21話 王都に帰還も、魔法使いギルドが敵対する。
【風水ギルド設立から245日目】
結城たちは、王都ルセウスに戻った。
クース王に謁見し、アレク山脈での成果を話す。
結城は、王の証文が必要であることを言おうと思ったが、執政官グランが用意してくれていた。
グランは、風水ギルドに好意的と解釈できる。デラフという敵がいることを考えると、有難い話だ。
結城はエミリー、トム、新入りのレラと共に、風水ギルドの本部へ戻った。
実は、ロボクから和平の言質を取ったあとも、何度か話し合いが行われたのだ。ポロ町内でも、支部とする建物を探すなど、それなりに時間を要した。
結果、本部を長いあいだ留守にしてしまった。
それでも、リサとウェンディに託してあったので、結城は安心だった。
が、風水ギルド本部は閉まっている。
時刻はまだ、お昼を過ぎたころ。結城の鍵で本部に入るも、誰もいない。
「昼食に出ちゃったのかしら?」と、エミリー。
「全員で? ありえない」
みんなが一斉に昼食に出るなど、考えられないことだ。実際、結城が出発するまでは、風水ギルドが閉まるのは一日が終わるころだった。
「なにか、不測の事態が起きて、臨時休業になったのかもしれない」
ひとまず、結城は本部を開いた。
すぐに、その日最初の依頼者が来た。彼から話を聞いて、結城は驚いた。ここ数日、風水ギルド本部は閉まっていたというのだ。
(ウェンディたちの身に、何かあったようだぞ)
この世界、緊急事態でも連絡は取りづらい。伝令を使うか、伝書鳩を放つか。魔法使いがいれば、魔法で連絡が取れるそうだが。
「書置きとかもないし、何があったのか、分からないわね」
依頼者が帰ってから、エミリーが心配そうに言った。
「町民に聞き込みをしたほうがいいかも」
結城がそう呟くと、新入りのメンバーであり、リーグ族の一員であるレラが挙手する。
リーグ族は、アルバ国の平均的な民に比べて、褐色の肌をしている。それもあってか、レラには異国的な美しさがあった。
「ユウキ殿、ボクが探って来ましょうか? 偵察任務には自信がありますよ」
偵察任務とは違う気もしたが、せっかくなので結城は頼んだ。
二時間後、偵察に出たレラが戻って来た。
「風水ギルド本部にいた人たちの、現在の居場所が判明しましたよ」
「どこにいるの?」
結城は、デラフ伯爵が絡んでいるのでは、と疑っていた。
が、レラによると、別の組織が絡んでいるようだ。
「魔法使いギルドです」
これまで風水ギルドは、魔法使いギルドと関わることはなかった。
厳密には一度、結城が個人として、魔法使いギルドから助言を受けているが。それきりだ。
「魔法使いギルドのもとに、監禁されている、ということ?」
「一応は、『客人』ということのようですが、実際は監禁ですね」
「なぜ、本部の全員が、魔法使いギルドの手に落ちたのだろう?」
結城は続けて考える。何人かが魔法使いギルドに捕まった時点で、『これは一大事だ』となり、守りを固めるはずでは?
レラが続ける。
「どうやら、風水ギルド本部を束ねていた者が、はじめに虜囚の身となったようです。そのあと、混乱が起き、正しく対処できなかったのでは?」
結城が、風水ギルド本部を託したのは、リサだ。これは風水師としての技量から考えてのこと。
ただ、メンバーに指示などを送る、事実上の中心人物はウェンディだっただろう。
(まず、ウェンディが捕まってしまったのか)
「早く助けださないと」
慌てる結城に、エミリーが言う。
「落ち着いて、ユウキ。こういうときだからこそ、冷静に動かないと」
「……そうだね。ありがとう、エミリー」
結城は再度、レラを情報収集に送り込んだ。
魔法使いギルドの動機が知りたい。
同時に、風水ギルド本部を閉める。非常事態のためだ。なによりも、魔法使いギルド側に、結城たちの帰還を知らせることになってしまうからだ。
しばらくして、レラが戻って来た。
「魔法使いギルドと取引している、商人ギルドがありました。そこのギルド・メンバーから、情報を引っ張って来ましたよ」
どうやら、手荒な真似をしたらしい。
なにはともあれ、魔法使いギルドが、風水ギルドに敵対する動機。
これが判明したという。
「レラ。一体、なにが動機なんだ?」
「どうやら、精霊が関係しているそうですね」
(精霊……これは一筋縄では、いかなさそうだ)




