17話 王に謁見し、リーグ族との和平交渉に向かう。
王は、結城が思っていたより、若かった。20代後半というところ。
結城のイメージだと、王様というのは年寄りで、肥満していたが。
(『王様』への偏見だったようだ)
アルバ王国は、王国とあるように、王を君主としている。絶対王政国家だ。
王の助言役には、執政官や諮問機関があたる。王の傍に控えているのが、執政官のグラン。ウィウ伯いわく、グランの力添えがあったおかげで、王への謁見も簡単にできたという。
謁見室には、結城のみが向かった。
結城は跪き、王から許可が出るまで視線を下げておく。
王の名は、クース。彼の若さから、父王が早くに崩御したのだろうな、と思う。
クースは気軽な調子で言う。
「そなたは、リーグ族との和平が可能と法螺を吹いているそうだな?」
「国王陛下。法螺などでは、ございません。チャンスをいただければ、可能であることを証明してみせましょう」
クース王は興味を惹かれたらしく、方法を問うてきた。
クース王は、コル教信者。しかし、形ばかりという話だ。コル教は国教なので、信徒にならないわけにもいかないのだろう。
コル教にとっては、風水は異端らしい。が、国王はとくに問題にしないだろう。
また、執政官グランは信者でもない。
そこで結城は、風水の力を説明した。するとクース王は、グランと小声で相談。のちに答えた。
「リーグ族と接触する許可を与えよう。失敗したとしても、そなたを罰するようなことはせん。だが、余が支援することもない。そなたたち風水ギルドが捕虜となっても、余は人質交渉には応じぬ。良いな?」
「感謝いたします」
失敗しても罰しない、という話は、有難いところだ。
結城は、グランが良い助言をしてくれたのでは、と考える。
(執政官は、風水ギルドを高く買ってくれているのかもしれないな)
謁見室を出、結城はホッとした。
ホールで待っていたウェンディたちに、結果を報告。
「次は、旅支度だ」
※※※※
ポロ町に向かうのは、結城、エミリー、トム。
本部は、リサとウェンディに託す(彼らの下に、18人のギルド・メンバーがいる)。
ポロ町に付いたのは、王都を出発して4日目だった。
ポロ町の雰囲気は、ペスカ町(初めての支部を置いた町)に似ている。
問題のアレク山脈は、ポロ町に到着する前から、視界には入っていた。結城は改めて見やった。
聳える峰々を。
「あんなところで暮らせるものなのか」
エミリーが疲れた様子で言う。
「山岳民族というところね」
昨夜は野営したため、あまりよく眠れていない。
時刻も、夕暮れが近い。
「今日はもう休んで、明日から行動開始といこう」
「了解しました、アニキ。投宿して来ますね」
そう言って、トムは荷物を持って、走って行く。
(アニキ呼び、どうにかならないものだろうか)
翌朝。ぐっすり眠ったことで、疲れの取れた結城は、食堂に降りた。
エミリーとトムは、すでに席に付いている。
結城は、転生した当初は、この世界の硬いパンに慣れなかった(良い小麦が使われてないため、硬いのだろう)。
しかし、いまや好物といっても良い。
「それでユウキ。プランは?」
「プラン、というほどのものはないよ。リーグ族の長と会い、和平交渉を行う。彼らが求めているものは、なんなのか、聞くのさ」
「求めているもの? それ、領土じゃないかしらね?」
なるほど、と結城は思う。国を奪われた民族だし、そうなるか。
「領土だったら、渡すことは可能かな?」
「まぁ、独立国とかじゃなくていいなら、可能かも。王様に忠誠を誓って、領土をもらうのよ。恩給地のことね」
「王様の感じだと、恩給地くらいなら与えてくれるかも」
あとはリーグ族が、王に忠誠を誓ってくれるか、だ。
食後、結城は鏡を借りた。自分の風水鑑定をするためには、鏡で自分を見ながら行う。もちん、鏡がなくてもできるが、こちらのほうが確実だ。
「ふむ。人間運を上げるには──」
それから結城は、同行するトムとエミリーの風水鑑定も行った。
人間運を極限まで上げるため、持ち物などを指示する。
結城自身は、町の道具屋まで行き、真っ赤な盾を購入した。盾という道具と、赤という色が、運気を上げるのに最高なのだ。
それから、アレク山脈に向かうため、馬を借りる。王都からポロ町まで運んでくれた馬車の馬とは、また種類が違うのだ。
結城は、まだロツペン町にいたころ、馬術を少し習っていた。
少なくとも、落馬の心配はないだろう。
鞍にまたがり、エミリーとトムに言う。
「では、出発」




