みち
お久しぶりです。
毎度更新が途切れ途切れの不定期になってしまい、大変申し訳ないです。
そして、そんな亀更新にも付き合って読んでくださっている読者様に感謝を。はじめましての方にもこの作品を手に取ってくださった感謝を。
超能力者はこの世に存在する。
そういった人種は「オーバーヒューマン」または「超人」とかと呼ばれ、裏世界において莫大な金額で売買されている。
彼らの主張をまとめるとこうだ。
ちなみにそれらは全て『進化論(チャールズ・ダーウィン著)』に端を発する列記とした学説であり、単なる御伽噺ではないらしい。
「ダーウィンの『進化論』にあった通り、人間は進化し続けている…それこそ、生命存続危機に陥った時なんかは特にね。
例えばネズミがサルとなったのは恐竜から身を守るためだし、サルが人間となったのは新しい世を生き抜く為に力の代わりに知恵を求めたのと同じで、世界は400年前の『大災厄』で人間も文明も滅びかけたけど、今こうして乗り越えて生きているわ。そんな過酷な過程で人間という種が存続の為に何らかの突然変異を起こしていてもおかしくない、むしろその方がシックリくる」
「…つまり薬袋さんは『人間の進化が新たなステージに進んでいる』って言いたいんですか?」
「そうさね。
太古からそういった存在は確かにいたのだけど極少数、地球上に10人いるかいないか。だけど今は普通の人間が10%しか脳を使えないのに対して少なくとも15%以上脳を使える人間がちらほら確認できるまでになってきてるってワケさ」
「脳が15%使えたとして、どうなるんですか?」
「超能力じみた力を使えるようになって、超能力者――正式にはオーバーヒューマンって呼ばれてるんだが、知ってたかい?」
「いや、」
「だろうねぇ。一応オーバーヒューマンの存在は国家機密であって、一般人じゃ到底知りえない…そんな情報を知ってたら逆にアンタのことを疑わなくちゃいけなくなる」
「…話してよかったんですか?私なんかに」
「まあ仕方のないことだろう。だから煌冴も許可したんだろうし、」
眉を片方だけ挙げ、肩を竦めながら振り返った薬袋さんは苦笑を漏らして後ろに振り返った。
そして意味ありげに見つめられた一青さんはというと、僅かに頷き、首を下に向けたまま視線だけこちらに投げてきた。
「お前は俺たちに『話してよかったのか?』と問うてきたが、では反対にお前こそ聞く覚悟あって話を聞いたのか?」
頭に直接響く低い声。
本来鼓膜を通して聞こえてくるはずの音がダイレクトに脳に入ってくるのは何とも奇妙な感覚だ。
まずはいきなり起こったこの現象に驚くのが正しい反応だろうに、私は思わず素で分析を始めてしまった。
何もかも見透かすような碧い目を鋭く細めた一青さんと目が合った瞬間、世界が私と一青さんの二人にされたかのような、世界から物理的に隔絶された感覚に襲われた。ということは、この不思議な現象のカギを握っているのは一青さんで、彼は私が彼らに害を加えない限り私に何かをしてくるということはない。
一青さんは短時間で私にそう思わせるだけの貫禄のようなものがあった。
だからこそ安心して分析なぞを始めてしまったのかもしれない。
そして私が「今は覚悟を決めている」という一文を脳内で組み立てると、一青さんはそれを読み取ったかのように「ならいい」と返し、私から目を反らした。
その瞬間、世界は元通りになり、薬袋さんが説明する声が再び聞こえ始める――。
「……進化だけでなく、退化とか一般的な進化のルートから外れたりしたことによって人成らざる力を持った人ならざるモノのことも一応オーバーヒューマンって呼んでるんだ。…だけど、そこらへんは『人間でもない者を人間として認めるのか』とか学会で揉めてるからこれから新しい呼び名ができるかもしれないが、」
「……で、それらに私も含まれると、」
「結論は、そうだね」
「…取り敢えず、超人類なるものの存在は理解しました。そして私がその類に属する可能性があることも」
「…なら、話は早い」
「ちょっ、煌冴」
「薬袋、今の言葉は総帥としての言葉だ。こいつもそれを理解している」
「…いつの間に話を付けたんだか。全く、仲間外れってのは気分が悪いねぇ」
「すまない、薬袋」
「いいよ。いつものことさね」
「黒羽弥佳紗、」
「はい」
「お前に学園SPの一員となってもらいたい」
「…というより、それはほとんど強制ですよね?」
オーバーヒューマンという存在を知ってしまったこと然り、そして今外で起こっていること然り。
ちなみに”外で起こっていること”というのは、私が眠っている間に私に下された退学勧告の事。罪状は「学園の森への放火」。当事者である私はそれが襲撃者によるものであると知っているが、今の私にそれを証明する術はない…周囲に設置されていた監視カメラも破壊されていたそうだ。
……というのをさっき知った。
自分でもどういった仕組みかは分からないが、「今の状況を知りたい」と願うと自然と情報が視えたのだ。
「組織に属することで特権を与えられ、その結果として退学処分が取り消される…そうですよね?」
「今のところそれが俺達が提示できる最善の道だな」
「では、一つ。聞いてもいいですか?」
「俺が答えられる範囲でなら」
「何故私を助けようとするんですか?所詮はディストリクト6出身の首席という厄介な肩書しか持っていない、特別な繋がりがあった訳でもない私を何故、助けようとするんですか?」
とても疑問に思ったのだ。
一青さん達には私を救う義理などない。メリットもない。
なのに死にかけていた私を蘇生させた。
理由を知りたくて、この新しく得た異能力で探ろうとも上手くいかない。
考えようにも、この世に無償の救済があるのだということを信じられない、信じてはいけない環境に身を置いてきた私は思考回路を「何故?」の所で止めてしまう。
ただ答えが知りたかった。
そして返ってきたのは単純な一言。
「お前が学園SPが救うに値する人間であると、俺が決定したからだ」と。
一青さんは微かに、本当に僅かに口角を上げてそう言った――。
p.s.
この話の題名「みち」の”みち”は道と未知をかけていたりします。
そしてこれは余談なのですが、本作「学園SP」の後の話「執行官code.K」を今日から執筆開始しました。この作品は黒羽弥佳紗が大学を卒業した後、あるところに就職したシーンから始まります。
続編の方もいつの日にか皆様のお目にかけることができれば、と思っています。
更新頑張ります。




