首長会議
樹上に作られた一際大きな建物に各部族を纏めている族長が勢揃いしていた。
「バレン渓谷の防衛線は維持出来ている」
「いつまで持ちそうなの?」
「持ってあと10日というところか」
「もうすぐ収穫の季も終わる。あと2ヶ月、いや1ヶ月持たせれば冬だ。人間も軍を引かざるを得ない筈。トートレス砦から援軍を出せないのか!」
「無理だよ。1千の軍が目を光らせてる。砦を出たらおしまいさね。むしろ1千の軍を引き付けてると考えて欲しいもんだ」
「我が息子に3百の魔術師隊を付けて援軍に向かわせよう」
「そんな兵力どこに隠していたのだ!我々がどれ程の犠牲を出して前線を維持しているか分かっているのか!」
「分かっている。3百の内訳は幼子と一度は引退された方々だ」
「何!?それは…」
「我らにはもう後がない。誰かがやらねばならんのだ」
冷静な物言いとは裏腹に拳を震わせ、ワールブ族の族長エルピリオ・ワールブは言い切る。
居合わせた他の族長達も押し黙った。
言い方は悪いが老人を失うのはまだ許容できるとしても、幼子まで失えば例え戦いに勝っても未来はない。
「講和すべきかねぇ」
「出来るものか!あやつらは降伏以外認めん。そして降伏すれば奴隷となるは必定。散々議論した筈だ」
族長達が不毛な口論を始めるのをワールブ族長の娘、エリスティアは父の背後に立ち見守っていた。
名目は族長補佐として首長会議に参加する身だが兄に代わって自分が魔術師隊を率いて参戦すべきと考えていた。
兄様には悪いけど剣技も魔術も私の方が上手だし、確かに兄様より指揮は下手だけど…
やっぱり父様にもう一度掛け合おうかしら?
私の親友を奪った人間達に報わせてやらないと気が済まない!
モレが全裸に剥かれ串刺しで晒されていた光景を思い出し憎悪に焦がれる。
「失礼します!捜索隊が帰還しました。スタット隊長が面会を求めています」
「すぐに出頭させろ」
「ハッ」
エリスティアはエルピリオに顔を寄せ小声で聞く。
「捜索隊というのは?」
「お前には言っていなかったか。魔王の遺物を探させていたのだ。神から奪ったと云われる武具をな」
「今さら武具の1つや2つあっても意味がないでしょう?それとも軍を滅ぼすほどの力があると?」
「わからん。だが…後がないのだ。我々にはな」