合体
俺は寄って来たマッチョエル男を威嚇する。
言葉で伝えれば良いわけだけど、喋る鎧がどんな扱いなのかわからない以上、下手なことができない。
せめて納得できるエルフ美少女に着て貰ってからじゃないとな。封印とかされたら精神が持たん。
とりあえず目の前の危機をどう乗りきるか…無難に小さく変形してやるか、後は超重量になるか。
俺は2つの案を採用して小さく重くなった。
「族長、ありゃ無理ですわ。サイズも合わねぇですし拒絶の意識を感じるっつうか。あの手の武具って主を選ぶって話ですぜ」
「なにせ魔王の鎧だ。凄まじい力を感じる…何人か連れて来よう。認められる者が現れるといいが…」
その後何人かエル男が連れて来られたが断固拒否である。
装備者は不老になるわけだし、一生の付き合いだ。安易に妥協すれば後悔するに決まってる。
エル男を拒否し続けて7日が経った。
エルフさん達は必死の形相である。確かに滅亡寸前なわけで、目の前に力があるならなんとしても使いたいだろう。
しかし、しかしである。俺だって一生もんの問題だ。ある意味結婚と同じくらい慎重にならざるを得ない。
そろそろ今日の当番?が現れる頃だ。絶対に妥協はせんぞ!
そして、扉を開いたのは文句なしのエルフ美少女だった。
これが魔王の鎧?
私は黒に金の装飾を施された鎧を見つめる。なかなか格好良いじゃない。
禍々しい気配を感じるって聞いてたけど、そんな感じは受けないし、私が鈍感なのかな?
大きさは…ちょうどいいかも知れない。う~ん、魔王って小柄だったのかしら?
なんか釈然としないわね。罠に嵌まるような嫌な予感がするとけど、もはや猶予はなかった。
昨日、バレン渓谷の前線が予想より早く崩壊したのである。
援軍として送られた魔術師隊は壊滅。師匠達が身を呈したお陰で幼子に死者はいないものの重傷者は多数に上る。
うち何人かは亡くなるだろう。
幸い兄のランデルは無事だった。
現在は前線をタラント川まで下げ再編中であるという。
タラント川はここから徒歩で1日の距離にある。形振り構ってなどいられない。
「さあ、私に従いなさい」
せめて一矢報いてやらないと死にきれない!
エリスティアが魔王の鎧に触れた瞬間、鎧は一瞬でエリスティアを包み込んだのだった。