通学路
2話目です!
話が軌道に乗るまでは読むのが辛いかも…なので、なるべく早く脱出できるように更新頑張ります(笑)
通学路が崩壊した。
3発の砲弾を撃ち込まれたコンクリートの柱は粉々に砕け、すぐ後に通りかかったモノレールの車体がスローモーションで落ちていく。
街を戦車が闊歩し、銃声が明けを告げる――それが私の暮らす街、『ディストリクト6』。
熱風が髪を逆立て、宙を舞う砂塵が私の皮膚という皮膚を荒く削っていく。
今まで破壊されなかったこと自体不思議な高架。それが今日になってイキナリ破壊された理由に私は心当たりがありすぎる。
『私の入学式だから』だ。
故に心優しいディストリクト6の皆さんは祝砲をあげてくれたのだろう。
ほら、聞こえるでしょ……祝辞代わりの罵声が。
「おい!あのアマ、そっちいたか?」
「いい加減出てきやがれ!清蓮学園のガキが」
「アノ清蓮学園のお嬢ちゃんがディストリクト6なんかにいるのが悪いんでちゅよー」
「『都』の御偉いさんが言ってんだ!絶ッてぇーーに、逃がすなよ!!」
「アイツを半殺しにしただけで1億出すってよ!賞金がドンドンつり上がってやがる!!」
撃鉄を起こした音に続く複数の銃声。背後から迫りくるたくさんの足音にバイクや空飛ぶ円盤,
フラボーが飛ぶ音。
それらを表すのに貧相な擬音語しか出てこないが、まさにそのまんまの音しかしないのだから仕方がない。
そんな彼らの狙いは偏に、私が持っている「パスポート」だろう。
一言でいえば、「パスポート」とはこの地獄から出る唯一の手段であり、自分で使うもよし、高額で売り捌くもよし、パスポートを元手に街を牛耳るも良し、な万能物である。
「なんと夢のある物体だろうか」……と彼らの希望を肯定してあげたいところだが、生憎「パスポート」を使うには私による生体認証も必要であって………故に、無用な、かつ一方的な妨害は止めて早急に諦めて(リタイアして)ほしいところなのである。
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「…」
裏路地のゴミ箱の影に身を潜めること数分。
体を最小限に丸めて縮込まっていると、徐々に騒音も遠ざかっていき辺りは静寂が占めるようになった。
気配を消すことには特化している…と、自負している。でなければ、今頃私は溝の中で身体がパンパンに膨れた水死体と化していただろう。
そして、周囲を警戒しながら恐る恐る顔を出してみると、ここから見えるか見えないかくらいの所に赤、青、黄色、紫、ピンクなどなど目に毒なほどカラフルな頭をした連中がタムロしているのが見えた。
慌ててゴミ箱の影に隠れ直すと、真上にあるビルの非常階段から飛び降りてきた猫と目が合った。…その猫は一瞬だけ警戒するような鋭い眼で睨んでくるも、私の姿を認識すると途端に打って変わって自身の頭を膝に摺り寄せてきた。
これも私の七不思議の内の一つ。
異様に動物に懐かれる。
別に餌付けをしたわけでもなく、優しくしたわけでもない。寧ろ、過去に餓死寸前になった時には食料にしてやろうかと血迷ったこともあったくらいなのだが、何故か動物たちは私を視界に入れると近寄ってくる。
…意味が分からない現象だ。
「まだ出れない…」
見た限り、この通路の入り口に固まっている彼らの交通手段はまちまちで、改造されたブラボーや自転車に乗っていたり、普通に走っていたりと十人十色。服装においても派手さ重視で目に毒な色使いであり、会話内容と見た目からして頭が切れる連中ではないと思うのだが、いくら頭脳が腐っていようと
『人数不明(多数)VS 1人(私)』
の構図にされては堪ったものではない。
地区全体を巻き込んでの追いかけっこなんて普通に考えて私に勝ち目はない。
ここにきて彼の高名な兵法家、孫子の「能力で劣るなら数で勝て」という言葉を理解できた気がする。
そもそも、私は一般人だ。
戦い方だって人並みにしか知らないし、特段頭が回るわけでもない……ただ、こういった非日常に対する経験が人よりもあるだけのごく普通の女子高生なワケで……。
「誰か、私に普通の生活をくれ――」
そんな私の切実な願いを聞いてくれたのは、暗闇の中で金色の目を爛々と輝かせた黒猫ただ一匹だった。
明日までの課題に手を付けていないのに小説の初投稿を始める…筆者はそんな人間です。
次回もぜひぜひ<m(__)m>