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学園SP  作者: 見栄っ張りのジュリエット
21/29

試験直前

この話は次の話から始まる花雅寮side:弥佳紗につなげるための前置き的な回です。なので、気軽に読み流してくだされば幸いです。

side:第三者視点。


「Ladys and gentleman!Wellcome to the Hanamasa hall individual entrance examination.(紳士・淑女の皆様、ようこそ花雅寮個別入寮試験へ)

解説は私、レヴィ・グレンヴィルと……」

「鳴海魁人でーす。よろしくねーー」

「キャーーーー!!!レヴィ様ぁーー、鳴海様ぁーー」

観客、主に女子生徒たちが一斉に黄色い悲鳴を挙げると、レヴィと名乗った彼は青紫色の双眸を柔らかくし、鳴海はヘラリと笑いながら手を振って歓声に応えた。

彼らは相反する魅力を兼ね揃えており、女子たち、否、一部の男子も含めて「どちらを推すか」という論争は絶えないものであった。

レヴィは和服チックな制服を校則通りに着こなし、絹糸のようなプラチナブロンドの長髪を瞳と同色の紫紺の高級感溢れる髪止めで束ねており、言葉使い、姿勢、表情など一つ一つの所作に高貴さが滲み出ていた。対して鳴海は最近になって短くなったヘーゼルナッツ色の髪をワックスで遊ばせ、制服もユルユルに着ており、アイドルのような出で立ちをしている。

まるでユニットを組んだような二人は、バリアを張られた解説席にてゆるゆるとこれから行われる試合の解説をしていた。

「今回の試合のカードは高校1年A組の黒羽弥佳紗さんと、同じく、高校1年A組の大覚寺政嗣郎君。花雅寮の個別入寮試験なんて何年ぶりだろーね?」

「四寮管理課の公式記録によるとおおよそ6年ぶりだそうですよ。しかし、3年前に一度非公式の入寮試験が行われたとかいないとか…」

「へぇーなるほどね。でーも何でここまで大掛かりにするかな?」

「Mr.鳴海。我々は解説者ですよ。今の発言は適切ではな『はいはーいっと、ルール説明は任せたよ。グ・レ・ン・ちゃん』」

「………、仕方ありませんね。今回両選手にはに1on 1形式でたたかってもらいます。競技に関してですが、国際war-ride協会が定めた公式ruleに則って行われ、勝敗に関するペナルティーはありません。今回はあくまで入寮選考の参考にするために行うとのことです」

「簡単に言っちゃえば、

『相手に致命傷を負わせる』

『相手を地面に落とす』

『3つある相手のフラッグを全部回収する』

の3つのどれかをやれば勝ちだからね。んま、相手を殺さない程度にがんばってくださーい」

「……Mr.鳴海、」

「ほらほら怖い顔しないの。そろそろ時間だよ。ねっ?」

レヴィの真っ黒な笑顔をサラリと流す鳴海。

彼が指差した先にある時計は試合開始五分前を指していた。

最近流行りのアップテンポな曲が大音量で流れ出すと、それに応じて観客も徐々にヒートアップしてくる。「どちらが勝つか」ではなく、あくまで大覚寺が勝つと予想した上での賭けが会場のあちらこちらで成され、非常に盛り上がっていた。ごく稀に酔狂な者が黒羽に賭けてはいたものの、それはあくまで話のネタにすることを目的とした行為だった。


「それでは、選手の入場です。まずは赤corner。高等部1年A組、黒羽弥佳紗」

「赤い胸当てをつけてる子の方だねー」

5分などという短い時間はあっという間に過ぎ、ついに選手が入場してくる時間となった。

そして最初に入場してきたのは縮れた黒髪を一つに束ねた少女。彼女は盛大に顔をしかめながら何かを呟くも、側を飛ぶ音声マイクにその声が拾われることはなかった。観客たちは彼女に対して歓声をあげることなく、「えっ、キモくない?」「まじで公害」と先程とは違う意味で騒がしくなったが、赤い防具を纏った少女は完全アウウェーな空間において相も変わらず無表情を保ち、まっすぐにフィールドの中央を目指す。

数千の罵声を気にしない。

まるで罵倒されることに慣れているかのような対応を見せる少女には異様な貫禄があった。


「続いて青corner。高等部1年A組、大覚寺政嗣郎」

「今度は青い胸当てをつけてる子の方だねー」

少女が闘技場の中央に着くころ、今度は反対側の入り口から、中肉中背の男子が紫色の髪を靡かせながら入場してきた。

再び歓声に沸く闘技場の中で彼はどこか満ち足りた顔で手を振っており、赤コーナーの少女より余裕があるということを見せつけていた。


そして二人がフィールド中央の開始地点に着くと、すぐ横にいた審判の一人がサングラス型の黒いウェアラブル端末を身に付けるように促した。

「Put your glasses.専用の保護グラスをかけ、頭部を保護してください。Put your…」

それぞれ審判に手渡されたウォーライド専用グラスを掛けると、空気が振動する音と共に頭部周辺に不可視バリアが張られ、審判による確認作業が入る。どれだけ医療が進化しようと、脳や心臓を破壊されては再生医療が使えない。つまりはプレイヤーが死んでしまう可能性がある為だ。

しかしここで一つの疑問が生じる。

頭部を攻撃した場合はどうなるのか?ということだ。

本物の戦争において戦士が死なないように保護されることはない。また、死者が蘇ることもない。

頭部が攻撃対象外になってはウォーライドをウォーライド足らしめる”疑似戦争”という名目がなくなり、

ここまで国際的に隆盛することはなかっただろう。

実際どうしているのかというと、先程の保護メガネに付いているもう一つの機能である”頭部外傷度センサー”によってプレイヤーが死亡したか否かを判断しジャッジを下しているのだった。

ウォーライドとは、まさに死角のない競技である。


「On your mark.」

ようやく審判による確認が終了し、彼らの指示に従って両選手が対峙する。宙に浮いている状態のフライングボードの上でバランスを崩すことなく、スタート地点にてホバリングさせる二人。

空中において「一点に留まる」という行為は意外と難しいものであるのだが、両者ともにそれを難なくこなしつつ相手を見据える余裕があるのだから凄い。

一方は「相手を潰してやる」という気迫を発し、もう一方は何かに集中しているような感じで一点を見つめている。

そんな彼らに触発されたように会場も静まり返り、肌を刺すような緊張感が辺りを支配する。


「Set」

音一つない世界がアナウンスによって破られると、2人の選手は互いに戦闘態勢をとった。

フラボーの発する独特の重低音がフィールドに木霊する中、少年の威圧するような視線と少女の冷めたような視線がぶつかり火花を散らす。


そして…、鳴り響くサイレン。


観衆は興奮に湧きあがり、身を乗り出す。




戦いが始まった――。




今更ですが、この作品は多くの登場人物の視点を通して書かれています。なので、一人称の入れ替わりが激しく、話が分かりにくいところがあるかと思います、ごめんなさいm(__)m

ですが、最終的には全ての視点が一つの結末にまとまるように話を展開していくつもりなのでお付き合いの程よろしくお願いします。

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