体だ。
魔法使いは、風、水、地、火の精霊を召喚し、力を借りて、魔法を使うのだ。
(風水とも相通じるところがあるのに、この世界では敵対しているとは不思議だ。いや、似通う部分があるからこそ、敵対してしまうこともあるのだろう)
結城は、そんなことを考える。
ちなみに、レラも精霊の召喚までは、可能だ。
ただし、その精霊の力を使って、魔法が使えるか、といえば──使えない。
そこは訓練が必要となるそうだ。
「レラ。魔法使いの魔法は、風、水、地、火に対応しているわけだね?」
「はい。ただ、別口に白魔術があります。こちらは、精霊とはまた異なる力を使う、癒し系の魔法です」
「なるほどね」
トムとエミリーが戻って来た。
トムは、仲間になってくれる魔法使いはいなかった、と報告。結城は、レラがいるから、(まぁ、いいか)と思った。
エミリーは、本部メンバー全員が晴れて名誉市民になった、と報告。
「おカネで買える名誉市民か。まぁ、なっておいて損はないからね」
結城は、今後の計画を話した。
「少し長期戦になるね。監禁されているウェンディたちが、心配ではあるけど」
「魔法使いギルドも、手荒な真似はしないと思うわよ」
「それを願おう」
※※※
28日が経過した。
ある情報を、結城たちはキャッチした。
魔法使いギルドが、顧問ギルドの任を解かれた、というのだ。
このとき結城たちは、まだ隠れ家を転々としていた。魔法使いギルドに捕まらないためだ。
そして、敵対する魔法使いギルドが、顧問ギルドではなくなった。
すなわち、王の後ろ盾がなくなったのだ。
結城は、傭兵ギルド本部へ、伝書鳩を飛ばした。
傭兵ギルドとは、すでに契約を結んである。魔法使いギルドから、ウェンディたちを取り戻すために。
ただし傭兵ギルドとしても、顧問ギルドが相手では、手出しできなかった。
それは一歩間違えれば、王室への反乱となるからだ。
しかし、いまや魔法使いギルドは、顧問ギルドではない。よって、傭兵ギルドも手駒を出してくれる。
結城は小隊規模の傭兵をともなって、魔法使いギルド本部へと向かった。
魔法使いギルド本部の隣には、一軒の木造の家が建っている。土木ギルドによって、急ピッチで建てられた家だ。
実は、この建物や土地は、風水ギルドの名義だ。
28日前(魔法使いギルドと戦う決意をした直後)。
魔法使いギルド本部の隣が、空地であることを、結城は知った。
さっそく、そこの土地を購入。
ただし、魔法使いギルドに気取られてはいけない。
そこでウィウ伯に仲介を頼んだ。資金を渡し、土地の購入や、土木ギルドとの取引などを行ってもらったのだ。
結城が指示した木造建物が完成したのが、20日前のことだ。
依頼料を奮発したおかげで、土木ギルドはあっという間に、建築してくれた。
このとき結城が注文したのは、ただ一点。
木造建物の角が、魔法使いギルド本部の玄関を向くこと。
隣家の建物の角が、自宅の玄関を向いている。
風水では、これほどマイナスなことはないのだ。
それは、『自宅』の部分が『魔法使いギルドの本部』でも、同じこと。
かくして、魔法使いギルドは、一気に運気を下げた。
ただ隣の建物の角が、本部の玄関を向いているだけで。
しかし、結城が絡むことで、風水的な力は何千倍にも増すことになる。
魔法使いといえど、知らぬ間に風水的な攻撃を受ければ、太刀打ちできないのだ。
そして、今。
魔法使いギルドは、顧問ギルドから失脚した。
詳細は不明だが、国政に関することで、大きなミスを犯したのだろう。
王の怒りを買い、顧問ギルドから外されたのだ。
魔法使いギルド本部の前に立ち、結城はふと思った。
(いまなら、顧問ギルドの役職が空いているのか)
だが、いまはウェンディたちの救出が最優先だ。




