現状把握 その三
投稿順を間違えていたので、割り込みで投稿しています。
「母様は?母様はどうなったの!?」
もはや部外者という立場も忘れエリスティアはエリオットに詰め寄った。
「母上は…エリザ殿は族長の妻として魔力が切れても死力を尽くして戦い、民を守って討ち死にしたそうだ」
「そんな…」
エリスティアは呆然と立ち尽くす。
「そうか、エリザ殿が逝ってしもうたか…」
ガルンの呟きに暫し沈黙が落ちる。
百人長達は居住まいを正すとエルフ族の弔意なのか胸の前で手を上下に重ね合わせ黙祷を捧げた。
俺が神妙な気持ちで皆を見ているとポタポタと滴が俺を伝っていく。
エリスティアは声もなく、涙を拭うこともなく、ただ涙を流す。滴は後から後から涌き出て地に染みを描いていった。
黙祷を終え皆が目を開ける中、エリスティアだけは顔を上げず俯いたまま…
「エリスティア!いつまでも泣いてる場合じゃねぇ。俺の親父だって一昨日死んだ。ここに居る奴らの身内だって今死んでるかも知れねぇ。仇をとらなくてどうする!シャキッとしろや!!」
ラッセンの怒声が天幕を揺らす。
咎める視線がラッセンに集まるがラッセンは気にした素振りも見せない。
「言い方は乱暴だがラッセンの言葉にも一理ある。トートレス砦が抜かれた以上、アン・ヘルまでの途上にある居住地は今も蹂躙されているかも知れない」
とトリーが言えば
「俺はすぐに隊を引き連れてユースに帰らせて貰うぜ。あそこにゃ録な戦力が残っちゃいねぇ。避難を進めちゃいたが時間稼ぎは必要なんでな」
「わしも帰らせて貰おうかのぉ。なに、わしやジワにトリーが抜けてもエリスティアとモレロ殿がおればここを支えられるじゃろう」
とジワに続きガルンまでが撤退を表明した。
俺は早速に纏まりを欠いた面々にため息を吐きたくなった。
何も各個撃破のチャンスを与えなくても良いだろうに。
さて、どうする積もりなのかね?
皆の視線が自然とエリオットに集まる。
エリオットにしたところで今すぐワールブの奪還に向かいたい。しかし、副将軍と言う立場がそれを許さなかった。
さて、ここらで助け船を出しておくか
俺は煮詰まった天幕の空気をリセットすべく口を開く。
『結論を出すのは俺の話を聞いてからでも良いんじゃないか?』
フフフ、俺が突然喋ったことで皆ビクッとしたな?
何となくエリスティアの胸に視線が集まるが、ラッセンなどは慌てて目を逸らした。
『まず状況を整理しよう。北からは砦を奪った北軍(仮称)が1千、ワールブを奪った別動隊が1千。そして撃退したとは言えバレン渓谷で再編を進めている東軍(仮称)が3千いるわけだ。一方の我が軍はトートレス砦の残兵100に、ここにいる部隊が300で合計400だ』
俺は一度言葉を区切って理解が進むのを待つ。
『さて、勝てる見込みはあるか?まず軍を分けるなんて最悪の手だ。何せ向こうはどの軍であってもこちらの2倍以上。どれかを俺とエリスティアで食い止めたとしても他の2つにやられる』
「そんなのは元々わかった上だ。今更怖じ気づいたりしない!」
うわぁ、ラッセン君マジですか?精神論じゃ戦いに勝てないって
俺はラッセンの台詞を黙殺して話を続ける。
『…戦うなら全軍で当たるのは当然として、それも簡単じゃない。大軍の弱点と言えばなんだと思う?』
俺の問いかけにトリーが答えた。流石は知性派。
「色々思い当たりますが、やはり補給でしょうか?」
『その通り。大軍が消費する物資は思いのほか多い。補給線を断たれた大軍は脆いってわけ。でもなぁ…』
「トートレス砦ですね?」
『そう、だから補給線を断つのは難しい』
「だったらどうすんだ? 何か考えがあんだろ?勿体ぶってないでさっさと言え」
全く…ジワはせっかちだな。エルフは賢いイメージがあったんだが、トリー意外はうちの姫さんも含めて脳筋ばっかりだ。
『ああ、きちんと説明しないと誰かが突っ走りそうなもんでね』
俺がチクリと刺すとこれまで黙っていたガルンが口を開く。
「耳の痛いことを言いよるわい。じゃがの、お前さんみたいのが湧いて出るわけでもあるまいし、今の戦力じゃ避難の時間を稼ぐ意外の手はなかろうて」
ガルンの強い視線が突き刺さる。
暗に妙案でもあるのか?と言いたいわけだね
ガルンの意見にソーシャを除く百人長達は一様に頷いた。
ソーシャだけは面白そうに俺とエリオットを見比べているが。
『まぁ焦るなって。目先の話の前にもっと先の話をしようぜ?』




