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学園SP  作者: 見栄っ張りのジュリエット
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『旧式銃(拳銃)』――的に当たらず、後ろの壁がボコボコにへこみました。

旧式銃マシンガン』――弾の殆どが電球に飛んでいって、夏でもないのに大きな花火が見れました。

『レーザーガン』――1~10まである10体のダミー人形が一瞬で一直線に爆ぜました。

『ボウガン』――連射された矢が何故か逆向きに発射され、付き添いのオジさん(其の一)が赤ーい針ネズミになりました。(←ごめんなさい)

洋式の飛び道具がダメなら和式はどうかと弓矢を試したところ、危うく自分の胸にジャストミートするところでした。

以上の結果を持ちまして、私に飛び道具は向いていないと判断します。



放課後。

あの日、学園SPに所属してから彼らと何かするでもなくただ今まで通りに過ごし、あと二日後に花雅寮の個別入寮試験、というところまできていた。

そして、今、私はほんとーーに今更ながらウォーライドで使用する武器を探しに花雅寮の武器庫の一つに来ていた。


「君、運がよかったね」

付き添いのオジさん二人が口々に言う。

彼らによると普段はこういった個別入寮試験だろうが道具の貸し出しはしないそうなのだが、今回は特別に花雅寮のウォーライドチームが使ってる備品を貸してもらえるらしい。あの花押先輩?のお蔭で。

もちろんここに来る前に体育課の事務所にも寄って話を聞いてきたりもしたが、どれも試合で使えない鉄屑同前の代物だった。

――花雅寮の寮長が太っ腹じゃなければ不戦敗になっていたかもしれない。

道具を貸してもらえた幸運に感謝しながら、こうして一時間くらい手当たり次第に色んな武器を試させてもらっているが、何せ武器の数が尋常じゃないほどあるものだから未だに全てを試しきれていない。

例えば、武器の中には如何にも人畜無害そうなボールのようなものを掴んで、無意識にムニムニと揉んでいたら、お付きのおじさんに

『それ、爆弾です』

と青い顔で注意された。後一回ムニっとしただけで軽く手が吹き飛きとんでいた、とも。


…とまぁ、こんな調子でありとあらゆる武器を試させてもらってるのだが、自分でも使いこなせそうな武器が中々見つからない。

そして、試しては何かを破壊し、試しては何かを破壊しということを繰り返しているうちに、案内役として四寮管理科から付いてきたおじさん二人のうち、無事な方のおじさんが


「死ぬかと思ったー。神よ感謝します」

とか

「あーーー。また壊したーー。書類が増えたー」

とか

「弁償ぅーーー!!」

とか

「予算がぁーーー」

とか

「『まずは遠隔攻撃用の武器を調達いたしましょうか」なんて言った俺を呪いたいぃーーーーーーーーー」


などと叫びながらダラダラと大量の冷や汗をかいていた。

変顔しながら叫ぶものだから、顔色が黄から青に変わっていく様を見ながら思わず笑ってしまった。

……あれは人間のする顔じゃない。

他の使用者たちのボソボソと喋る声が聞こえてくる時もあったが、それら全ての発言がごもっともすぎて言い返す気にもなれなかった。寧ろ、納得さえしてしまった。


「あんなのが今年の首席かよ?」

「土曜に俺たち花雅寮の個別入寮試験受けるらしいぜ。花押センパイ直々の招待で」

「まじかよ。アイツの何処にそんな価値あんだよ?」

「知らねー。あれだったら高一の時の俺でもヨユーで勝てたわ。んで、首席ーってか?ガハハハ」

「それはねーよ。あの一青さんとかいんだからさ」

「だよなー。あと1年遅く生まれてたらなー」

「なー」


「あのようでは勝負以前の問題よねー」

「大覚寺様の圧勝ね」


――その通りでございます。

申し訳ございません。

自分でも理解に苦しんでいるところでして。えぇ。


周りで練習していた花雅寮のウォーライドチームの皆様方のお声はもっともであり、グウの音も出ない。

しかし誰に何と言われようと武器は確保しなくてはいけないので、武器のテストを再開せざるをえない。…例えどれだけ花雅寮の備品及び施設を破壊しようとも。



「んーー、」

――人の感情は読めても理解することは難しい。

そんなことを漠然と思いながら、機械的に武器を試していく。

やはり依然として投擲系以外の飛び道具との相性は悪く、半刀ナイフなど、いつも使っているアイスピックに似た大きさの小物類はよく手になじんだ。

体力補助系統の武具においてはあってもなくても変わらない、というよりその装備分重量が増す為につけないほうがよさそうだと判断した。

…。

「……」

まぁ、そんなこんなで最終的に私が選んだのは


・レーザーガン……一番振り回しとけば当たる確立が高いから最終手段として。(自滅の可能性もまた高い)

・3色弾子(催涙弾ピンク、閃光弾(白)、液状GPS弾(緑))……まぁ、これを選んだ理由は後ほど。

・ソニックブーム=ボム…衝撃波発生装置。これをうまく使えたら開始8秒で試合が終わる可能性があるから。

・クナイ……唯一、投擲はできたから。

・半刀ナイフ……相手が刃物を使ってきた場合を考えて一応キープ。

・西洋手甲……素手で刃を掴む、みたいな痛々しいことは御免だから念のため。


これら六つの武器が決まり、早速練習場の奥で震えている事務員のおじさんに声をかけに行くことにした。

私が近づくたびにチビりそうになるおじさんを見て、申し訳なさしか湧かない。温室育ちの彼らにはさぞかし衝撃的だったことだろう。なので、恐怖で震える彼を少しでも安心させようと表情筋を柔らかくしようと試みるも、逆に怖がられた。

「あ、」

そりゃそうか。

今の私は黒髪モジャウィッグで顔の大半が隠れている。そして破壊力抜群な武器をフル装備している。

…。

――ごめん。笑ったら逆に怖いってことに今気づいたわ。

見た目殺人犯。しかも本場のディストリクト6出身。

あまりにも条件がそろいすぎている。

「…」

それを理解してからはもう余計なことはするまいと無表情に徹し、かつ一番自然なスタイルで話しかけた。

「これでお願いします」

「さささささ左様ですか。

そそそそそれではこの書類に記入をお願いします。

ウォーライド武具は花雅寮トレーニングルームから持ち出すことは堅く禁じられておりますので、そこのところ宜しくお願いします」

ズイッと六つの武器を差し出すと、四寮管理科のおじさんはガクガクと震えながら『ウォーライド武具貸出し申請』と表示された“BB”を渡してきた。

…手にしたBBに汗がついていたのは気にしないことにしよう。

本当はBBごとブン投げて即座に手を洗いに行きたくて仕方ないけど。

…うん。

女は度胸…と、我慢だ。


「…」

どれどれ。

計10ページもある規約にざっと目を通しながら、不条理な契約がないかを確かめていく。…なにやら無駄に長い文章だが、要約すると「ウォーライドは下手したら死ぬ可能性のある競技だから『死んでも文句言いません』的な書類に署名してください」ということらしい。

「お願いします」

…当然私は読み終えるなり署名し、BBを事務員のおじさんに返した。

ディストリクト6でもディストリクト1でも変わらず命の危機に晒され続けているために、この私が急に死への恐怖を強く感じ迷うということは今更ない。

そもそも私に拒否権は無いのだが。


「あ、ああ。つつつつつつ次はこ、こここここここれを」

震える手で幾分かBBを操作した後、四寮管理課のおじさんが再びBBを手渡してきた。

今はニワトリのマネしながら右目から涙を流し、左の口端を吊り上げている彼に顔を引きつらせながら無言で受け取ると、上から順に欄を埋めていく。

それにしても……

――私、このオジさんのこと泣かせるようなことした覚え無いんだけど。

汗と鼻水も混ざって……、うん。

何とも形容しがたい。

私が変な方向に感動していたとき、ドアが開く音がしてハッと振り向くとそこには驚いた顔をした男子生徒がいた。

「……」

「……(ちょっ、そこの人、勘違い勘違いっ!)」

何も知らずに部屋に入ってきた男子が泣きながら小鹿の様に震えるオジさんを見て一瞬停止した後、無言で去っていってしまう――これは勘違いしたに違いない。

ビジョンを視なくても分かる。

向けられた視線に明らかな憎悪と疑念が混じっていた。


「……(あー、最悪。今日の夜までには『黒羽弥佳紗が四寮管理科の職員を恐喝してた』的なウワサが広まってるかも。そんでもって寝る直前に果たし状チックな抗議文が送られてくるんだろうなー…)」

そしてすべての記入を終わらせてBBを返却すると四寮管理課のおじさんは「これで用は済んだ」とばかりに、「後は花雅寮の規則に従って練習なされてください。他に何か御座いましたら四寮管理科までご連絡ください」と言い残し、ゴキ〇リも真っ青なスピードで逃げ……退室していった。

走るときにカサカサって音がするあたりが似てるっていうか。

僅かに残った黒髪がユラユラと揺れる様が触角に見えたってゆうか。

……いろいろごめん。

「……」

というわけで、練習ターイム!

パチパチパチパチ。

わー、電球さんが拍手してくれたー。すごーい。

壊れた電球が頭上で危険な音を鳴らしているが自分にはどうすることもできないので放置し、手元のBBを操作する。

「大覚寺の過去の試合のビデオは……」

あれから更衣室に一旦退却した私はBBを出して、大覚寺の過去の試合データを見ていた。

主な武器は中世ヨーロッパの騎士が使っていたようなサーブル剣で、戦闘スタイルはフェンシング。最初にレーザーガンの撃ち合いをして、レーザーガンがチャージ期間に入ったら接近戦に持ち込む。ただ体育の授業や正規のフェンシングの大会で好成績を残すためだけの剣。

その様はまさに教科書通り。

そして、手持ちのフラボーと武器の性能が他のプレイヤーとは段違いに良すぎるという点も非常に怖い。

フラボーはどの試合でも最新式のフラボーを使用し、武器は幾つもの特殊機能がついていると見た。

「2つが組合わさると厄介。どうするべきか……」

そもそも私には格闘技術が無い為、厄介どころか死亡フラグが立った様にしか見えないのだが。

この競技が、相手に致命傷を負わせるだけが勝敗を決める訳ではないというのが唯一の救いだ。

射撃ができなくても、近接線が強くなくても相手の陣地にある”フラッグ”を取れば勝利できる。もちろん相手を地面に落すのも、何らかの方法で気絶させるのも有りだ。


「……」

決めた。この戦法でいこう。となったのは考え始めてから実に約一時間後のことだった。

私には武力・財力共に無いに等しい。

では、どうすればいいか?

――知恵を絞るしかない。


ディストリクト6にいた頃もそうだった。

財力や階級はいつも私の邪魔をしてきた。

知りたいことがあっても階級が低いからまともな教育さえ受けられず、貧乏な為に日々生きていくことにすら苦労した。

時には町外れのボロボロの本しか置いてないような図書館に通い詰め、時には本の廃棄工場に足を運び、独学で知識という知識を脳に入れ、…ただひたすらにディストリクト6を出るその日を待ち続けた。

何ものにも虐げられることなく自由に人生を歩む。

ただそれだけを目的として――。





誰もいない更衣室。

汗は既に引き、体も十分に休まっていた。

手に持っていたBBを鞄にしまい、ロッカーに入れる。

ガチャリとロックがかかった音を確認して、溜め息を一つ。

そして、考えて過ぎて熱くなった頭をクールダウンさせていく。


「――、」

そして私は練習を始めるべく更衣室を後にした。




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