調整
「変態、ブーツの底はもっと厚く。すね当ては膝をカバーできるようにして。手甲も追加してちょうだい」
『あの、変態っていうのは…』
「何か言ったかしら」
『滅相も御座いません。すぐに調整させて頂きます』
あっれ~、なんか想像してたのと違う…
俺はめげずに説得を続ける。勿論調整も続けているが…
『あの、脱げないのは俺の趣味や性癖とかでは無くてですね、高性能に有りがちなデメリット。そう、仕様なんです仕様!』
「だから?」
『いえ、何でもないです』
くっそ~、俺はノーマルなんだ!シーシーしてるとこなんて別に見たくない…と思う。
「それと頭の防具が無いけど?」
『…視界が減ると困るだろ?だから、装備者の意見を尊重しようと思ってたんだよ』
「ふ~ん、じゃぁヘッドドレスみたいなのにして欲しいかな?デザインは任せるけど視界を遮らないものがいい。あと髪みたいに糸を背中に流すようにしたい。そうすれば糸を使って死角からの攻撃を防げるんじゃない?」
『おお、それは盲点だった。…こんな感じでどうだ?』
俺は自分の一部を使って鏡を生み出しエリスティアに見せる。
「いいわね!鎧といい、ヘッドドレスといい、あなたセンスあるわ」
『喜んで頂いて光栄です。ミレディ』
「ふふ、さぁ調整も済んだし早速模擬戦で試してみましょう」
俺達は倉庫を後にした。
「エリスティア!その格好は…!?」
「これはロンディウス族長。見ての通り魔王の鎧に認められました」
「なんと!しかし、形が随分と華やかなものに変わっているが…」
「この鎧は装備者に合わせて形を変えるのです。私に合わせてこの形をとったのでしょう」
「そのようなことが…」
「論より証拠といいます。これから模擬戦をしたいと思います。強者を集めて頂けませんか?」
「分かった。すぐに準備しよう」
広場に6人の男達が集められていた。
皆見覚えがある。
おそらく俺の装備者候補だったやつらだ。
「それでは始めましょう」
「先ずは俺が相手だ!」
この男はエリスティアが俺に選ばれたことが気に食わないようだ。
『お前、現状が分かってるのか?国が滅びかけてるってのに』
「なっ!? どこからか声が…」
『俺はモレロ。エリスティアの鎧だ』
「意思を持った鎧だと…」
「今はいいでしょう。それより全員でかかって来てください。モレロの言う通りなら、誰も私を傷付けることは出来ない」
そう言うことならばと6人の男達はエリスティアを包囲する形で取り囲む。
『エリスティア、武器は?』
「この手甲があれば十分です」
男達の表情が若干強ばる。
煽り耐性が低いようだね、君たち。
「もういい。始めろ」
結果から言えば、男達の攻撃はかすりもしなかった。