訪問者
あれからさらに半年が経った。
未だに誰もここを訪れない。
暇だ!暇すぎる!
美少女に着て貰ってアレコレやるという妄想だけじゃもう無理。
いい加減パターンも尽きたよ…
贅沢は言わないから誰か来てくれ…
この際人間じゃなくてもいい。ゴブリンとかオークとかでも我慢するから… 人がいるとこまで行ったら殺っちゃうけどね。へっへっへ。
あかん。完全に呪いの鎧じゃん…
このまま放置されたら真性の呪いの鎧になってしまう。
さらに2ヶ月ほど経って闇堕ちしかけた頃、宝物庫の外が騒がしくなった。
『ん?なんか音が…遂に空耳まで聞こえ始めたか…』
次第に音が大きくなってきた。
音が大きくなるにつれ宝物庫の天井から細かい埃が降り始める。
『まさか、本当に誰か来たのか!』
俺は待望の、待望の人の訪れを期待して入口に目を向ける。
いや、ホントに目がある訳じゃないけど。
意識を集中した的なあれだよ。
天井から降る埃が激しくなってきた。
人の声らしきものも聞こえる。
おっおお!遂にこの日が!
そう言えば俺の視覚とか聴覚とかどうなってるんだろうか?
まぁいい。今は待望の来訪者を迎えようじゃないか。
そこでふと我に返った。
いきなり話しかけたらまずいのでは?
俺みたいな存在がありふれているならいい。希少とかでも認知されてるならそれでもいい。
しかし、皆無だったらどうだ?
俺だったらビビって近付かないぞ。
くそっ話したいのは山々だがここは冷静に事を進めねば!
天井の一部が崩れ落ちてきた。
おいおい、ちょっと乱暴ではないかね?
そんなにぶっ叩かなくて何か仕掛けを解除すればいいんじゃないの?
もしかするとこいつは正当な持ち主ではないかもしれないな。
そうこうするうちにひときわ鈍い音と共に天井が崩れ落ちた。
えっ?入口じゃないの?
俺が混乱している間に革鎧に身を包んだ男が崩れた天井から縄を伝って降りてきた。