19話 和平反対の族長の側近を、排除するには。
リーグ族の族長に助言できる兄弟。兄のラウが反対し、弟のウラが賛成する。この構図は予測がついたので、結城は次の選択肢を考える。
やり方としては、結城とウラのあいだの人間運を上げる。そうして、より味方になってもらう。
または、ラウの運気を下げる。そうして、ウラが失脚するようなことが起きるよう、仕向ける。
いずれにせよ、時間はかかるだろう。
ひとまず結城は、兄弟の風水鑑定を行った。それから、提案について検討するよう、ロボクにお願いした。
「お許し願えれば、三日後、ご回答を伺いたいと存じます」
ロボクは唸るように答えた。
「よかろう」
王の使者ということもあって、結城たちは無事に帰路につけた。
「三日後までに、ポロ町の視察を行うのね?」
そう問いかけるエミリーに、結城は答える。
「その必要はないと思うよ。リサが確認したわけだし。僕が改めてやる意味はない」
するとエミリーは拗ねたように言う。
「ユウキは、リサを信頼しているのね」
エミリーは、リサに嫉妬しているところがあるようだ。
「エミリーのことだって、信頼しているよ」
頬を染めるエミリー。
「な、なら、いいけれど」
「それに、僕たちにはやることがある。ラウの運気を下げねばならない」
ロボクが和平を受け入れるには、弟のウラの後押しが不可欠。ただウラは放っておいても、後押ししてくれるだろう。
問題は、兄のラウのほうだ。
和平には反対らしいし、影響力はウラと同じ。いや、ラウが兄であることも踏まえれば、弟のウラ以上の影響力かもしれない。
(ラウには悪いが、ここは運気を下げて、不運な目にあってもらうとしよう)
「デラフを倒したときと、同じことをするのね」
エミリーは、ようやく納得した様子だ。
しかし、今回の工作は、デラフのときより難しい。
デラフには家があり、そこから動かなかった。そのため、外部から『運気を下げる』工作が、簡単にできたのだ。
が、今回の標的は、山脈に潜んでいる。
(さて、どうやって、ラウだけの運気を下げれば良いのか)
翌日は、宿にこもり、結城はひたすら考えた。が、妙案は思いつかず。
夕食のとき、食堂でシチューを食べながら、つい弱音を吐いた。
「今回ばかりは、難しいかもしれない。ラウの運気を下げるため、ラウの家や装飾品に工作するのは、不可能だ」
すると、パンを齧りながら、エミリーが言った。
「遠隔から、ラウの運気を下げることはできないの? 龍脈の流れを利用したりして」
龍脈の流れ自体は、結城のチート能力をもってしても、操作はできない。
しかし──
結城はふと閃いた。
エミリーの肩をつかんで、
「なるほど。一つ思いついたよ。いけるかもしれない。ありがとう、エミリー」
エミリーは、頬を染めて、視線をそらした。
「そ、そう。力になれたなら、良かったわ」
エミリーの反応は不可解だな、と結城は思うのだった。




