表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/70

20話 風水工作で、アレク山脈を鬼門にする。

 

 風水ギルドの資金を使い、用水路の流れを変える。

 

 少しの変更だが、これによって龍脈の流れが、連鎖的に変わる。

 というのも、龍脈とは大地の力。

 大地に満ちる力の一つが『水』。

 結城は、この『水』を変更したのだから。

 

 こうして起こったことは、アレク山脈自体が、一種の鬼門と化すことだ。

 すなわち、アレク山脈に居座るリーグ族全体の運気が、ぐんと下がった。

 運気が元に戻るまでは、リーグ族に属する者たちは、不運が連続する。

 狩りに失敗したり、毒草を食してしまったりと。


 並行して、結城は密書で、ウラと連絡を取っていた。

 ウラとは、リーグ族の族長ロボクの助言者。彼の兄であるラウも、同じく助言できる。宰相が二人いるようなものだ。

 ウラは結城の持ち込んだ和平の提案に、肯定的。

 一方、ラウは反対している。

 結城の狙いは、ラウの運気を下げ、ウラの運気を上げることだった。


 さて、結城がこっそりとウラに贈ったものがある。

 水晶だ。肌身離さず持っているようにと指示した。

 この水晶が、ウラのラッキーアイテム。水晶を所持していれば、ウラだけは、用水路変更の運気下がりの影響を受けない。

 すなわち、リーグ族の中で唯一、ウラの運気だけが下がらない。

 片や、ラウの運気はぐんと下がることになる。


 この細工が終わったのが、族長ロボクに謁見してから、18日目のこと。

 3日後に再度訪れると約束したので、約束を違えてしまったことになる。

 結城としても、3日と言った自分の見通しが甘かったことを、認めざるをえない。


 工作完了の5日前には、密使がウラからの手紙を届けてきた。

 その手紙には、ロボクがラウの意見に傾き始めている、とあった。


(まぁ、僕は約束を破ってしまったわけだから。ロボクにとって、風水ギルドの心証が悪くなるのは仕方ないか)


 だが、結城の工作が発動したことで事態は変わったのだ。事の動きは、逐次、和平賛成のウラから、手紙で報告された。


 まず、和平に反対しているラウの信用が落ちる事態が、起きた。

 ラウには婚約者がいたのに、別の女を囲っていたらしい。これが発覚したとのこと。

 普通なら、さほど問題にはならないだろう(現代日本とは文化も違うわけで)


 ところが、この婚約者が、ロボクの孫娘だったのだ。

 ロボクが怒り狂ったのは、想像に難くない。


 この不貞については、結城が工作する前から行われていた。

 そういう意味では、運気を下げたことと、直接には関係がないようにも思える。

 ただし、この絶妙なタイミングで、おおやけになったのは、やはり風水鑑定のなせる業だ。

 

 さらに、結城が自身で上げておいた、仕事運も利いてきた。

 ロボクが信頼している人物が、アレク山脈に戻ったのだ。彼はリーグ族ではないが、ロボクとは古くからの友だという。

 この人物が、風水ギルドは信頼に値するギルドである、と話してくれた。おそらく、風水ギルドに依頼したことがあるのだろう。


(僕が担当したのなら、〈五行極め〉すれば、すぐに思い出せるのだけどなぁ)と、結城は思う。


〈五行極め〉は、人物識別の効果もある。数えきれない人たちを風水鑑定し、顔は忘れてしまっても、その人の五行を見れば思い出せるのだ。


 これらのことがあった後、結城は再度、アレク山脈へ。

 ロボクとの謁見の許可を得たところで、まずは約束を違えたことを謝罪した。

 ロボクは、リーグ族が王に忠誠を誓う用意はある、と返答。

 ただし、いまさら平坦な地に領土はいらないという。山岳民族として狩猟生活をしてきたので、農地を耕したりはできないと。

 結城も、それはそうだ、と思った。

 リーグ族が、これまで通り、アレク山脈で暮らす権利。それがロボクが求めたものだ。


 アレク山脈自体は、アルバ国の国土。どこの諸侯の領土でもない。あえていうなら、王の直轄地。

 一方で、リーグ族が略奪行為を働くポロ町は、ある伯爵の領地。

 その伯爵が討伐隊を、時おり送り込んで来るそうだ。それを中止するよう、王から命じてくれ、ということらしい。


 結城は内心で、(略奪行為さえしなければ、討伐隊が送られることはないんだがなぁ)と思った。

 

 さらにロボクは、毎年、一定の財貨を要求。これまでは近隣の町村を襲って得ていた分を、保証せよ、というのだ。

 結城は了承した。


 そして、最後の要求が来た。これは結城にとっても、予想外の内容だった。

 その内容とは──リーグ族の者から一人、風水ギルドに入れるように、とのこと。

 リーグ族は未来のため、風水スキルを取り入れるつもりのようだ。

 

 風水ギルドに送られることになった者は、まだ年端もいかない少女だった。

 名前は、レラという。


 結城は族長に頭を下げた。

 

「すべて、かしこまりました」


 ポロ町に戻ったところで、結城はエミリーに言った。


「王が財貨まで出してくれるとは思えない」


「だけど、了解しちゃったわよね?」


 結城は溜息をついた。リーグ族への毎年の財貨は、風水ギルドが肩代わりすることになりそうだ。

 

 何はともあれ、風水ギルドは次の三つを得た。

 リーグ族との和平を完了させたことで、王からの評価を上げた。

 ポロ町に、南方領域で、初の風水ギルド支部を得た。

 そして、新たな風水ギルド・メンバー、レラを得た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ