完璧な朝
久しぶりの更新です。
常々時間に余裕のある時は更新が滞るのに、レポート期限が差し迫ると更新しだす…、私、ダメ・ウーマン(笑)
「いってらっしゃいませ」
朝6時30分。
機械音的なアナウンスに見送られ、寮を出た私の目に飛び込んできたのは、一枚の絵のように美しい風景。
まだ少しだけ朝霧の残る広場に朝日が差し込み、新緑を照らす。
平凡すぎるこの一瞬。
しかし当たり前ではないこの景色に思わず笑みがこぼれる。
「緑がある」
「日々の食事に困らない」
「きれいな服と寝床がある」
それがあるだけでも一生分の運を使い果たした気分なのに、今私は清蓮学園に、生徒として存在している。
…自分でも未だに信じられていない。
中世ヨーロッパの雰囲気を基調とした造りのこの学園を見ると余計にそう思う。
「ピチチチチ」
「グルルルル」
三本あるうち森に近い方の遊歩道を歩いていると、黄色い羽につぶらな瞳を持った小鳥や、毛並みが整っている灰色の狼が私を追いかけてきた。
「小鳥はまだしも狼?」
セレブは物好きだなー。
と、ツッコミを入れたくなるも、付いてくる動物たちがあまりにもかわいいものだからすぐにどうでもよくなった。
犬、猫、トカゲ、アリ。
など次々と集まってくる。
…もちろん人間も。
昨日と同じ尾行の人間もついて来たが、…もちろん無視。気にしないことにした。
だってアクション起こすとイロイロ面倒クサいし。
今までもそうしてきたし。
「そろそろ減らしにかかるかな……、いや、もしバレたら?これ以上監視が増えるのもなー……」
全く気にしないかというとそうでもなく。
さすがに二週間も夥しい数の監視に囲まれるとなると、やはりストレスは溜まり、『尾行排除』の四文字が頭に浮かぶ。
「…んーーー」
そうして悶々と悩みながら大股で歩いているうちに目的の食堂に到着。
食堂はガラスが多い造りになっているもののイスラムの伝統的な造りを忠実に再現したモスク風の建物になっている。
入り口から食堂を見回すと、いつも通り利用者0人。
こんな朝早くにくる清蓮学園生なんていない。たいていのお貴族様はお貴族様らしく時間の使い方が怠ま…優雅だ。
それはこちらにとってもありがたい話で。
だからもし、「早起きは三文の徳」を実践しようとしているレアな生徒さんがいるなら円了願いたい。…これ以上の早起きは勘弁被りたい。
「うまそ、」
食堂入り口側の両サイドの壁に埋め込まれた自動販売機のうち、一番端の一台の前に立つと、壁からメニューがを表示するための電子画面とスキャナーが出てきて思わずよだれが垂れそうになる。
…あまりにもごちそうが並んでいるものだからつい。
そして私はスキャナーに手を読み取らせると、いつものメニューを告げた。
――朝はこれに限る。
「イングリッシュ・ブレックファスト・セットα、ドリンクは紅茶で。それとお水も一杯」
「学籍番号214S01:黒羽弥佳紗さんの注文を承りました」
5秒後。
「ウィーン、ガシャ」という音ともにこれまた突如として壁から出現した取り出し口からお盆に乗った朝食セットが降りてきていた。
作りたてか注文してから暖められたのかは分からないが、モウモウと白く水蒸気をあげる料理からは揚げたてのポテトのとソーセージのジューシーな匂いがした。
―ーと、こんな風に清蓮学園はいたるところが無駄にハイテクでなのある。
ちなみに先程注文したセットの内容はクロワッサンとソーセジとハッシュドポテトとパックヨーグルト、あとは温かい紅茶と水。
むかし本で読んで以来、こういった伝統的なイギリスの朝食に密かに憧れ続けていたのだ。
それに加えて、期せずしてなのだが食堂自体ももイギリス風の伝統を感じさせるような建物で。
――本で活字を追って想像するしかなかった世界が今目の前にある。
そう思うと胸が感動に似た感情でいっぱいになる。
これが自らの手で勝ち取った“念願”。
現金かもしれないが、こういう風に願いが顕現化したのを見ると「生きててよかった」と心から思う。
ただ……、
「ストーカーがいなければ完璧なんだけどね、」
私が食堂の端にあるいつもの席に向かっていると、うしろには相変わらずの距離感で付いてくるヘーゼルナッツ色の髪をしたイケメンチャラ男くんがチラリと見えた。
彼の尾行は決して下手じゃない。
ただ私が特異なだけで。
…。
――私を監視している”彼”に謝りたくなった今日この頃であった。
申し訳ない。
今回の話は内容が一ミリも展開せず、更新再開にしては物足りないかと思います。実際私もそう思ってます、申し訳ない(泣)…更新頑張ります!