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15話 デラフ伯を排除し、新たな支部設立の計画を立てる。


 結城は次のことをした。

 

 まず、風水ギルドの金庫より、お金をおろす。

 この世界には銀行制度はないため、必然、箪笥預金となる。金貨、銀貨などを、各支部の金庫などに保管してあるのだ。

 今回、風水ギルド本部に設置するための金庫(結城の感覚では、スーツケースのサイズ)を持ってきていた。

 そこからの資金で、デラフ別邸の傍に、樹木を植える。いわば街路樹だ。


 これは、都市の景観を担当する委員会に、匿名で寄付する形で実現した。

 ウィウ伯には、寄付金ですぐに樹木を植えるよう、後押ししてもらった。

 このときデラフ別邸近くだけでは怪しまれるので、複数箇所に樹木を植える必要があったが。


 とにかく、デラフの場合、『自宅の近くに高い木がある』が、運気を下げることになるのだ。

 

 その他にも、寝室のドアの近くにソファがあると、運気が下がる。これはデラフ別邸の使用人を買収し、デラフ寝室のソファを移動してもらった。

 ソファの位置など、デラフは気にすまい、と見越してのことだ。


 こういった、工作をいくつかすることで、確実にデラフの運気は落ちていった。マイナス数値へと。

 その効果は、すぐに表れることになる。

 なんと、デラフが逮捕されたのだ。

 長年、王に納める税金を誤魔化していた。これが発覚したためだ。

 税金の誤魔化しは、ずっと前からやっていたこと。それ自体に、運気は関係ない。しかし、このタイミングで暴かれ逮捕に至ったのは、まさしく運気が下がったためである。


「ひとまず、デラフ伯爵で悩まされる心配はなくなった」


 デラフは爵位があるため、処刑ということにはならないだろう。

 ウェンディの読みでは、名誉市民権の剥奪だけで釈放される。

 それで充分だ。もう王都において、風水ギルドの妨害をすることは、できまい。

 ただし、敵として残ることは、間違いなさそうだが。


(いつの日か、デラフを再起不能まで追い詰める必要はあるかもしれない。今ではないけど)

 と、結城は思うのだった。


 妨害してくる者がいなくなり、風水ギルドのネガティブな噂も流れなくなった。

 ただし、もう流れてしまった分は、どうしようもない。自然と消えるのを待つのみだ。


 デラフを排除してから、20日も経つと、風水ギルドへの依頼者も増えてきた。

 結城、リサだけでは捌ききれないほどに。


(そろそろ、エミリーをリーダーに上げるときが来たようだ)


 風水師としてのレベルは、20は超えただろうか。

 まだ少し早い気もするが──。


 ある夕刻、依頼受付の時間が過ぎたところで、結城はエミリーを呼んだ。


「エミリー。ついに君を」


「リーダーにしてくれるのね!」


 ギルド・マスターの下にサブ・マスターがつき、サブ・マスターを補佐するのがリーダーだ。


「うん、そう」


「やった! ありがと、ユウキ!」


 はしゃぐエミリーを、ウェンディが窘める。

 結城は、さっそく心配になってきた。


(まぁ、エミリーも、そのうち自覚を持ってくれるかな)


 王都ルセウスに置いた風水ギルド本部。

 ここの活動が安定したところで、結城は次なる動きを始めた。

 さらに支部を増やすのだ。

 

 現在は、ペスカ町、クル町、そしてロツペン町(元は本部だった)に、支部がある。

 ルセウスの本部とあわせて、風水ギルドの拠点は四か所。

 ここでウェンディが、大きな羊皮紙を壁に貼り付ける。そのサイズは、結城的には畳一枚分だ。

 ひと目見て、アルバ国の地図だとわかる。アルバ国の国土は、ほぼ真四角。

 中央付近に王都ルセウス。そこから東に行ったところで、ロツペン町、ペスカ町、クル町が、固まっている。

 ウェンディは中央にある王都を示す。


「いま、王国の中枢に拠点を置くことに成功したわけ。そして、王国の東方にも、支部が三か所あるよね。さぁ、その上で、次なる一手はどこに打つ?」


 結城と一緒に地図を見ていたエミリーが、挙手。


「西、南、北の地域にも、支部をおくのよ」


 結城は同意しつつも、言った。


「同時に、西、南、北に支店を置くのは危険だね。周囲には、サポートしてくれる支部がいないのだから」


 とくに西方は、いまはまだ置けない。

 西方地域の支部第1号に問題が起きたとしよう。

 そのとき、東方地域の3支部(ロツペン、ペスカ、クル)から援軍が駆け付けるのは、厳しいだろう。距離が離れすぎているためだ。

 となると、この本部からのみとなる。よって、本部が手一杯だと、西方支部を見殺しにすることになりかねない。


「まずは南か、北で地盤を築こう。問題は、どちらが良いか、だけど」


「南側だと、アルク山脈があるよ。ユウキくん、あの山脈には蛮族が巣食っているとか」


「では北側から行く?」


 ところが、今度はエミリーが言う。


「北側の国境に沿う隣国は、アルバ国と敵対しているのよね。いまは戦争していないけれど、国境では小競り合いが頻繁だそうよ」


「南も北も、それなりに危険というわけか」


 結城は、リサを見やった。


「風水的には、どう思う?」


「南」


「僕も同感。では、南方地域に新しい支部を作ろう」



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