表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソノナマエ  作者: タルト
4/8

〜虎狼ト黒龍 赤目之男〜

〜目覚メノ蛍ハ 明日ノ星二 肆〜

互いが睨み合う中、大きなビルや赤レンガ壁を抜けやっと広い路地裏へ小さな風が死を知らせながら通り過ぎていく。蛇に睨まれた蛙のように恐れながら。

2人は動けないのではなく様子を疑っているのだった。確実に殺れるタイミングを計らっていた。

――二人の少年は本当に仲がいい――

同タイミングで立ち上がり、地面を蹴った。

銀狼之剱(ギンロウ ノ ツルギ)!」

螺旋之霆(ラセン ノ イカズチ)!」

鋭く伸び、まるで剣のような狼の爪。

背中から螺旋状に伸びた雷を纏う龍。

ぶつかる寸前だった。


目の前に突如現れた1人の男は、――大きく広げられた()()()()()()()()()()()()()――


くせっ毛の男の腕には蒼白い輪に囲われており、何かを吸い込むような、ズゥゥゥ…という音を立てた。ファンという綺麗な音とともに、輪と少年等の異能は消えた。


『な!?』

二人の少年は同時に言葉を発し、同時に言葉を失った。

次の瞬間。

2人の少年を黄色い何かが縛り上げた。ロープや紐のようだが鉄板のような。見ればその何かは、黄色いパーカー、金髪の少女の付けているヘッドホンからでている。ここからでもバッチリ聞こえるくらい大音量で見た目とは裏腹にロックを聴いている。

「はぁ…また面倒を持ち帰る気?それも2人。」

「まぁまぁ、本人等はまだ起きているよ。」

くせっ毛の男の前に紳士的な雰囲気を漂わせる男が歩み出た。

「すまぬな少年。手加減はする。少し眠れよ。」

男は少年の腹に掌をそっと。風のように当てた。

男は一呼吸おき、口を開けた。

その時男が叫んだ。

「朔良さん!危ない!」

紳士的な男は、かん危機一髪で避けた。

上だ。上から一人の男が降りてきた。

洋風な服に杖をを持つ「赤目」の男。

着地したおかしいほど強烈な衝撃で地面は放射状に亀裂が走り、くせっ毛の男は手を離した。少年2人は衝撃で軽く吹き飛んだ。

男は怯むことなく口を開けた。

「やあやあ。御一同様。私の名は、森近 林汰郎(もりちか りんたろう)。死の白鴉の…ボスだ。」

その場の空気が乱れる。白鴉を知らない人など、シブヤに一人もいない。殺しを主に殺戮と怨念で出来た闇の異能組織だ。

誰もが驚くだろう。その組織のボスが目の前にいるのだ。だがその中、くせっ毛の男だけは()()()()()

「やぁ。森近さん。腰痛の調子はどうだい?まだ爆弾を抱えているの?」

くせっ毛の男は笑いおどけて云った。

洋服の男はニコニコ笑って云った。

「お陰様で。前よりは…ね」

男はしゅんとした表情になり、ため息をついた。一呼吸おき、また続けた。

「外君こそ、頭痛の様子はどうだい?だいさ…」

その場の空気さえもが消えたように静かになった。

「それより先は言わない約束のはずでは…?」

おどけていた外とはまるで別人だった。

怒りと闇に飲み込まれた殺気溢れる荒神の顔。

力強く空間を埋めた低い声。

そそくさと通り過ぎる小さな風。

皆言葉を失った。

「わかったわかった。私が悪かった。だからその怒りに囚われた鬼の様な顔をしないでおくれ。心臓に悪い」

男は苦笑いながら云った。

「んで。要件は?森近さん。」

先程の人格に戻った外は、云った。

「そうだね。そろそろ本題に。

君は“三大異能組織並行感覚”を知っているかね?

政府の異能組織、蒼き燕。政府と連携する1つの異能組織、荒覇吐。犯罪異能組織、死の白鴉。この3つは並行感覚を保たないと日本が終わる。何故かわかるね?」

外がため息をついたあと、一呼吸おき口を開けた。

「正義と悪で考えれば、悪が傾けば正義もそのために傾く。正義が傾けばその分悪も傾く。

互いが並行感覚を掴んで並行同時進行しないとどちらかがいずれ、暴走する。あの時みたいにね」

外は曇り空を見上げた。

「その通りだ。現に今、死の白鴉は傾いている。異能者の人手不足だ。君たち荒覇吐は政府軍から応援が来るも、私たちは闇の化身だ。自分達で何とかするしかない。それに――」

「話は早めに終わらしてくれ。面倒くさいのは嫌いだよ。森近さんが誰よりも知ってるはずだけど?」

呆れ顔で外が云った。

「そうだね。失敬。要件は…少年どちらかを渡してくれないか?。我々白鴉に。」

「――全くの同意見すぎて我が嫌になる――」

路地裏入口から和装の男が現れた。刀を2本横腰につけ、目をゆっくりと開いた。銀髪と黒髪が混ざる物静かな男。森近と同年代に見える男。

「社長…」

荒覇吐の皆が口を開けた。

「やぁこれはこれは。かの有名な殺し屋、刀剣寺 刃覇斬(とうげんじ はばき)殿ではないではないか」

「やめろ。殺しはもうやめた。15年前の話だ。貴様もどうせまだ尚科学実験のしすぎではないのか?」

「科学とは世界の究極です」

森近は微笑みそう云った。

刀剣寺は堅苦しい顔をしたまま目を閉じ、また開けた。

「ちょっと待てよ。」

少年か喋った。黒鴉の歪魅だ。よろよろしながら立ち、口を開く。

「それは。俺は白鴉に入るのか?」

歪魅が問う。

森近が答える。

「君が望むのならば。」

歪魅は傷だらけの拳を握りしめ、森近を見た。睨んではいないが、鋭く尖った刃物のような瞳だ。澄んだ藍色の瞳は透明な光で輝いていた。

「もし。もし、白鴉に入れば、俺は――」

沈黙が続く。

と。突然歪魅は片膝を地面につけ、フードを外し、有りもしない帽子を頭から胸へと持っていき深く、礼をした。

「白鴉に入って。強くなれるのであればこの身この心全て白鴉に尽くします。死を前に屈することなく前え前えと、あなたのために。」

森近は微笑むと八坂に聞いた。

「君は?」

またも沈黙。

「僕は…荒覇吐に入る。間違った道へは進みたくない。

あの人が言ったように僕は僕の正義を貫く。」

八坂は刀剣寺の前え歩き、歪魅と同じ姿勢をとった。

「うむ。」

「それでは白鴉は歪魅くんを。荒覇吐は八坂くんを。よろしいですかな?刀剣寺殿?」

「分かっている。」

「それでは今日は御開としましょう。楽しい時間でした。」

「行くぞ新人。」

「行くよ歪魅くん。」


互いのボスは歩き出した。

ボスへついて行く部下は、皆尖った目をしていた。

刀剣寺と森近がすれ違う瞬間。

表情をひとつも変えず、

「もうすぐ来る」

「厄災のために」


これはまだ前触れだ。

ここから起きる大戦争。

虎と龍は居場所を見つけたのであった。

人物整理


荒覇吐

社長…刀剣寺 刄覇斬 異能力「時ヲ切リ裂ク無数ノ刃」

八坂 虎大狼 異能力 「黒虎銀狼」

読見 外 異能力「絶対削除」

彩芽川 魅音 異能力「絶対音感・美音麗華」

朔良 深海 異能力「聖深海」


死の白鴉

ボス…森近 林汰郎 異能力「緑林之新地帯」

歪魅 龍生 異能力 「黒生龍」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ